2-1-2 俺は栗栖に服のコーディネートをされる
「次はここ」
と今度は男性向けの服屋の看板を指さす栗栖。
「?」
「今度はアンタの服を選ぶよ」
そう言って栗栖が店に入るので俺もそれについていく。
「アンタさ、私服はどんなの持ってるの?」
栗栖は店に入ってすぐ俺が持ってる服について聞いてくる。
「俺?作業着しか持ってないな。だって誰かと出かけることがないから。これなんか友達と出かけるのに適した服をひたすら探して唯一これがまともだと思って着て来た服だからな」
そう言った瞬間栗栖の表情がなんとも形容しがたいものになる。
「悪かったな。クラスでぼっちだったからな」
「大丈夫、今日はアンタをアタシ好みのかっこいい男にするから」
栗栖が急にサムズアップしながらやりがいに満ちた表情で俺を栗栖好みにコーディネートすると言う。
「俺を栗栖好みの格好にか?栗栖好みの服を俺が着ても絶望的に似合わないだろ」
「アタシに任せて。絶対アンタをイケてる男にするから」
その言葉とともに俺の服のコーディネートが始まる。
複数回試着を重ねコーディネートも煮詰まってきたそのとき
「!」
視線を店の外から感じた。
明らかに俺をつけてて監視してる、そういう視線だった。
が、俺はあえてその視線を無視し栗栖に言われるがまま引き続き試着をする。
「いいじゃん。超アタシ好みになった」
栗栖がそう感想を言った後再度俺は鏡を見る。
確かに栗栖が言った通り俺をして似合ってると思わせるような服装を選んできた。
そして俺は栗栖が着てと言わなければ絶対着ない服を着ている自分の姿を見て「お前誰だよ」という感想を心の中で言う。
「栗栖はこういう感じが好きなのか・・・・・・?」
「そうだよ」
栗栖はこの服装が好きだという。
ジャケットをベースとしたコーディネート。いかにもイケメンがするような格好だ。
普段は絶対着ない服。だが栗栖とまた遊びに行くことがあるかもしれないからと思いこの服装一式を買うことにした。こういうこともあろうかと金はちゃんと下してきた。
「ちょっと店の入り口で待っててくれ」
「うん」
栗栖を入り口で待つようにいい着替えて会計に行く。
結構な値段だったがなんとかなった。
「待たせたな」
「あっ・・・・・・・買ったんだ」
「ああ」
俺の答えに栗栖はうれしそうにする。
「じゃ、店から出よっか」
と言うので俺は栗栖と一緒に店を出る。
「いい時間だし、お昼にしようよ」
と栗栖が提案するので店に掛かってる時計を見る。
確かに昼食にはちょうどいい時間になってるので
「そうだな。どこか行きたいところあるか?」
と栗栖に訊く。
「どこでもいいよ」
といじらしい顔で一番困る答えを栗栖が返してくる。
ぐっ・・・・・・・・・
どうする俺?この場合の最適解は何だっ・・・・・・・・!?
どうしたらいいんだ俺!?考えろ俺!
「あ、あの。伊良湖、本当にどこでもアタシは文句言わないから」
栗栖は慌てた顔で言う。
どうやら俺があまりにも真剣な顔で悩み始めたせいで心配させたようだ。
「え、いや、別にわがまま言ってくれてもいいから」
「ううん、伊良湖のことをそんなに困らせてまで行きたくない」
・・・・・・・・・・・・
この言葉を俺は、いや今それを深く考える必要はないんじゃないか?
「そうか・・・・・・・・・・・?」
「そうだよ」
「なら、ファミレスでも・・・・・・」
「全然オッケー」
栗栖がそう言うので俺はパスタメインのファミレスに連れていく。
本当に連れてきたが栗栖は何も言わない。
「いらっしゃいませ。2名様でしょうか」
「はい」
「かしこまりました。お席までご案内いたします」
店員さんに席を案内され二人で座る。
栗栖は俺の向かいに座ってメニューを眺めている。
「伊良湖は何にするの?」
「俺は明太子にするかと思って」
「じゃあアタシはペペロンチーノにしよっと。すみませーん」
栗栖、そこにボタンがあるじゃろ?
と言おうとするがすぐに店員が来たので何も言わないことにする。
「ご注文をお伺いします」
「明太子パスタとペペロンチーノ一つづつ。あとドリンクバーを」
「かしこまりました」
店員が俺たちの注文を聞いて去っていく。
「伊良湖」
俺は栗栖に呼びかけられ前を向く。
「アンタさ、放課後とか休日に何してんの?」
そう聞かれ俺は
「んー、色々やってる」
と答える。
「色々って何さ」
「色々は色々だ」
俺は栗栖の質問に有耶無耶に答える。
「バイトとかしてたり?」
「そういうときもあるな」
「へぇ、どんなバイトしてんの?」
俺はそう栗栖に聞かれ言葉を詰まらせる。
「まぁ、よくあるバイトだよ」
「ふぅん」
俺のごまかした答えに一応納得する栗栖。
そうこうしているうちに注文してたパスタが来たので栗栖と一緒にドリンクバーに行ってドリンクを注いで席に戻る。
「じゃ、食べよっか」
栗栖のその言葉とともに食べ始める。
「ごちそうさまでした」
その言葉とともに食べ終え会計に行く。
「あ、伊良湖」
「いいよ俺が払うから」
そう言って俺は二人分の食事代を払う。
「あ・・・・・・ありがと」
「礼はいいよ。次はどこ行く?」
その後俺は栗栖とゲームセンターに行ったりして遊んだ。
そして夕方になり駅前まで戻ってきた俺と栗栖。
「もう時間だしそろそろ解散とするか」
と俺は栗栖に提案する。
「うん」
と栗栖が言うので
「今日は栗栖と遊べて楽しかった。じゃあな」
と言って去ろうとする。すると
「待って」
と栗栖が俺を引き止める。
「どうした?」
と俺が聞くと栗栖は
「最後に、その・・・・・・・・キス、して」
と俺にせがむ。
「え、キ、キス!?」
俺が栗栖からの突然の言葉に戸惑っていると栗栖は
「今日お姉さんとキスしたでしょ?だからアタシにも口にしてよ」
と言う。
「あ、アレは不意打ちで防ぎようがなかったから」
そう言い訳するも束の間、栗栖が俺の胸ぐらをつかみ自分のほうに引き寄せ
「んっ」
と自分の唇を俺の唇と合わせる。
数秒の間の後栗栖は唇を放し、
「じゃ、またね。今日は楽しかった」
と言って改札へと消えていった。
俺は少しの間呆然とした後我に返り栗栖の唇の感触を忘れられないまま駐輪場に向かう。
バイクのトップケースに今日買った服を入れいつも以上に安全運転で家へと帰った。
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