「彼女が魔女になった理由」「私が魔女になる理由」
「ある日、世界は暗い暗い、夜を迎えました。
どれだけ待っても、太陽は昇らず、月も暗闇を照らしてくれません。
みんなが困り果てていました。
その様子を見た王様は、とある決断をします。
王様には、大切に大切に育てていた子どもたちがいました。
子どもたちは不思議な力を持っていました。
子どもたちに王様は命じます。
「光を取り戻す旅に出よ」
と。
子どもたちは、大好きな王様のため。何より困っているみんなのために、旅に出ました。
子どもたちは三人。
けれど三人は、暗闇の中ですぐに困ってしまいました。
真っ暗で、どこを目指せば良いのかもわからないのです。
すると三人の前に、おじいさんが現れます。
「まず、太陽に会いに行きなさい。太陽もこの闇に怯えているが、きっと力を貸してくれるだろう。
闇はどんどん広がって、濃くなっていくだろう。この先の渓谷に、闇が湧く場所がある。それをどうにかしなくては。
最後に二つの月を起こすのだ。今は眠りの呪いにかかっているが、この香を使えば起きるだろう。月が暗がりを照らしてくれる。そうすれば、太陽も顔をのぞかせてくれるはずだ」
そう言って、おじいさんは消えて行きました。
ある子どもは、誰が何をしても開かなかった太陽の扉を開き、隠れていた太陽に光を分けてもらいます。
これで暗闇を行くことができます。
三人は灯りを手に、渓谷へと向かいます。
ある子どもは、湧き出る暗闇を閉じ込めました。
暗闇はそれ以上濃くなることはなくなりました。
ある子どもは、身一つで海を歩き、沈んでいた月を起こしに行きました。
けれど、暗い空に、月が昇ることはありませんでした。
海を歩く子どもは、月を起こすことをせず、2人の子どもたちを連れてひたすらに海を歩きます。
そうして。
三人は、闇へと消えて行きました。
ニ人をいざない、闇へと消えた子どもは、闇に魅せられてしまったのです。
その後長きに渡り世界は闇に包まれました。
救世主が現れるまでの100年を、人々は暗黒時代と呼びました。
そのきっかけとなった子どもを、魔に堕ちた者として、魔女、と呼びました。
「それがーー」
「彼女が魔女になった理由……」
留は絵本を閉じる。
「魔女と呼ばれた理由、とでも言った方がしっくりくる話だけれど」
そう呟いて、いいや、と否定する。
三人の子どもはおそらく神子。
ならば、魔女と呼ばれた子どもも、他の2人も、召喚された異世界人だろう。
「やっぱり、このタイトルでいい、か」
そして、これこそが。
「私が魔女になる理由……」