彼女が魔女になった理由
短い……
夜の帳も降り、ハインケル邸も静寂に包まれていた。
廊下にはランプが灯され、見張りの兵があちらこちらに立っている。
そして。
誰もいない図書室に、留はいた。
勝手に拝借したランプを手に、書架の間をひっそりと歩く。
「……」
一冊本を手にとっては、また戻す作業を繰り返す。
目的のものはそうすぐに見つからないものらしい。
神子に関する書物は、ざっとだがこの数日間で目を通してある。
そこには書かれていなかった。
宗教、魔術、哲学に歴史。いずれの本にも、書いてはいなかった。読み落としがなければ、の話だが。
留は一つ、ため息をつく。
今夜は2人とは別行動だった。
那毬は街へ出た。彼女はお金を稼ぐ目的と、外からの情報を得る役割がある。
誠は今日は部屋で休んでいる。
外の護衛への目くらましも兼ねているが、彼は街へ出る前から様子がおかしい。少し休ませておきたかった。
そもそも、と留は思う。
2人とは立場が違う。
望まれてこの世界へと来た2人と、偶然迷い込んでしまった自分。
そこに大きな隔たりを感じざるを得ない。3人が望もうと望むまいと、だ。
だから。
留は焦燥にも似た感情に突き動かされるように行動する。
自分を守るため。2人に迷惑をかけないように。
ふと、部屋の片隅を見やる。
昼にはよく行く絵本の置かれた場所。
少し、息抜きをしよう。
この世界に来てから、小説らしきものはほとんど読んでいない。昼間とて、フェイクで手にとっているだけだ。
「竜と王様」
「4匹のにわとり」
「お菓子の国の姫」
どの世界も、絵本というのは似たような話が好まれるのだろうか。
ぱらぱらとページをめくる。
一冊読んで、次へ。また一冊読んで、次へ。
本来の目的を忘れて、絵本を読みふける。
そして。
ふと、手にとった本を見て、留は表情を変えた。
ひどく古い本だ。ところどころ装丁が剥がれている。
少女が1人描かれた表紙に、暗い背景。
タイトルはーー




