ため息
「神子様、今後のことですが……」
イネスとハインケル伯爵の目が4人に向いてようやく、3人は呼吸の仕方を思い出した。
「…お顔の色が優れないように見えますが…」
「疲れが出ているようだ。昨日だいぶはしゃいでおられたようだからな」
心配そうな顔をするイネスに答えたのは、ケイだった。
「あまり無理はなさられませんように。しばらくこのハインケル邸に滞在することが決定いたしましたので、ゆっくり身体をお休めください」
当初は3、4日の滞在予定だったはずだ。疑問が顔に出ていたのだろう、イネスは続ける。
「現在、王都は神子様をお受け入れできる状態ではありません。王都を占拠している者達が討伐されるまでは…その後王都が落ち着くまでは、神子様方にはこちらで安全に過ごしていただきます。幸いハインケル伯爵の騎士団は大陸の中でも屈指の強さを誇ります。企みを持つものがいようとも、神子様方に手は出せないでしょう。
「……」
いや、今まさに手を出されたのだが…。
内心そんなことを考えながら、3人は黙って頷いた。
今彼らにケイのことを言うことは得策ではない。その点で、3人の意見は一致していた。
「時間があるってんなら、魔術の手ほどきでもしようかな」
ニヤニヤしながらケイが言う。
「それもいいですね。この時間を無駄にすることはできません」
「ならば…汚いかもしれないが訓練場を使うと良い。家庭教師の手配もしよう」
「剣術に関しては基礎は私が教えましょう。座学も手配が済むまで僭越ながら私が」
トントン拍子に決まっていく今後の事に、3人は焦る。
このままではケイとまともに話をしなくてはならなくなる。
「どうする?」
「……どうしようもない」
「……留さん、すぐに諦める癖なおした方がいいよ」
不貞腐れたような留の言葉を那毬が嗜めた。こちらも若干諦め気味だ。
「まぁ、2人とも…腹をくくれと言う事で」
力無い声で誠が言う。
「腹くくるの何度目よ」
3人の異世界からの救世主は、重い、重いため息を吐いた。




