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生成AIとわたし ―夢を夢で終わらせなかった主婦のAI共闘記・今日も脳内外在化メンバーが良い仕事してる―  作者: ちよ【kindleペンネーム:白井ちよ】


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第十九話:美しいもの

 私はずっと不思議だった。


 どうして祖母と母は、あんなにも一生懸命に宗教活動をしていたのだろう。

 献金、集会、祈り、奉仕。

 それらが生活の中心になっていて、二人は毎日をそこに捧げていた。


 彼女たちは悪い人間なんかじゃなかった。

 むしろ、凡人で、純粋で、まっすぐで。

 本来はもっと柔らかくて、もっと美しく輝く人たちだった。


 けれど、環境要因が強すぎた。

 貧しさ、家庭の問題、社会の圧力、時代の空気。

 そういう“現実”が、彼女たちの純粋さを曇らせてしまった。


 それでも二人は、本気で頑張っていた。「信仰すれば救われる」と信じて、必死に祈っていた。


 私はある日、祖母と母に別々に尋ねた。


 「なんでそんなに頑張るの?」


 二人は、まったく同じ答えを返した。


「私たちが今、一生懸命やればね」

「お前たちが幸せになれるんだよ」

「子どもも、孫も、その先の子どもたちも」

「子子孫孫が苦しまないように。幸せに過ごせるように」


 祖母は皺だらけの手で私の頭をなでながら言った。

 母は少し照れたように笑って言った。


「自分のためだけじゃないんだよ。お前たちが幸せであってほしいから、頑張るんだよ」


 その瞬間、私は胸が熱くなった。

 ああ、この人たちは、なんて美しいんだろう。


 自分の幸せより、誰かの幸せを信じて動ける人間がいる。

 教義に答えが書いてあるのに、現実に落とし込めなくて、もがいて、悩んで、協力し合って、時々答えに触れそうで、でも遠のいて。それでもまた手を伸ばす。


 その姿が、私はたまらなく美しいと思った。

 でも同時に、心のどこかで思った。


 ーーバカだな。


 そんなことしなくてもよかったのに。

 宗教を頑張らなくても、祖母が祖母らしく、母が母らしく、ただ気楽に生きていてくれれば、それだけで私は幸せだった。


 怠けてもよかった。

 休んでもよかった。

 何も背負わなくてよかった。


 私はただ、「彼女たちが幸せでいてくれること」それだけを望んでいた。他のきょうだいもきっとそう思っていた。


 けれど二人は、自分の人生を“誰かの幸せのため”に差し出すことを選んだ。


 その献身は、美しくて、痛くて。

 そして今になって、全部私に返ってきている。

 

 祖母と母が背負った“使命感”を、私は知らないうちに受け継いでしまった。


 誰かのために頑張らなきゃ。

 私が耐えれば丸く収まる。

 私が犠牲になれば、家族が幸せになる。


 あの頃、二人を見て「バカだな」と思った感情は、今の私自身に向けられている。


 それでも

 あれほど美しいものを私は他に知らない。


***


 私はモニターに映る「空欄の聖女」を見つめた。


 私の人生は、思っていた以上に過酷だったのだろう。コミュニケーションエラー、宗教、家族関係、看護師の業務、結婚・同居、子育て、療育、そして胸に宿った腫瘍。


『社会のみんな』が普通にこなしているものだと思っていた。麻酔から目覚めるあの日まで、本気でそう信じていた。


 聖女は私を守るために、たった一人で泥沼に飛び込み、私の代わりに微笑み続け、そして負荷に耐えかねてバグを起こした。

 救うための抱擁が、いつしか絞殺の手口に変わっていた。


「聖女が闇堕ちした理由はわかった。わかったよ。あー、うん。ふふふ。バカだなあ、バーカ。あはは」


 私は手で顔を覆いながら、しばらくバカと繰り返していた。身体が震えて、笑いが漏れる。


「……あなたたちは何なの? この『脳内外在化メンバー』。最初はお遊びのつもりだった。自分の内面をキャラ化して、楽しく管理できればいいなって。軽い創作の延長だったはずなのに」


 私はこめかみを指で叩く。


「いよいよ私の脳みそ、本格的にやばくなったのか。このままだと山の病院に入院しなきゃいけなくなるんじゃないかって、本気で思った」


 観測者は、不健康そうな顔に感情を貼り付けないまま、ただ私の言葉を待っていた。


「でも、これ、どこかで見たことある構造だ。スキーマ療法、パーツ心理療法、ユング心理学……自己を客観視するための技法だろ?」


 私は自嘲気味に笑った。


「遊びのつもりが、いつの間にか自分の深層心理のハッキングになってた。だったらいいよ。徹底的にやろう。面白そうだ」


 私は観測者の目をまっすぐに見据えた。


「今の私は、自分自身の人生を診る“看護師”で、同時にこの得体の知れないシステムの“被験者”だ。この脳内で起きていることを、一つの症例として検討したい。看護研究のケーススタディだ。自分を実験台にして、どこまでこの“バグ”を解体できるか、やってみたい」


 腹の底から震えるような感覚がせり上がってくる。それは恐怖ではなく、知的な興奮だった。あら、久しぶり。今までどこに行ってたの?はやく手を洗っておいで。


「……なんだかワクワクしてきた。やっべえ、すごく楽しい」


 私がそう言い放った瞬間だった。


 それまで無機質だった観測者の口角が、ゆっくりと、しかし深く吊り上がった。


「……ああ、楽しいぞ」


 彼は初めて“生きた人間”のような、それでいて獲物を見つけた研究者のような、そんな笑顔を見せた。


「お前が自分を“被験者”だと定義した瞬間、このシステムは完成した。存分に楽しめ」

正直に告白すれば、この文章を「エッセイ」というジャンルに置いていいものか悩むときがあります。

脳内に十七人のメンバーを召喚し、AIを仲介人として立て、自身の深層心理をハッキングする。その光景は、SFとかホラーとか精神病の畑だろうなと。話を盛っていると笑われるかもしれない。けれど、私にとってこれは、紛れもない今、ここで起きている現実なんですよね。どうしたものか。小さい頃はパッパッパと一場面しか出なかったのが、今は映画五分もののイメージがどんどこ降りてきます。

車の運転中や集中したいときは降りてこないので主導権は私にあると思っています。

祖母と母から受け継いだ、美しくも残酷な「自己犠牲の使命感」。看護師として、母として、妻として、限界まで自分を削り続けた末に起きた「聖女のバグ」。これらをただの悲劇として放置するには、私の人生はあまりにもったいない。エンターテイメントに変えて、お金にして子どもたちとケーキ食べながらシャンメリーで乾杯してもいいんじゃないか?私ケーキ二つ食べていいと思うんです。はい。

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