12.再戦(マヤ視点)
投稿順を間違えて次話を先に投稿してしまいました。
申し訳ありません。
十日前、マヤは意識を刈り取られた後、オルディナがダンジョン内の小部屋を封じた場所に閉じ込められていた。
本来ならマヤにかけられた眠りの魔術は、術者が解除するまで眠り続けるものだった。
しかし、研究のためにとリリが魔力を半端に込めた魔鉱石を持っていたことが、その運命を変えた。
リリの動向を注視していたローギウス神が、リリとは違う存在が己の加護の力のかけらを持つことに気がついたのだ。
疑問に思ったローギウス神に起こされ、マヤは状況を理解しないままにリリの魔力、すなわち、ローギウス神の加護を宿す魔鉱石を持っていた理由を話した。
正直、神が別の人に与えた力を利用しようとしていたわけだから、何らかの罰があるものと思っていた。しかし、ローギウス神はそうは考えなかったようで、マヤに言う。
「なら、ちょっと苦戦しているようだから、あの子を手伝ってきてもらおうかな」
ローギウス神はちょっとお使いを頼むような気軽な口調だ。
リリが何と戦っているのか、この時マヤは知らなかったが、リリが苦戦するようなモノがそこらの魔獣でないことは明らかだった。
「それは、どういうことでしょうか」
尋ねるマヤに説明されたのは、今、リリがオルディナと戦っていること。
そして、ダンジョンの地下で起こっている密かな戦い。
その戦いがどう決着するにせよ、眠りについている母神に異変があれば世界の破滅に直結するという途方もない話だった。
「このままなら、いづれにせよ待つのは滅びだ。
それならそれでいいんだけれど、あの子がどう事を転がすかも見てみたくてね。
最後の時に、あの子も呼んであげたいんだ」
どうやらローギウス神は、世界が滅ぶ瀬戸際の戦いの決着がつく際に、己の加護を宿すリリもその場にいて欲しい、ということのようだ。
「今までの話を聞いて、私があの子を地上に戻すとはお考えにならないのですか」
「それならそれでいいんだけど、でもそしたら、みんなで一緒に滅びるか、オルディナの支配する世界かの二択だよ」
言葉に詰まるマヤに、オルディナは楽しげに笑う。
「それに、あの子なら、ここで起きていることを知っても知らなくても、きっと飛び込んでくるよ。
今はオルディナの眷属の器になっているみたいだけど、一緒にチームを組んでいた彼を助けるって決めているようだし」
それは、ルークのことだろうか。
ルークを助けるために、リリは旅に出たのだ。
リリはルークがダンジョンの底にいると知ったら、どんなに止めても先に進むだろう。
心から信頼するチームメンバーを、己の手の届かない所で失うつらさを知る身としては、マヤにリリを止められるわけがなかった。
お願いといいながら、結局どう動こうとローギウス神の望むように転がっている事態に思うところはあるが、こうしてマヤはローギウス神の願い通りに動くこととなった。
* * *
そして、今、マヤは走り去るリリの背中を、目の端で見送った。
正面からはその体躯に見合わない素晴らしいスピードで迫るバルクと、その死角から迫るエリサの姿があった。
「そんな姿になっても、連携は失われないんだね」
マヤは二人の攻撃を避けきると、二人の後ろにいるオルディナへと距離を詰め、至近距離から《風刃》をたたきつける。
オルディナはそれを避けようとせず、手で払うだけだった。
その手には傷はない。
マヤは、驚くことなくその様子を冷静に観察していた。
やはり、マヤだけの力でオルディナを傷つけることは難しい。
マヤは厳しい状況に、何か勝機はないかと、エリサとバルクの攻撃を避けながらオルディナをひたすら観察する。
リリがオルディナに負わせた腹の傷は、あいたままだ。
オルディナはその傷をふさごうともしない。
治療できない、のだろうか。
それとも、あれはマヤを誘うための罠だろうか。
わからない……。
考え続けるマヤにオルディナは、エリサとバルクに攻撃を続けさせながら言う。
「お前にはなんの加護も神気も感じられなかったが、どうして我が封を破り出てこられたのだ」
オルディナもまた、マヤを見透かすように凝視する。
「ふむ」
マヤの方も、どう攻撃を組み立てていいか決めかねていた。
マヤの使えるローギウス神の力は有限だ。
ローギウス神に加護をもらったわけではなく、その力の源は、リリが半端に力を込めた魔鉱石だ。
数は有限で、しかもそう数があるわけでもない。
このわずかな力で、オルディナに勝てる道筋は、まだ見つからない。
――それでも、リリがくれたこの機会を、私は絶対に無駄にしないから。
心の中で、詳しいことは告げられずに先に行かせたリリに告げる。
今度は、この間のように簡単に意識を刈られるつもりはなかった。




