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爆弾娘は今日もダンジョンを攻略中。なにかわからない加護をもらいましたが、がんばっていたら世界を改変していました  作者: 乙原 ゆん
第四章 世界の改変編

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3.常闇のダンジョン1(マヤ視点)

 リリがサンストナ国の王都にたどり着く十日ほど前のことである。


 マヤは、王家とギルドより依頼を受け、最難関ダンジョン「常闇のダンジョン」に潜っていた。

 本来なら、慎重を期してパーティを組んで挑むべきダンジョンなのだが、マヤの場合は一人の方が融通が利くことと、戦闘が目的ではなく、調査が目的であったため、今回は身軽さを重視し一人であった。


 王都にゲオルクやニコラスがいればどちらかに同行を依頼しただろうが、王都にいる高位ランク冒険者はAランクのハンマー使い一人で、さすがに地上が手薄になりすぎるからと、連れてくることは考えなかった。


 実際、道中は順調だった。

 リリが使う《気断(シャドウ・シールド)》の上位魔法である《隠蔽(シャドウ)》や、錬金術で作った魔獣避けのアイテムを使い、下層へと進んでいく。


 「常闇のダンジョン」が最難関と呼べるのは、その環境の特殊さにもある。

 光を灯しても、その光の届く範囲が異様に狭いのだ。

 たいまつでも、魔術を使っても、見えるのは通常の半分ほどの範囲になるだろうか。

 暗視の魔術を習得していれば視界には問題ないが、それでも、暗視のみでの戦闘は通常と勝手が違う。

 また、出現する魔獣も、上層は吸血蝙蝠(ブラッディバッド)やら黒ゴブリンだが、下層に行くにつれて不死属性を帯びた魔獣や、捕食した獲物をマリオネットのように操る魔獣など、普通に戦いたくないレベルのものばかりになる。


 今回、マヤはそれらと戦うつもりもなく、また、その必要もなさそうだった。

 ダンジョンの内部は、入り口を無理矢理こじ開けられ、内部もまた黒龍が侵入するのに邪魔だと見なされたものは全て破壊しつくされている。

 瓦礫の山を越えながらの道中だが、おかげで、戦闘による足止めは受けなかった。

 ただ、それは黒龍の後を追うマヤをより不安にさせた。

 黒龍は、本来不可能なはずのダンジョンを破壊しているのだ。

 マヤはリリという例外を知っているが、おかげで、少し想像がつく。


「つまり、神々レベルの問題が起きているって話だよねぇ」


 瓦礫の先にある、次の階層への入り口に進みながらマヤは自分に言い聞かせるようにつぶやく。


「調査をしたとして、原因に私らが手を出せるかってなるとまた別問題だ。ま、いずれにせよ、生きて情報を持って帰ることを最優先に考えるとしよう。

 リリも、きっと帰って私がいないと、つらい思いをさせちまう」



  *  *  *



 次の階層も相変わらずダンジョンの壁の残骸が山となっている。

 代わりに次の階層への入り口までほぼ一直線で進めるので、迷う必要はないが、高低差は地味に疲労を呼んだ。


 上の階層と変わらず、無理をしないペースで慎重に進んでいたマヤだが、前方から戦闘音がした。

 場所は、今越えようとしているがれきの山の先、だろうか。

 今まで黒龍の潜行に巻き込まれなかった魔獣に遭遇することはあったが、大抵怯えたように縮こまっていて、マヤが隠蔽(シャドウ)》の魔術を発動していることもあり、戦闘することはなかった。

 王家とギルドで共同管理しているこのダンジョンに入るには特別な許可がいるし、調査依頼を受ける時に中に人がいるなどの話も聞いていなかった。

 人間は誰もいないはずである。


 魔獣同士が戦っているのかとも思ったが、刃物を使った戦闘音のようにも聞こえる。


 マヤは、ひとまず気配を消したまま近づくことにした。

 そこで戦っているのが密猟者なら助けるつもりはなかったが、それでも、戦闘中の彼らを追い抜いていった後ろから刺されないためにも何が起きているのか把握をする必要があった。


 そうして、息を殺して近づいたマヤは、そこにありえない人物を見た。


「ルーク!?」


 そこにいたのは、全身を呪いの黒に覆われ、到底人間とも思えないほど禍々しい気配を宿したルークだった。


 ルークは叫んだマヤに反応せず、ただ淡々と向かってくる魔獣と戦っている。

 その戦い方は、以前、呪いを調べるために見せてもらった動きと違っていた。

 

 ルークを襲っているのは、黒ゴブリンだった。

 黒ゴブリンが手に剣を持ち襲ってくるのを、正面から受け止め、押し返し、一撃を与える。

 力を出し惜しみなく使っていると言えば聞こえはいいが、戦いの効率や、これから先に進むための力の配分も何も考えていないかのような動きに、違和感が強い。


「なんであんたがここにいるんだ!  その呪いはどうしたんだ! 一緒に行ったリリはどうしたんだい!」


 叫んだところで、ルークがマヤを見た。

 その目は虚ろで、その昏さは、動揺したマヤを正気に戻すには十分だった。

 

 そうだ。

 ルークは、解呪に行ったはずだ。

 だが、ここにいるのは、呪いに乗っ取られたルークなのだ。

 つまり、解呪に失敗したのだろう。

 この場所に何故いるのかはわからないが、おそらくは呪いが関係しているのだろうから、もしかしたら呪いはあの黒龍に関係するものだったのかもしれない。


 マヤはそこまで考えると、唇を噛む。

 マヤに、あの黒龍をどうにかする力はない。

 全身を呪いにむしばまれたルークに正気を取り戻させる術も思いつかない。

 だが、このルークなら、マヤにも簡単に捕まえることはできるだろう。

 ルークには悪いが一旦拘束して、呪いを解けるかどうかは、依頼を終えてからじっくり見ればいい。

 そう考えることで動揺した精神を落ち着かせ、マヤは息を吐く。


 丁度、黒ゴブリンを正面から倒したルークが、マヤに振り向いたところだった。

 戦闘中に声をかけたことで、どうやら排除対象と認識されたようだ。


「逃げられるよりは、よっぽどましだね」


 マヤも、捕獲に使えそうな魔道具を取りだし、戦闘態勢を取る。

 捕獲後のことは、あまり考えてはいけない。

 解呪できないから、旅立ったはずだという心の声を無視して、マヤは正気を失くした様子のルークを見つめる。

 リリが失敗したということは、つまりそういうことなのだ。

 だが、このままダンジョンの奥で呪いに操られ誰にも知られずに朽ちるよりは、と思うのだ。

 脳裏に、リリの母親、かつて旅立って戻らなかったパーティメンバーのバルクとアリィの姿が蘇る。

 マヤは覚悟を決めて呪文を紡いだ。

タイトル変えるかもしれません

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