13.火山のダンジョン4
ルークと打ち合わせはできないまま、戦いは続いていく。
三つ頭の狼がどんな攻撃をしてくるのか全部予想がつかない。
確実に言えるのは、真ん中の頭の大技は炎を吐いてくるやつだということ。
他の二つの頭が何をしてくるのかわからないから、怖いところだ。
ルークは、大技を出させないようにと、積極的に攻撃をしかけている。
わたしもそんなルークにあわせて攻撃を放つ。
牽制くらいにしかならないけれど、《風刃》、《火炎撃》、《水流弾》と属性を変えて、どれが一番効くのか見極めていく。
けど、風、火、水はそこまで変わらない。
氷も試してみたいところだけれど、残念ながら詠唱をする余裕を作り出すことはできない。
「くそっ効かねぇっ」
どうやら、ルークも同じみたいで、悪態が聞こえた。
わたしたち、どっちも手詰まりだ。
一旦部屋を出て態勢を立て直そうにも、入り口は遠い。
本当、どうしよう。
魔法がダメなら、何か、役に立つもの――。
「そうだ!」
これなら、きっと、大丈夫。
「ルーク!」
「どうした!」
「あいつの動きを、たぶん、止められると思うの!」
「まじか!」
「けど、ちょっと、範囲の調節とかできないから!」
「わかった! こっちは気にするな! リリの思う通りに!」
ルークの了承をとったところで、アイテムバッグから、目当てのものを取り出す。
手の中には、透明な輝きを宿した魔鉱石が複数。
「魔鉱石、投げるから!」
そう言えば伝わるはずだ。
加減なんて考えずに一気に詰め込めるだけ魔力を詰めて、爆発する前に三つ頭の狼と天井に投げつける。
石を投げつけられた三つ頭の狼は、わたしの魔力を宿して点滅する魔鉱石を警戒するように見つめている。その間にわたしは迷わず退避。
そう何歩も離れない間に、先に三つ頭の狼にあたったほうが爆発した。
甲高い犬みたいな悲鳴が聞こえ、続いて、天井に向けて投げた方が爆発し、天井の岩が崩れ落ちてくる。
土煙がすごい。ほこりが目に痛くて、このままだとよく見えない。
「《風刃》」
ルークがいないと思われる方に向かって放ち、ほこりを払う。
すると、天井から落ちた土砂で、さっきまで三つ頭の狼がいたところがうもれているのが見えた。
うまくいくか賭けだったけれど、狙い通り、動きを止めることはできたようだ。
「ルーク! 大丈夫!?」
「おう、こっちだ!」
三つ頭の狼のお尻側にルークはいた。
少し巻き込まれたのか、砂だらけだ。
一応ルークの無事を確認できたから、詠唱を始める。
「それじゃ次行くよ!
我が魔力を糧に、ここに雪原の女神の降臨を希う。
卑小なる身に、その力の偉大さを示したまえ。
求めるは、大いなる慈悲のひとかけら。
氷の息吹、その激しき美しさをここに現したまえ!」
詠唱を唱え終えて、発動可能状態にして三つ頭の狼が出てくるのを待つ。
さっき土砂が動いていたから、中にいるものは生きているようだ。
彼らが、顔を出した瞬間を狙う。
「《氷柱撃》連撃!」
頭を狙い、三発の《氷柱撃》が三つ頭の狼を貫く。
絶叫があがり、起き上がり欠けていた体が土砂の中に倒れていく。
そして、この好きを逃さぬよう、ルークが土砂の山を駆け上がっていく。
同時に、周りの魔力が三つ頭の狼に向かって流れていくのに気がついた。これは、何か仕掛けてくるやつ。
「ルーク!」
わたしの悲鳴に、ルークもはっと気がついたように、反転する。
けれど、間に合わない。
「《風牢》!」
間一髪、唱えた魔法が間に合い、わたしとルーク、それぞれのまわりに風の繭がバリアとなってできあがる。
そして、直後に、バリアの外側を、あの真ん中の頭が吐いた火炎が撫でるように往復する。
炎は風で阻むことはできたけれど、かなりの暑さだ。
それでも、バリアがあるから、まる焼けにはならない。
制御を手放さないよう、しっかり魔力を注ぐ。
息が切れたのか、炎のブレスは三往復したくらいで途切れた。
追撃が来ないことを確認して《風牢》を解く。
わたしたちの攻撃が効いているのか、三つ頭の狼はボロボロだ。
それでも、今の間に土砂から抜け出したのか、狼はしっかりと立っている。
そうだよね。さすがにあれくらいで倒せるわけはないよね。
わたしは、改めて気を引き締めなおした。




