10.火山のダンジョン1
ダンジョンの中に飛び込んだわたしたちは、奥へと走った。
ルークの先導で、入り口から見えずらい位置に逃げ込む。
そこにいた暗い色の炎を吐くトカゲ型の魔獣を倒して、呼吸を整える。
追っ手が来るようなら、隠れてやり過ごすか、ここで食い止めるか、それとも、見つからないように無視して先に行くか、考えないといけない。
けれど、直後、大きな地鳴りが響き、ダンジョンの入り口が土砂で埋まってしまい、その心配は無用となった。
「……しばらくは、大丈夫そうだな」
「そうだね」
どこか力が抜けたように言うルークに、頷く。
「ひとまず、そいつの始末をしてから行くか」
「うん」
トカゲは一メル程の大きさで、皮が加工に使えるそうだ。
今回はここで処理する時間はないから、マジックバッグにしまうだけだ。
収納のために、トカゲに触れたところで、気がついた。
「このトカゲ、炎だけじゃなくて闇属性も持ってるの?」
ルークは頷いた後付け加える。
「俺もここに入るのは初めてだから、聞いた話でしかないが、ここに沸く魔獣は闇属性と火属性を二つ持っているらしい」
「へぇ。珍しいね」
「まぁそうだな
ここには立ち入り禁止だったし、あんま関係はなかったけどな」
「立ち入り禁止じゃなかったら、人気ダンジョンだったかもしれないのに、もったいないね」
「いや、そうでもない。
闇属性持ちの素材の加工は聖都まで出ないとできる人間がいない。
加工と運搬で、結構手間賃がかかるからな。禁止されてなくても不人気だったかもしれない」
「そうなんだ」
そうして、トカゲをバッグにしまうと、しまっていた加護を抑えるマントを身につける。
他の装備も確認してから、奥に向かって出発した。
ダンジョンの中は、村人の立ち入りが禁止されている割には、魔獣の数は少なかった。
もともと湧きが少ないダンジョンなのかもしれない。
けれど、一匹一匹の魔獣は、なかなかに手強くて、数がいなくて助かる部分もあった。
必要最低限を倒しながら、奥へと進む。
どんどん先に進みたいけど、ここは地図もないからマッピングしながら、確実に進むしかないみたい。
わりとゆっくりのペースで進んでいく。
「この道がこっちにつながってたってことは、後は行ってないのはこっちか」
「迷路みたいだね」
「そうだな」
「下の階まで、あとどれくらいかなぁ」
ルークの地図をのぞき込んでいると、ふと、何かの気配を感じて振り向いた。
「あ、《炎鎧蛙》だ」
これから進む予定だった方角から、ゆっくりと姿を現したのは、マグマガエルと言われる、二メル程の大きなカエルだった。
黒い体表は、マグマが固まったもので出来ていて、とても硬い。
炎属性の攻撃でマグマは溶けるけど、溶けたマグマはあたりに飛び散って戦いにくいから、基本的に炎属性以外の属性で戦う必要がある。
倒すには、口の中とか目とか、ピンポイントに狙っていく必要があった。
「面倒だな」
「無視して走る?」
「あいつの舌の射程範囲は広かったはずだ。走っているところを後ろから攻撃されたくないな」
「じゃ、正面突破だね」
「ああ」
そうして、わたしは詠唱を始める。
使うのは、氷魔法だ。
準備ができて合図をすると、ルークが走り出した。
走ってくるルークに気がついたマグマガエルが舌で巻き取ろうとしてくる。
それをルークは器用に避け、隙をついて、伸びきった舌を地面に固定するように剣で突き刺した。
「リリ、今だ!」
「《氷柱撃》!」
ルークの作った隙にあわせて、準備していた魔術を撃ち込むと、氷柱がカエルの口の中に吸い込まれていく。
それで、充分だったようだ。
マグマガエルがみるみる凍り付いていく。
氷属性は弱点でもあったみたいで、あっさりと倒すことができた。
「やったね!」
「ああ」
マグマガエルは、持って帰るのには大きすぎるし、素材にできる個所はすくないらしく、素材の回収はせずに先に進んだ。




