16.裏・試練の道(ゲオルク視点)
2章8話前後
リリたちが試練の道に行った直後に戻ります
ゲオルクとニコラスが、試練の道へ挑むというリリとルークの準備を手伝った翌日。
二人が山に向かうのを見届けて、同じく、付き添いで同行しているニコラスにゲオルクは視線を投げた。
「どうする?」
「ギルドに行ってまた適当な依頼を受けるかな」
「そうか」
「あん? 別にお前と一緒なんて言ってねぇけど」
「土地勘のない場所でソロはどうかと思うぞ」
「……ちっ」
軽く喧嘩をしながらも、結局は二人でギルドへと向かった。
顔を合わせれば喧嘩をし、ギルドからもよく注意を受ける二人だが、ゲオルク個人としてはニコラスに思うところはない。
元気がいいとか、よく回る口だとか、帽子の趣味はなかなかだとか、思っていることを口に出せば喧嘩の種になるのだろうが、今のところそれを口にする機会がなかった。そのため、それらが喧嘩の理由になったことはなかった。
ゲオルク自身としては、ニコラスのことを、それこそ、戦場で背中を任せても良いと思えるくらいには信用している。
喧嘩をすると言うのはそれだけ本音でぶつかっているということで、口下手を自覚しているゲオルクとしてはニコラスとの関係を好意的に受け止めていた。
リリたちとは別行動になってしまったが、彼女たちもまだ駆け出しとはいえ、前回のスタンピードでは立派に立ち回っていた。なので、そこまで心配はしていない。
どちらかというと、リリたちが何をやらかしてくるのか、それが楽しみなくらいである。
* * *
「え、もう一回、言ってくんない?」
ギルドの受付嬢に、ニコラスが絡んでいる。
ニコラスと言い合いながら依頼を決め、受付にもっていったところである。
「ですから、一昨日、お二人が森の魔獣をことごとく狩ってしまわれたせいで、新人にまわす獲物が不足しているんです。
ですので、当ギルドとしましては、しばらくの間お二人の依頼書は受注いたしません」
思い出されるのは、一昨日、どっちが狩りがうまいかという話で喧嘩になり、結局、やってみるのが早いだろうと近隣の魔獣を狩りまくった記憶だ。
買取所に持ち込んだ獲物の量にギルドの職員は青くなっていた。
その後、すぐに別の職員に別室に連れて行かれ、魔獣にも生態系があるなどということを聞かされた。処分は検討すると言われたが、普段ダンジョン内の依頼しか受けないため、そういうものなのか程度の認識で、叱られて終わりだろうと思っていた。それがこんなことにつながるとは思いもよらなかった。
勇敢にもニコラスに言い切った職員に頷いてみせる。
「ならば致し方ないな。迷惑をかけるつもりではなかったが、結果的にそうなってしまったのは申し訳ない」
ニコラスが弾かれたようにゲオルクの方を見て叫ぶ。
「てめぇのせいだろ!」
「お前も嬉々として狩っていただろう」
「ぐ……」
ニコラスも事実に反論の言葉が出ないようだ。
案外素直に聞き分けた二人に、職員はほっとした様子だ。
ギルドの指示には従うが、しかし、ここで依頼を受けられないとなると、やることがない。
ほっとした様子の職員に、ゲオルクは思いついたことを聞くことにする。
「ここでの依頼を受けることができないとなると、しばらく暇になる。
この町の見どころを教えてもらえないだろうか」
「へ!?」
「お、それいいな! たまにはいいこと言うじゃん」
目を白黒させる受付嬢に、ニコラスが同意する。
受付嬢の目が、助けを求めるように周りを見たが、周囲はゲオルクたちが窓口を一つ塞いでいるために慌ただしく、誰も目を合わせる者はいない。
「あ、あの。それは、観光的な意味でよろしいのですか?」
「ああ」
「そう!」
「で、では――」
そうして、しどろもどろになった受付嬢からこの町に来たからには行っておくべき十のスポットを聞き、ゲオルクとニコラスはギルドを後にした。




