14.女神様2
女神様はルークの方を見たまま、無常に告げる。
「呪いは、神の眷属を屠りし贖い。
そなたが死ねば、呪いも消えよう」
「そうか」
ルークはどこかほっとした様子だった。
きっと、自分の死を受け入れているのだろう。
満ち足りた雰囲気に、なんでだろう、わたしの方が納得できない。
「ルーク、死ぬつもりだったの?」
ルークはどうするか視線をさまよわせた後、曖昧に頷いた。
「死ぬつもり、というか、この呪いのせいで、俺はもう長くない。
けど死んで、呪いをまき散らすようなら、死に方、考える必要があるだろ」
「なんで、……」
「やりたいことやった結果だ」
それ以上話す様子のないルークに、わたしは思わず叫んでいた。
「なんでそんなに簡単に、受け入れられるの!
呪いの解き方、あるかもしれないのに」
「そうまでして解くもんだとも思ってなかったしな」
ぐぬぬ、あっさりと言ってのけるルークに、腹が立って仕方がない。
本人は満足してたって、わたしとか師匠とか、ルークがいなくなったらどう思うのか、ちゃんと考えているんだろうか。
けど、それ以上言い返す言葉が思いつかなくて、唇を噛みしめる。
「さて、次は、リリの願いを聞こうか」
女神様は、わたしとルークのやり取りが落ち着いたのを見て、わたしの方へと向き直った。
どうしよう。
わたしは、ローギウス神の加護について聞きに来たはずなのに。
なのに、それ以上に聞きたいことができてしまった。
迷う。
けど、どちらがより後悔するかって考えると、結論は出ていた。
女神様が、ルークよりわたしに先に願いを聞いていたなら、もう、取り返しがつかなかった。
だから、これは、きっと幸運だったのだ。
――幸運は戻ってきてくれない。
師匠の口癖が、頭をよぎる。
なら、聞くことは、ひとつだ。
「どうしたら、ルークを助けることはできますか?」
「リリ!?」
ルークは驚いたように叫んでいるけれど、さっきのわたしの驚きと、これでおあいこだよ。
女神様は、その口角を上げ、笑みを浮かべる。
「その者の呪いは、神の眷属を殺めしゆえ。
ゆえに、誰にも解くことはできぬ」
やはり、助ける手段はないのだろうか。
女神様は、続ける。
「けれど、リリが聞いたのは、助ける手段であったな。
呪いによる死の運命を変えることならば、できるであろう。
かの神の眷属は、近くのダンジョンに眠るものを監視し、万一そのものが目覚めた際には、その場に足止めし可能であれば、とどめを刺すことを責務としていた。
ルークが代わりに、その責務を全うすれば、呪いによる死はまぬがれよう」
「呪いは、完全に解けないんですか?」
「眷属の死はなかったことにはできぬ。
ただ、その責務を代わりに果たすことにより、死に変わる贖いとして認められるはずだ」
「はず?」
「贖いが贖いとして認められるかは、呪いが決める。
確かなことは言えぬが、おそらくは、大丈夫なはずだ」
「わかり、ました」
ルークを見ると、信じられないという顔をしている。
「挑戦するならば、急いだ方が良い。
呪いの進行を留めておるようだが、それでも、わずかずつ進行はしておる。
残された時間は、三月ほどだ」
つまり、間に合わなかったら、ルークは呪いに殺されてしまうのだろう。
「はい!」
ルークの故郷まで行って、ダンジョンを攻略するのでギリギリかな。
一回、師匠のところに戻りたかったけれど、そんな時間もなさそうだ。
考えていると、女神様が終わりを告げる。
「では、これにて試練の褒美は終わりだ」
結局、ローギウス神からの加護の話は聞けなかった。
けど、ルークが助かる方法は聞けたし、収穫がないわけではない。
あ、でも、ルークを助けても、ダンジョンに入る許可が下りないから、てことは、結局、またここに戻ってきて女神様の試練に挑戦したらいいのかな!?
考えていると、女神様の忍び笑いが聞こえた。
「ところで、リリは稀なる加護を貰いながら、その使い方がわかっていないように見える」
「使い方?」
「その加護封じの外套を脱ぎ、これと戦って見せよ」
そう言って、ここに来るときに戦ったのと同じようなゴーレムが地面からわいてくる。
「マントを脱いで、ですか!?」
「脱がねば意味はない」
驚いている間にも、ゴーレムは一歩一歩近づいてくる。
やる気だ!
迷ったけれど、女神様がいいって言ってるんだ。
マントを脱いで、アイテムバッグにしまう。
そうしている間に、ゴーレムが傍まで来ている。
逃げないと!
咄嗟に、《火炎球》を撃ち込んで逃げる。
「リリ!」
「リリちゃん!?」
「助太刀は許さぬ」
ルークとセナが叫んでいるけれど、女神様に止められている。
二人の加勢は期待できないみたい。
けど、打ち込んだ《火炎球》が、ここに来る途中にあんなに苦労したのが嘘みたいに、簡単にゴーレムにめり込んでいる。
なんでかわからないけど、これならいけるかも。
期待を胸に、わたしはゴーレムに対峙した。




