10.試練の道2
セナの言う通り、それから少し進むと、洞窟の幅が広くなってきて、すぐに広い空間に出た。
広場の周りは切り立った崖になっており、真ん中に巨大なゴーレムがいる。
五メルくらいの高さはありそうだ。
「ゴーレム、いるな」
「いますね」
初っ端に放つ魔法を待機させながら、わたしも頷く。
「じゃ、打合せ通り行くか」
そう言うと、ルークが駆けだし、ゴーレムがルークを捕捉した。
ゴーレムが、振りかぶった拳を振り下ろす。
ルークはそれを器用に避け、ゴーレムの後ろにまわった。
大技を振るったゴーレムの動きが止まる。
今だ!
「《氷縛》」
ゴーレムの足元を狙い、氷魔法を撃ち込む。
狙い通り、ゴーレムの足が凍り付いていく。
その隙に、セナが走り出す。
その後ろをわたしも続く。
広場の先まではゴーレムもついてこれないから、ゴーレムを倒さずにいこうと決めている。
まず、ルークが一足先に反対側の洞窟の入り口についた。
セナと二人、大回りでゴーレムを避け、ひたすら走る。セナが対岸に辿り着くか、といったところで、ルークが叫ぶ。
「リリ! ゴーレムが動き始めた!」
え、もう!?
走りながらちらりと振り返ると、足を止めていた氷がもうすでにほとんど残っていないのが目に入った。
効果消えるの早すぎ!
あのゴーレム、魔法抵抗が高いのかもしれない。
けど、今はそれどころじゃない。
走りながらだと氷魔法の詠唱は厳しい。
どうしようと考えを巡らせた所で、安全地帯にいたはずのルークが飛び出してくる。
「セナはそのまま走れ!」
言いながら、大剣を抜き放ち、ゴーレムから放たれた一撃を受け止め弾き返す。
「くっ」
「ルーク!?」
「いいから、早く!」
ルークにも余裕がないのを見て、急いで詠唱を終え、魔法を放つ。
「《氷縛》」
ルーク越しに魔法が飛んでいき、再びゴーレムの足元を凍らせる。
「走れ!」
言われれまでもなく、セナの居る対岸に走りだしていた。
そのまま入り口に居たセナも合流し、ルークと三人、洞窟の奥まで走る。
「ここまで来れば、さすがに、……大丈夫かな?」
息切れしながら振り返ると、ゴーレムは入れないのか追ってきている気配はなかった。
「追っては、きてないな」
セナはまだ肩で息をしていて、話すどころじゃなさそうだ。
「女神さまの試練まで後どれくらいだろうね」
「さぁな」
言いながらこれから向かう方に再び振り返ると、足が板のようなものを踏み抜いた感触がした。
「えっ!?」
おそるおそる足元を見ると、表面は地面なのに、足で踏んでいる部分が地面に沈みこんでいる。まるで、なにかのスイッチのようだ。
「あ、れ……、これ、わな……?」
「罠、みたいだな」
「……です、ね」
「ご、ごめん!」
走ってきた方から、ガゴンと音がして何か重いものが転がってくる音がする。
今いるところは、進行方向に向かって、緩く下り坂になっている。
これは、走ったほうがいいやつ!
そう思い至るのと同時にルークが叫ぶ。
「走るぞ!」
走ってきたばかりだけど、再び全員で走り出す。
走りながらチラリと後ろを見ると、大きな岩が転がって来ている。
道幅いっぱいの大岩で、このままだと避けようがない。
どこかでやり過ごせる所を見つけないと!
けれど、全然やり過ごせそうな場所はなく、全員息が上がったまま走り続けている。
すぐ後ろにせまる大岩に、少しでもスピードを緩めると巻き込まれてしまいそうだ。
そんな状態で走り続けていると、唐突に分かれ道に出た。どの道に入るか、打ち合わせる余裕もなく、大岩の進行方向を避け、目についた脇道に飛び込む。
こちらに来る可能性もあったけど、岩は目算した通りの道に転がって行き、わたしが飛び込んだ道には来なかった。
「ルーク! セナ! 大丈夫!?」
けど、返事はない。
まさか、巻き込まれた!?
それとも、大岩の転がっていく道を選択してしまったのだろうか。
「どう、しよう」
呼吸はまだ荒い。
合流するのに他の道を追いかけてみるべきかな。
考えても始まらない。
ひとまず、他の道の様子を見てから考えよう。
そう思って、一歩踏み出すと、カコン、と再び先ほどの大岩の時と同じ、何かを踏み抜いた感触。
「これ! また!?」
けれど、今度は先ほどと違って岩が転がって来る様子はない。
ほっとしたところで、突然目の前が真っ暗になる。
「なに!?」
身構えるけれど、逃れ難い眠気に襲われ、抵抗する間も無く、意識が闇へと飲み込まれた。




