9.試練の道1
一日かけて準備を整え、翌日、試練の道があると言う山の中腹に来ていた。
山の中腹にある洞窟自体が試練の道になっており、クリアできれば女神様に会えるという。
クリアできなければ、洞窟の前に戻されると聞いているけど、そんなことってるのかな?
それを聞いた時は、やっぱり、普通のダンジョンとは違うんだなって思った。どんな試練になるのか、ドキドキする。
もちろん、新装備の白いマントの性能を実戦で試してみたいっていうのもあるんだけどね。
「この辺りって聞いたけど」
「あれじゃないか?」
ルークの指す方に、洞窟はあった。
「あれ……?」
「先客がいるみたいだな」
入り口に座り込んでいる少女がいた。
先日あった神官様が着ていた服に近いデザインだけど、見ただけでは何の神に仕えているかはわからない。
少女もわたしたちの接近に気付いたようで、立ち上がると振り返った。
真っ直ぐな淡い金髪に、水色の瞳が儚げな印象だ。
少女はリリたちを見て目を見開いている。
「あの!もしかして、これから、試練の道に挑戦される方ですか!?」
そうなんだけど、素直に頷いていいのかな。
ルークを見上げると、任せると言うように肩をすくめた。
けど、さすがに同じ年頃の少女を無視するのは忍びない。
「そうだけど、あなたは……?」
「やったー! きっと、これこそ、オルディナ神の采配ね!」
一人で飛び跳ねているけど、大丈夫かな?
ルークと共に若干引きつつ眺めていると、少女が我に帰ったのか、こほん、と咳払いをして、わたしたちに向き直った。
「少しはしゃいでしまいました。
私、オルディナ神の神官を目指している、セナと申します」
オルディナ神は世界の終末を預言する神で、不吉だとされあまり人気がない。
その神官を目指すなんて、少し珍しい感じがした。
「これから試練の道に挑戦されるのなら、私も一緒に連れて行って欲しいのです。
どうしても女神様にお会いしないといけないのに、一人じゃどうしてもクリアできないんです」
知らない人と一緒に行くのはあまり得策ではないのはわかる。
ルークも同じ結論みたいで、見上げると小さく首を横に振った。
「悪いけど……」
「あぁ、待って、待ってください!
私、中がどうなってるかとかわかる範囲でお教えできます!
それに、こう見えても、回復魔法は得意です!」
なんというか、置いて行っても、すぐ後をついて来そうな勢いだ。
ルークが口を開く。
「中は、入る度に違う試練になるんじゃないのか?」
「女神さまの試練を受ける『試練の間』に行くまでの道は、今のところ同じみたいです。まだ『試練の間』までは辿りつけてないんですが、この三日挑戦した限りでは罠の内容も場所も同じでした」
「そんなに何回も挑戦してるの?」
「……はい。どうしても、諦めきれなくて」
「中は、そんなに難しいのか?」
「私には。私が回復魔法しかできないので、そのせいかもしれませんが。
お二人が来られなければ、一旦町に下りようと思っていました」
「なるほど」
考え込んでいるわたしたちに、セナが言葉を重ねる。
「『試練の間』の前まででいいんです。
中は、結構な数の罠がしかけられています。
どんな罠があるかとかならお教えできますから、一緒につれていってください!」
「トラップ、か……」
「少し、二人で相談させてもらってもいい?」
「もちろんです!」
期待に満ちた瞳で見られながら、声の届かない場所へと移動する。
「どう思う?」
「中の様子を知ってるのは助かるが、回復しかできないと言ってるくらいだから、戦力は期待できないな」
「罠の位置とかわかるのは、嬉しいかも。わたし、そういうのは向いてないって師匠に言われて、全然罠解除とか練習してない」
「……確かにそんな感じだな」
ルークがわたしを見た後、頷いている。
「ルークは?」
「程度によるが、簡単なものなら見つけ方とかは知ってる。
けど、慣れてるわけじゃないから、罠の位置がわかるだけでもありがたいな」
「じゃ、一緒に行くってことでいい?」
「あぁ。けど、『試練の間』の前までだ。
『試練の間』は、別々に入ろう」
「じゃ、それで」
そうして、セナと一緒に行くことになった。
* * *
「あ、そこ! 落とし穴になっています!」
「わわ、ありがとう!」
「あそこの壁、何かトラップになってるか?」
「よくお分かりですね。あそこは手を突くと、槍が降ってきます」
セナの助言は思った以上に役に立った。
というのも、初心者にはとてもじゃないけどわからない、あったら嫌な位置に、しかも結構な数の罠が配置されている。
これ、一人で何日も挑戦していたってすごくない?
「ちなみに、罠にかかるとどうなるの?」
「私は法術で入り口に戻るよう事前に術をかけていたので無事でしたが、普通は罠にかかれば、その、想像の通りだと思います」
「あ、じゃ、入り口でわたしたちと会った時は」
「あの時も罠にかかった後でした」
「結構、どのトラップもえぐいな。その法術は俺たちにもかけれないのか?」
ルークが底の見えない落とし穴を覗き込みながら言う。
「すみません。法術の修練が足りず、今の私では……」
「そうか、なら仕方ないな。俺らのことは気にしなくていいから、一応、自分にはかけとけよ」
「うん。いざというとき、わたしもセナまで守れるかはわかんないから」
「はい。あの、ありがとうございます」
「この罠にかかりながらも、三日間、ずっと挑戦してたんだよね」
「一番最初に、落とし穴に引っかかった時は、念のために法術をかけていましたが、もうだめかと思いました」
「だろうな」
この深さを落ちたら、普通は助からない。
「けど、もう慣れました」
「すごい!」
「たくましいな」
「私の場合は、オルディナ神のおかげで命までは取られないのです。努力でどうにかできることなら、これは神が私に与えたもうた試練なのです。
試練ならば、神は救いの道も示してくださる。
現に、お二人にお引き合わせくださいました」
「ほ、ほわぁ!」
今まで触れ合ったことのない思考に、驚きの言葉しか出ない。
「そういえば、オルディナ神の神官目指してるのに、知の女神さまのところに行くんだよな」
「私が知りたいのは、女神様にお尋ねしないとわからないことなので」
「へぇ」
「あ、この道をもう少し行くと、広場に出ます。その広場で、巨大なゴーレムが降ってきます。
広場の周りは崖になっていまして、私は前回、ゴーレムに崖から落とされました。
先に進もうとするとゴーレムが邪魔してくるので、どうにかしないといけません」
「わかった!」
「なるほど。戦闘、準備してから行くか」
どう動くか、ルークと少し打合せして準備をする。
セナは、わたしとルークが引き付けている間に対岸に渡るということで話はまとまった。




