5.昼休憩
結局、魔鉱石への実演の条件が実現したのはそれから三日後だった。
法国に行くのに山越えのルートと、川沿いに船を利用しながら行くルートの二つがある。
山越えのルートは危険だけれど、早く着く。
船を利用すると、安全だけれど、時間はかかる。その上、船に乗る乗船代金も必要だ。
今回は全員冒険者だし、山越えのルートで行くことになっている。
山越えは、運が悪いと下級の竜種が出たりするから人気がないのだ。
そして、その山越えのルートと船旅のルートの分岐点が、昨日通った町だった。
今日は山越えルートの始まり、山の入り口にいる。
「あんまり面白いことはありませんよ?」
昼ごはん後の休憩の際に、周りに誰もいないのを確認し、実演を始める。
といっても、魔鉱石に魔力を込めるだけだから、地味な作業だ。
ゲオルクさんとニコラスさんに見られてるから少しだけ緊張するけど、呼吸を整えると、雑念も消える。
静かに、魔力を注いでいき、ここって思ったところで、魔鉱石との繋がりを断つ。
一瞬、うまくいったかなって思うけど、次第に魔鉱石の輝きがどんどん強くなっていく。
残念だけど、やっぱりうまくいかない。
あらかじめ決めていた方向に放ると、数秒後に爆音が響いた。
「すっげー! ほんとに爆発した!」
「魔鉱石が爆発するとは、なかなか見れるものではないな」
「リリ、投てきの腕、上がったんじゃないか?」
順に、ニコラスさん、ゲオルクさん、ルークだ。
みんな、好き勝手に言ってるけど、全然嬉しくないし。
「こんな感じで全然うまくいかないんです。折角なんで、見て気になったところとか、アドバイスとか、ありますか?」
「残念だけど、全然思いつかないな」
「ふむ、珍しいものを見せてもらったが、残念ながら、役に立ちそうなことは思いつかない。
投てきなら、もうちょっと肩の角度を変えると、もっと距離を伸ばせると思うが」
「いえ、そっちは伸ばそうと思ってないので」
「そうか。すまない」
「いえ……」
「ぐるるる」
ん?
ぐるるる?
返事のようなタイミングで聞こえた唸り声に、顔を上げる。
すると、さっき魔鉱石を投げたほうにある繁みから、何かが飛び出してくる。
「げ、下竜だ!」
「さっきの爆発で寄ってきたのか?」
「ひとまず、リリを中心に打合せ通りに!」
今回、後衛はわたしだけだ。
三人とも前衛だから、戦うことになった際はわたしの正面にゲオルクさん、右にニコラスさん、左にルークが配置につくという話でまとまっている。
「弱点は、覚えてるか!」
「腹だろ!」
ニコラスさんが叫ぶ。
「ニコラスは遊撃、俺とルークであいつの注意をそらす。
リリは氷魔法を頼む!」
「わかった!」
「はい!」
「ったく、リーダーは交代制だからな!」
そういいつつ、ニコラスさんはゲオルクさんの指示通りに動いている。
ゲオルクさんが威嚇をしている下竜に突進し、そのまま背後に回る。
下竜がゲオルクさんをおいかけて振り返ろうとしたところで、ニコラスさんがちらりと見えた後ろ足の付け根の柔らかそうな腹部に双剣を振るう。
尻尾の薙ぎ払いを軽やかにかわして、距離を取る。
下竜がニコラスさんに注意を向けたすきに下竜の死角から近づいていたルークが大剣を振るう。
もちろん、わたしもみんなが戦っている間に詠唱を始めていた。
「我が魔力を糧に、ここに雪原の女神の降臨を希う。
卑小なる身に、その力の偉大さを示したまえ。
求めるは、大いなる慈悲のひとかけら。
冷たき刃となりて、我が敵を貫きたまえ!」
巻き込んでしまわないよう、詠唱完了状態で少し待機。
そして、再びゲオルクさんにターゲットが移り、射線があいたところで発動する。
「《氷刃》」
狙い通り、下竜の背に《氷刃》があたり、背の傷を中心に後ろ足半分が凍り付く。
氷は弱点属性だったみたいで、下竜の動きは格段に鈍る。
この隙に、三人が一斉に攻撃しにいく。
それからは、一瞬だった。
あっという間に、下竜は倒されてしまった。
これがAランクの実力……!
あまりにも圧勝で、自分がすごくなったと感じちゃうけど、これ、ほとんどの致命傷は二人が与えてるから、勘違いしないようにしないとだね。
「終わったな」
「うし、楽勝!」
二人はあっさりした様子だ。
息の乱れもほとんどなくって、本当すごいな。
いつか、わたしもあのレベルになるんだって、改めて気合が入った。




