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爆弾娘は今日もダンジョンを攻略中。なにかわからない加護をもらいましたが、がんばっていたら世界を改変していました  作者: 乙原 ゆん
第一章 スタンピード編

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34.リリ、帰還する

 わたしたちがダンジョンの外へ出てしばらくして、師匠も無事に戻ってきた。


「師匠!」


 師匠はどこかくたびれた風だが、怪我とかはしていないみたいだ。


「どうでしたか?」


 師匠は首を横に振る。


「悪い知らせだ。スタンピードで間違いない。

 もって十日、早くても四、五日くらいだろう」

「そんなにですか!?」

「普段人が行かないのが悪い方に働いたみたいだ」


 ということは、それまでに急いで対処を考えないといけない。

 ここまで来るのに三日、え、往復するだけで時間足りないんじゃないの?

 けれど師匠に焦った様子はない。


「二人の方は、何もなかったかい?」


 ルークと顔を見合わせる。

 そういえば、どう話すか、考えてなかった!

 ひとまず、あったことを整理すると――。


「えっと、怪我とかはないんですが、最初五階から出られなくってですね。

 そしたら金色の木に巻き付いた黒い蛇に行き会いました」

「黒い蛇?」


 首を傾げる師匠にルークが言う。


「ヴヴスナと名乗っていた」

「ヴヴスナねぇ。聞いたことがない名前だけど」


 師匠が考え込んでいる。


「俺の呪いを『滑走するもの』の呪い、リリの加護を『狭間にて遊ぶもの』の加護と言っていました」


 ルークの言葉に、師匠が大きく息を吐く。


「なるほどねぇ。ひとまず、それについてはここのダンジョンが落ち着いたら考えようか」


 そう言って、師匠はアイテムボックスから石板を取り出した。

 薄く透き通った赤色をしている。


「ひとまず戻るよ」

「それは?」

「転移の石板。ここに刻んだ場所に転移できる。持ち主の魔力にしか反応しないけどね」

「すごい! 便利ですね!」

「材料を取ってこれたら、これもいつか作ってあげるよ」

「材料ってなんですか?」

「ドラゴンの心臓石」

「ぐぅ……」


 むっちゃ難しいやつだった!

 少なくともAランク(星よっつ)にならないと無理じゃないかなぁ。

 ドラゴンの心臓石なんて、買おうとすると国家予算の三年分は必要なんじゃなかったっけ。

 すごいものが材料なんだね。


「さ、こっちにおいで」


 そうして師匠に近寄ると、ルークとは手を繋いで、師匠の服の端を持っておくように指示される。


「じゃ、いくよ。《転移》!」



 光に包まれたと思った次の瞬間、気がつくと師匠の魔法で王都の城門近くに転移していた。


「師匠、直接ギルドへ転移はできないんですか?」

「町中には転移できないようになってるからね」

「そうなんですね」

「空間移動系の魔術は規制も厳しいんだよ。人数制限もあるしね」

「へー!」

「これは五人までだ」

「案外少ないんですね」

「あんまり大勢が使えると戦争の道具になるからねぇ」

「なるほど」

「じゃ、ギルドへ向かうよ」

「はい!」

「ああ」


 そうして、師匠の指示のもとギルドへと向かった。



  *  *  *



 ギルドの前は人だかりができていた。


「う、わ、進めない」


 それどころか、前の人と後ろからやってくる人の間潰されそうだ。

 身長が低いとこういうところが不便だ。


「祭りでもやってるのかね」


 師匠は潰されてはいないけど、それでも前が見えないようだ。

 ルークは人ごみの中でもにょっきり頭一つ分くらい大きくてうらやましい。


「竜人族と兎人族の人が真ん中に居るのが見える」


 ゲオルクさんだろうか。

 師匠も何か想像がつくものがあったのか、げんなりした顔をしている。


「なんだあんたたち、知らずに来たのかい」


 隣で前に進もうとしていたおばさんが言う。


「なんでもAランク(星よっつ)の冒険者のゲオルクさんとニコラスさんが決闘するみたいなんだよ」

「そうなんですか!?」

「そのお話を詳しく教えてください」

「詳しくったって、今言った通りのことしか知らないよ。

 けどみんなAランクの戦いが見れるってんでこんなお祭り騒ぎになっちまったんだ」

「そうですか。ありがとうございます」


 言うやいなや、師匠は猛然と人の隙間をぬって前に進み始めた。


「あ、ちょっと、師匠」


 わたしも人の隙間に謝りながら前に進んで師匠をおいかける。

 ルークは人につかえて後ろでつまっていた。


「お前と会って十余年。そろそろ悪縁を断ち切るべき時が来たと思わないか」

「……知らん」

「あーもー! そういうとこだよ! オレの行く先行く先現れやがって」

「それこそ、お前がオレを追いかけてるんじゃないのか」

「オレが先についた町にお前が後から来たことだってあったろう!?」

「ごく数回な。別にオレはお前と違って追いかけてきていたわけじゃないぜ」

「ああん? やんのか黒トカゲ」

「売られた喧嘩は返品不可だ、口だけ兎」


 悪口が飛び交う中、ようやく最前列の人垣の隙間から顔を出したところで、既に師匠は二人に近づいていた。

 喧嘩に熱中している二人は気づいていない。

 二人が剣を抜いたのと、師匠が杖を構えるのは同時だった。


「ったく、くだらないことで喧嘩なんかしてるんじゃないよっ」


 二人の頭上から水が降る。


「うっわ」

「あああっ帽子がっ」


 あれは、《水流弾(ウォーターボール)》を二人の頭上で発動直前まで起動して、水球ができたところで発動キャンセルしたために、残った水が降ってきたようだ。


「邪魔すんじゃねぇ」

「誰だよオレの帽子が水浸しなんだけど」

「お前たち何やってるんだい」

「……マヤさん」

「げ、マヤさん!」


 ようやく師匠の存在に気がついたようだ。


「こんなところであんたたちが本気で喧嘩したらどうなるかわかってやってるのかい」

「……ちゃんと叩き込まれた通り、建物からは出ましたよ!」

「ああ」

「それは何年前に教えたことだい」

「えっと、七年? 十年は経ってないよな?」

「そうだな」

「ったく、そこから進歩してないのかい」

「前回みたく、《火炎流星(ファイアーメテオ)》でも叩き込めば喧嘩もしなくなるもんかねぇ」

「ええっと、それはもう勘弁願いたいなぁって」

「……」

「で、まだやるかい?」

「いえ、もう頭は冷めたので大丈夫です、な?」

「そうだな」


 頷く二人を見て、師匠は一つ息を吐いた。

 そしてもう一度杖を振ると、二人の洋服はすっかり乾いていた。

 集まっていた人たちの中から拍手が聞こえて師匠が振り返る。


「ってことで、決闘はないよ、解散しな!」


 集まっていた人たちは「決闘は見れなかったけどいいもの見れた」とか「あの強い別嬪さんは誰だよ」とか言いながら戻っていった。

 ようやく人がはけると、師匠は残ったわたしたちに疲れたように言う。


「あんたたちはああなるんじゃないよ」


 疲れた顔で言う師匠にわたしとルークは顔を見合わせて頷いた。

 それにルークとはたまたまお互いの条件が合うから組んでいるけど、そう長く付き合うことはないだろうしね。


「まぁ、丁度良かった。あんたたちにも聞いて欲しい話があるから一緒においで」


 そうして師匠はギルドの扉を開けた。

ストックが尽きたので、一回更新に戻ります

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