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爆弾娘は今日もダンジョンを攻略中。なにかわからない加護をもらいましたが、がんばっていたら世界を改変していました  作者: 乙原 ゆん
第一章 スタンピード編

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26.リリ、岩山のダンジョンのボスに挑戦する2

 ルークは、何か考えがあるだろうか。

 そう思って、ちらっと視線を動かして様子を見るけれど、ルークは態勢を立て直して大剣を構えなおしてたまま、動こうとしない。

 ルークも暴走猪(ヒーテッドボア)をどう倒すか、勝ち筋が見えないのかもしれない。


 そういえば、さっき《加速(スピードアップ)》が切れかけているということは、ルークの剣にかけてる氷の支援魔法も切れかけているかもしれない。

 もう、そんなに時間が経ってるんだ。

 暴走猪(ヒーテッドボア)に大剣で攻撃して、支援魔法なしに、大剣がもつだろうか。

 かけなおすには、距離が離れすぎているし、詠唱が間に合うかもわからない。


 わたしたちが勝てるとするなら、この調子で、じわじわ暴走猪(ヒーテッドボア)を追い詰めて行って、しとめるしかないだろうか。


 でも、それには一つ問題がある。

 暴走猪(ヒーテッドボア)から立ち昇る炎は最初に比べてかなり激しくなっていて、このフロア自体の気温もあがっている。

 今だって、粒になった汗が、じわりと頬を伝っている。

 暑さ対策なんていると思ってなくて、何も対策してきていないのだ。

 これ、あんまり長く戦ってると、わたしたちの方が暑さの方に負け、何かミスをしてしまう危険がある。



 悔しいけど、一旦、ルークと二人で逃げてから、体制を整えて再挑戦するのもあり、だと思うんだけど、入り口は遠い。

 二人で入り口まで駆けれるだろうか。

 それをすると途中で後ろから暴走猪(ヒーテッドボア)が突っ込んできてしまいそうだから、それぞれでタイミングを変えて走る?

 でもそれも残された方の負担が大きすぎる。


「リリ」


 色々と考えていたところで、ルークの声が聞こえた。


「倒れたら頼む」


 え、どういう意味?

 けど、わたしが聞き返す前に、ルークが封魔貝の首飾りを投げてきた。


 とっさに受け取ってしまったけれど、何するつもりだろう。


 そうして、ルークが何言か呟くと、雷が召喚された。


 ルークの体の表面を雷が覆い、バチバチいっている。

 暴走猪(ヒーテッドボア)が狙いをルークに変え、駆けだそうとしたけれど、その前に轟音と共に一撃、暴走猪(ヒーテッドボア)に雷が落ちる。


 詠唱省略だ!

 え、魔法、ルークも使えたの!?


 わたしが驚いている間に、準備を終えたルークが暴走猪(ヒーテッドボア)に突っ込んでいく。

 体を走っている雷は、剣に収束していく。

 雷属性の付与魔法、みたい。


 ――すごい、これならいけるかも!


 暴走猪(ヒーテッドボア)がルークに振り向き、向かっていく。


 ルークと暴走猪(ヒーテッドボア)の一騎打ち。


 すれ違い様にルークが剣にまとわせた雷をすべて暴走猪(ヒーテッドボア)に叩き込む。

 暴走猪(ヒーテッドボア)が、雷でしびれたように痙攣(けいれん)した。

 体表に大きく傷もついている。

 けど、暴走猪(ヒーテッドボア)は倒れない。


 一方、ルークの方は、暴走猪(ヒーテッドボア)から距離を取って剣を構えているものの、なんだか大きく消耗している。

 荒い息で、さっきまでの様子が嘘みたいに消耗した様子だ。


 その上、腕から初日以来見ることがなかった呪いの気配が立ち上ってくる。

 もしかして、魔法を使わないかわりに呪いを抑えていたのかもしれない。

 腕に巻いている包帯もずたずたになってる。


 思わず見入ってしまったけれど、これ、やばいやつだよ!


「くっそ、これでもダメかよ」


 ルークの悪態が聞こえた。


 暴走猪(ヒーテッドボア)とルークを見比べる。


 幸い、ルークの攻撃で、暴走猪(ヒーテッドボア)もかなり消耗している。

 なのにルークは立っているだけでもきつそうな様子だ。


 これ、ルーク、次の攻撃を避けることも厳しいんじゃない?

 わたしがなんとかしないと!

 そう考えていたところで、ルークがこっちを向いた。


「俺が引き付けるから、リリは逃げろ!」


 違うよ!

 なんでそんなこと言うの!


 わたしに頼るなんてまったく考えてなさそうなルークに腹が立ったけど、わたしもルークを助けるだけの実力が不足してるのは事実だ。


 うん、でも、ここでルークを見捨てたりなんかしない。

 ルークが、限界なら、わたしがとどめを刺すしかない!

 幸い、暴走猪(ヒーテッドボア)は大分消耗しているんだ。

 きっとできるはず。


 ひとまず、暴走猪(ヒーテッドボア)の注意をこっちにひこう。


「《風刃(ウィンドブレード)》!」


 あたった!

 けど、あまりダメージを与えた様子はない。


 ルークを気にしながらも、暴走猪(ヒーテッドボア)は苛立たし気に、ゆっくりとわたしの方に振り返る。

 体表の炎は今までで最大級に燃えている。


 ルークの瀕死の様子に、先にわたしを片付けることにしたのか、ゆっくりと、暴走猪(ヒーテッドボア)は地面を掻いた。

 すぐにでもこっちに突撃してきそう。


 とどめを刺すような、せめて、大ダメージで動きを止められるような強い魔法が欲しい。

 けど、詠唱をしている余裕はなさそう。

 どうしたら――。


 必死で考えていたところで、一個、まだ試していないことを思いついた。


 そうだ、加護を抑えているタリスマン。

 これを外したら、確実に火力は上げられる。

 師匠とメイサさんには外さないように言われてたけど、今は緊急事態だ。


 きっと説明すれば大丈夫。

 わたしは首からさげていたタリスマンを外した。


 暴走猪(ヒーテッドボア)は、さらに身にまとう炎の火力を上げたようだ。

 わたしにむかって低く唸り声をあげている。


 氷属性は詠唱している時間がない。

 わたしの一番強い火力が出せる攻撃。

 火属性に火属性をぶつけることになっちゃうけど、あいつを止められるほどの威力を考えるとそれしか思い浮かばない。


 ええい、いっけー!


「《火炎撃(ファイヤーボール)》!!!」


 針熊(ニードルベア)の時の経験を生かして、詠唱はできないながらも一撃に出来る限りの魔力を乗せた《火炎撃ファイヤーボール》を打ち込む。


 暴走猪(ヒーテッドボア)が走り出したところで、着弾する。

 爆発。

 立ち上る爆炎の中から、暴走猪(ヒーテッドボア)の絶叫が聞こえる。


 思っていた以上の火力が出てる。

 これなら!

 期待しながら、けれど、注意を怠らないようにして、煙が張れるのを待つ。


 やった、かな?

 わたしも出来る限りの魔力叩き込んだから、これで、ダメだったら本当に逃げるしかない。


 固唾を飲んで見守っていると、絶叫が途切れ、そのすぐ後にどさりと倒れる音が聞こえた。


 やった!!!


 けど、まだ怖いから、臨戦態勢のまま、煙が引くのを見守る。

 ルークはと見ると、荒い息をつきながらも驚いたように暴走猪(ヒーテッドボア)がいたところを見ている。


 それから、爆炎が落ち着いてくると、様子が見えてきた。

 あれ、なんか大きく床がえぐれてる?


 目を凝らすと、暴走猪(ヒーテッドボア)を中心にクレーターができていた。

 そのクレーターの中心で暴走猪(ヒーテッドボア)が倒れている。


 あれ、ダンジョンの壁とか床って壊せるんだっけ?

 さっき暴走猪(ヒーテッドボア)の突進でも壊れなかったよね?


 一瞬不安がよぎるけれど、まずは暴走猪(ヒーテッドボア)だ。


 完全に倒したかどうかを見るためにゆっくりと近づく。

 近寄ると、暴走猪(ヒーテッドボア)は見事なまでに黒焦げだった。

 完全に息絶えている姿に、素材がもったいないという思いよりもほっとする思いが強い。


 一応、形が残っている討伐部位の牙を折りとる。

 表面は炭化してるけど、中の方まではいってないみたいで、なんとか崩れずに、討伐部位を確保できた。


 素材になるかはわからないけど、一応暴走猪(ヒーテッドボア)の体の方も持って帰ろう。

 少し考えてから、師匠から借りっぱなしのアイテムボックスに、暴走猪(ヒーテッドボア)をしまう。


 そういえば、ルークは静かだけど大丈夫かな。

 封魔貝の首飾りも返さないと!


 振り返ると、ルークはうずくまって苦しそうに胸を押さえていた。


 え!!!


「大丈夫!?」


 駆け寄って様子を見る。

 持っていた封魔貝の首飾りをかけるけど、呪いの気配は弱まることはなく、効果はない。

 封魔貝の首飾りがあればなんとかなると思ったのに。

 わたしじゃ、これ、どうやって抑えていいのかわからない。


 師匠のところに早く連れて行かなきゃ!

 しかもできるだけ早く!


 どうしよう。

 脱出系アイテムは持ってきてなかったよ。

 でもわたしがルークを背負って帰るには、師匠のアトリエは遠すぎる。

 何か、何かないかな、と考えたところで、この間、ミアの店で買ったボタンを思い出した。


 こんなに早く使うことになるとは思わなかったけど、仕方ない。

 今は緊急事態だ。

 忘れ物がないか見渡して、ルークを掴む。

 ボタンを握って、願う。


「師匠のアトリエへ」


 周りが光に包まれたかと思うと、師匠の家の前に飛んでいた。

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