24.リリ、岩山のダンジョンに挑戦する
そうして翌日。
予定通り、今日はダンジョンに向かう。
ダンジョンの前にはこの間と同じようにギルドの職員さんが立っている。
お兄さんはこの間とは違う人だけど、一緒に立っているお姉さんの方はこの間会った人だった。
ギルドのお姉さんはわたしのこと覚えてくれてたみたいで、ニコっと微笑んでくれた。
岩山のダンジョンに入るための届書に記帳する際に、声には出さず、唇だけで『よかったね』といってくれる。
わたしも、嬉しくなって『ありがとうございます』って、口パクで返してほほ笑んだ。
そして、ルークとともにダンジョンに入った。
岩山のダンジョンは、全部で五階構成だ。
入り口を入ってフロアを踏破し、フロアのどこかにある階段を見つけて下に降りていく形のダンジョンになるみたい。
王都ができる前からあるダンジョンで、既に何人にも踏破されてるダンジョンだから、地図もあるし、ボスの情報も簡単に手に入る。
そういえばヤっさんが、ここ最近ボスの攻略者が出てないって言ってたけど、久々の攻略者が針熊を倒してきたわたしたちなら、また名声が高まってしまうだろうか?
でも、慣れてる人なら一日でボスまで攻略するのに、珍しく、初心者ばっかりが挑戦してたのかな。
この岩山のダンジョンは、お手軽に挑める分、実入りも相応で、実力がある人たちはすぐに次の中級者向けと言われるダンジョンに向かってしまうし、たまたまなんだろうな。
「いこっか」
「あぁ。一階は無視だな」
「うん。ボス攻略、最優先で!
二階からは向かってくる魔獣もいるけど、そういうのだけ倒しながら行こう」
「油断。すんなよ」
「ルークこそね!」
お互い早く星付きになって、チームじゃないとダンジョンに潜れないっていう縛りを無くしたい。だから、今日はボス戦が最優先だ。
ルークの言葉に気を引き締めて、ダンジョンの入り口をくぐる。
このダンジョンの一階は葉兎と呼ばれる草原兎よりも大人しい兎しかいない。
それも攻撃しないと、向こうからは攻撃してこない穏やかな生き物だ。
無視して、覚えてきた地図通りに階段を探して駆け抜ける。
二階は草爆弾という、ちょっと厄介なモンスター。
その名の通り、草に擬態した魔獣で、攻撃すると茎の先についている袋が破裂して種みたいなものを飛ばしてくる。
これは辛めの調味料になるんだけど、魔獣が生きているうちに服とかにつくと、すごい勢いで成長して身動きできなくなっちゃうから要注意。
真面目に相手にしようとすると厄介だから、遠くから《風刃》を飛ばして、進行方向にあるものを狩っていく。
ルークは魔法を使えないから、落ちている破裂前の袋を拾っていく。
わたしと相性がよい魔獣だから、これだとまだ一昨日の森林狼の方が手強く感じる。
階段を降りて三階へと向かう。
三階にきて、ようやく少し戦闘っぽくなる。
ここは、草原兎と風狐が出る。
割合はほとんど草原兎が多いけど、この風狐の毛皮は風の属性を宿しているから、風魔法と相性がいい。
毛皮も美しくて人気だ。
でも、風狐の出現割合は低いから、ここに篭って稼げるかというと微妙。
出会ったらラッキーだけど、その程度で、ここに篭る人はあんまりいない。戦闘力がある人たちはさっさと中級ダンジョンに向かうし、パーティメンバーが集まらない人の時間潰しとか、そういう人たちが多いって聞く。
ちらほら戦っている人がいるので、邪魔にならないように横を駆け抜ける。
四階は、三階と同じモンスターが出るけど、もう少し風狐の出現頻度が増えて、野生猪も出る。
野生猪は、見つかったが最後、ずっとおいかけてくるから、倒すか、階を移動するしかない。
一応、縄張りがあるのか階を移動してまでは追いかけてこないけど、倒さない限り追いかけられるのは割と面倒。
しかもその判定範囲は広いから、風狐の血抜きをしてたら野生猪に突っ込んでこられたとかいう事故もあるみたい。
だからこの階は初心者を抜け出して中級者に足をかけた、実力がある人たちしか来ない。
ボス戦に行く前の腕試しと、お金稼ぎ、いう感じだ。
ちなみに、次の階にいるボスは野生猪の強化版の暴走猪だ。
針熊の方が強いし、心配はしていなかった。
時々襲ってくる、風狐と野生猪を狩って、階段の前に辿り着く。
階段を降りる前に一旦休憩。
師匠に教わってわたしが作った飴型の回復剤を舐めて、水を一口含む。
ルークにも渡して、ボスに挑む前に回復をはかる。
お互い一撃、多くても三撃目には倒してしまうから、ここまで連携を深めようがなかった。
一昨日、森で依頼を受けて良かったかもしれない。
岩山のダンジョンは簡単だと聞くけど、ここまで簡単だとも思わなかった。
でも、ボス戦はこんな簡単にいかないだろうし、気を引き締めていかないとね。
「案外あっさりだったね」
「ああ」
「地図によると、この次がボス。ボス戦の連携はこの間みたいにする?」
「そうだな」
ルークとの会話に気分が上がってくる。
なんというか、冒険者になったんだー!って感じがするのだ。
ただ、残念なのは、今日はわたしの得意な火属性の魔法はあんまり役に立たないだろうってとこ。
暴走猪は火属性なんだよね。体力が減るにつれて発火状態になっていくから、そこに火魔法撃ち込んでもあんまりダメージは与えられないのだ。
弱点属性は氷。次に水。
でもどちらも魔法の実力が足りないとダメージを与える前に水や氷が蒸発してしまうし、なかなかに厄介らしい。
「あ、ルークの剣は属性付与しても大丈夫なやつ?」
「属性付与、問題ないが、出来るのかよ」
「うん」
「昨日言わなかったな」
ルークがジト目で見てくる。
「忘れてたの! あ、《加速》と《祝福》どうする?」
「俺たちなら余裕だと思うけど、念のため《加速》だけ頼む」
「わかった」
「かけ直しは?」
「余裕があればでいい。暴走猪は動きが早いって聞いた。まず、傷を負わないことと、次に倒すことだ」
「わかった」
そして、ルークの剣に氷属性の付与魔法を行い、わたしも氷魔法を詠唱して、発動待機状態にして、ボス階への階段を降りていく。




