21.リリ、ギルドへ帰る
ルークは大丈夫と言っていた通り、途中で重そうなそぶりさえ見せずにギルドまで針熊を持ち帰った。
王都の門をくぐるときには門番さんにぎょっとされ、ギルドまでの道でも注目の的だった。
それまでの騒ぎで、ギルドに帰り着くころには、それはもうすごい騒ぎになっていた。
「針熊かよ!?」
「背負ってくるなんてどんだけ怪力だ」
「え、あれ、あの少女とのっぽがやったのかよ」
「嘘だろ」
そんな声が聞こえてくる。
けど、間違いなく、わたしとルークがやったんだよ!
ルークは周りの騒ぎを気にすることなく、ギルドの横の素材の鑑定場に並んだ。
大きい獲物は中に持ち込まず、ここで一旦鑑定士の人に査定金額を紙に書いてもらって後からギルド内の買取カウンターに持っていくのだ。
通常の草原兎の角の納品や、森色狼の牙だけだったら直接中に持ち込むんだけどね。
今回はルークがかついでいる針熊とアイテムボックスにある森色狼の買取があるから一緒に並んでおく。
時間が時間だからか、結構人が多い。
そうして順番いると、人垣の向こうにヤっさんの顔が見えた。
「あ、ヤっさん!」
「おう。なんか騒ぎになってるなって見に来たら、リリとルークじゃねーか!
お、これ二人でやったのかよ!?」
「そうだよ!」
えっへん。
胸を張って言うと、ヤっさんがわらっている。
「へぇ綺麗な切り口だな。風魔法か? あのリリがねぇ」
「ちょっとヤっさん、どういう意味よ」
「爆弾娘が森で火魔法使わなかっただけでも成長なのになぁ」
「だーかーらー! さすがのわたしも森で火魔法は使ったことないよ!」
ルークが、疑わし気な目で見てくるから、ヤっさんがお腹をかけて笑っている。
「ルークも針熊背負って重そうなそぶりも見せないし、すごいなー!」
「……ヤスナさんみたいなベテランに比べるとまだまだだろ」
「おお! ルークはなかなか見所があるなー!
うんうん、何かあれば俺を頼りな!
で、どうやったんだよ。話せるところだけでもいいからさ」
ルークを見ると、ルークは肩をすくめた。
これは、いいってことかな。
「んー、今日はルークと森に森色狼の狩りにいったんだけど」
「ほうほう」
「で、そっちは順調だったんだけど、狩った森林狼の始末してたところで唸り声が聞こえて、森から針熊が出てきたの」
「ん、森色狼狩ってるってことは、そう深いところじゃないよな?」
「探索しながら森の中をうろうろしたけど、深いところまではいってないよ。ね?」
ルークを見上げると頷いている。
「で。針熊が出てきたから、わたしが魔法を使ってサポートして、ルークと協力して倒したってわけ」
「へーーーー、リリがサポートねぇ」
「なに?」
「ちゃんとできてたのか?」
急にヤっさんはルークに振るけど、ルークは少し考えたそぶりを見せた後、ヤっさんを見ていう。
「想像以上の使い手で驚きました」
どちらにもとれるルークの言葉に、思わずルークを見上げると、いつもの無表情。
お世辞かな?
けどヤっさんはそう思わなかったみたい。
「うわー! リリ、よかったなぁ! ようやくパーティまともに組める人間見つかって」
「ぐぬぬぬ」
でも、ヤっさんが言う通り、確かにそうなんだよね。
岩山のダンジョンに行くには、ルークの協力がいる。
お互いDランクになるまでとはいえ、連携も取れないよりは取れた方がいいもんね。
「次は岩山のダンジョンに挑戦か?」
「そのつもり」
「なら、ここ最近、珍しくあそこをクリアしてる人間を見ないから、またリリの名を聞くかもなぁ」
「そうなの?」
「ボスに行くって言ってた子たちも、思った以上に強かったから戻ってきたとか言ってるのを聞いたんだよな。
あそこ、そんなに難しいボスでもないし、まー、そのうち誰かが攻略するとは思うんだが」
「ふーん」
確かあそこのボスは暴走猪。
その下の階に出る野生猪に冷静に対応できるなら挑んで問題ないって言われてたはずだけど。
準備不足だったんだろうか。
「あ、ヤっさんはどうだったの?」
「んー、俺は結局浅いところで狩りして終わったからたいしたことはなかったな」
「そっかぁ」
「あ、そろそろ順番だな。わりいな。引き留めて」
「どうせ待ってるだけだったから、いいよ」
「ありがとな。今度、飯かなんかおごるからそん時もっと詳しい話聞かせてくれよ」
「ご飯……」
「ジュースもつけるぜ! ルークは、酒か?」
「リリと同い年だから、まだ酒はいい」
「そうか、じゃ、また今度な! 俺もそろそろ行くわ」
「うん、またね!」
「ああ」
そうして、鑑定所のカウンターに森色狼と針熊を出す。
「針熊だと! ダンジョン産じゃないのにこんなに大きいのは珍しいな。森色狼も状態がいいのばかりか」
査定をしてくれるおじさんが感動している。
「あ、そっちの針熊は直接計りに乗せてくれ」
「わかった」
「これ、ずっと背負って運んできたのか?」
「そうだが」
「いやー若いのに大したもんだな。六百カロあるぞ」
「六百!?」
驚いてルークを見上げるけれど、得意げな様子も見えない。
「全部買取でいいのか?」
「ああ」
そこは事前にルークと話していた。
怪我とかしたら売り上げからその治療費を引いて、報酬は頭割りだ。
岩山のダンジョンをクリアするまでのパーティだから、特にパーテイ運営のための積立とかはしない。
査定のおじさんがざら紙に買取価格を書きつけたものをもらって、今度はギルドの中に移動する。
また行列に並んで、さっき書いてもらったザラ紙をカウンターのお姉さんに渡す。
「あれ、針熊が出たんですね」
「はい。森で森色狼狩ってたら出てきちゃって」
「なるほど。ちなみに、どの辺ですか?」
場所は把握していなくて、ルークを振り返ると、ルークが言う。
「外門を出て、南西に少し下って、街道からちょっと入ったところだ」
「なるほど。ギルドが目を付けていたものかもしれませんね。
こちらが森色狼の討伐依頼の報酬で、こちらが針熊の報酬になります」
そうして出された明細は、金貨二枚と銀貨六十枚。
森色狼の報酬は一体につき銀貨五枚。
十四体倒したので、銀貨七十枚。
あと、森色狼の買取で一匹当たり銀貨十枚。
五頭分いるから、五十枚になるんだけど、解体はギルドに頼むから銀貨二枚ひかれる。
だから五頭分で銀貨四十枚。
そして針熊はなんと金貨一枚と銀貨五十枚。
こっちは解体料金はとられなかったみたい。
状態がいいからだって。
一人で草原兎狩ってるだけだと、一日銀貨十枚いかないのが普通なのに!
針熊がいなくても、一人頭銀貨六十五枚はもらえるもんね。
二人だと一気にこんなに稼げるんだ。
「針熊ってそんなに高いんですか!」
「状態がよかったので、その分高めの査定になっています」
「なるほど」
「よろしいようでしたら、これで精算になります」
ルークを確認すると、問題ないみたいなので、そのまま清算をお願いする。
「お願いします!」
そうして、渡された金貨二枚と銀貨六十枚を二人でわける。
一人頭金貨一枚と銀貨三十枚。
すっごい大金だ!
わー!
一人で草原兎を狩って、銀貨数枚で喜んでいたのが嘘みたい。
早く帰って、師匠にも話したい。
鑑定所で針熊を見ていた人たちから、ご飯をおごるから話を聞かせてくれとの声も聞こえたけど、それを断って帰路についた。




