18.リリ、依頼を決める
翌朝、ルークと共にギルドへと向かった。
この二週間の間に、必要がある時にはルークと共に町に降りていたので、ルークも王都に慣れてきている。
まだ日が昇り切っていない時間にアトリエを出たのだけれど、王都に着くころには日は昇り切り、朝早いお店なんかは既に開店していた。
ダンジョンに潜っている人間は二種類いる。
深層を目指し、どんどん攻略を進めていく攻略タイプの人たちと、自分たちの実力で安定して成果を出せる階層を見つけて、その階で採れる素材を安定供給する探掘タイプの人たちだ。
探掘をメインにする人たちはギルドを通して商人と専属契約を結んでいたりするから、あまり個別の依頼を見に来ることはない。
一方、攻略をメインにする人たちは、攻略先で日々の消費に見合う素材を得られるとは限らないので、割のいい掲示板依頼を一緒に受けてダンジョンに潜るのだ。
たとえば、ヤっさんは、商人と契約してる探掘タイプの冒険者に当たる。
攻略メインの人たちと探掘メインの人たちは仲があまりよくない。
たまにここで依頼を取り合って喧嘩をしているのを見る限り、攻略メインの人たちは、探掘メインの人たちを妥協者って言ったりして罵っているし、探掘メインの人たちは、新しい攻略者が上がってきて、自分たちが普段縄張りにしている採掘場所を荒らしていくのを嫌がっているみたい。
そういう時の折り合いのつけ方も簡単には師匠に聞いたけど、そういうのはケースバイケースなことも多くて、ダンジョンに入って経験しながら学んでいくものだっても言われている。
そんなことを説明しながらギルドへ入る。
すでにギルドは依頼争奪戦の第一陣の波が去った後だった。
ダンジョン素材の依頼はとても人気があるから、少し遅めの到着になるとほとんど依頼は残っていない。
今回はダンジョン素材の依頼を受注するわけではないから、いいんだけどね。
ダンジョンに潜るようになれば、掲示板依頼を見に来る時間帯を気にしないといけない。
掲示板には、報酬が安いダンジョン内で採れる採取の依頼と、町中の依頼、森の中の討伐依頼などが残っている。
今回はルークと実戦での連携を見るので、森色狼の討伐依頼とかいいんじゃないだろうか。
森色狼は深緑の毛皮を持った狼だ。
森に出るけど、森の中を王都まで道が通っているので、増えすぎると旅人に被害が出る前にこうして依頼がでる。
毛皮が保護色なので見つけづらいけど、他は普通の獣と変わらないので、お互いの相性を見るのにはちょうどよいだろう。
「あの依頼、どう思う?」
森色狼が増えてきたから駆除したい、か。報酬は森色狼の牙の本数に対する変動制。
ルークに聞いてみる。
「悪くはないな」
「だよね」
「森色狼の討伐経験は?」
「単体ならあるよ。たまたま森の中ではぐれにいきあったから、それを倒したことはある。ルークは?」
「ある」
「なら二人だし大丈夫かな」
そうして話していると、後ろから声がかかる。
「リリじゃねーか」
「ヤっさん! 久しぶり」
振り返ると、胸当てだけ金属ででき、他の部位は革でできている軽鎧に身を包んだ茶髪の二十歳後半の男性がいた。
疑問に思っているだろうルークに簡単に紹介する。
「ヤスナさん。普段はギリウス商会の専属で潜ってる人だよ。どうしても潜ってくれる相手が見つからなかったら、一緒に初級者ダンジョンについてきてくれるし、師匠にも話をしに行ってやるっていってくれてたの」
「なるほど」
頷いているルークを見上げて、ヤっさんがいう。
「とうとう相棒見つけたのかよ」
「まだわかんないからこれから相性見に行くとこ」
「へぇ、ひょろいけどでかいな。そっちの兄さんはリリが爆弾娘って言われてるの知ってるのかよ」
「ルークだ。爆弾娘っていうのは初めて聞いたが、……理由は想像がつくから大丈夫だと思う」
「ぐぬぅ!!」
「なるほどな」
爆弾娘なんて二つ名のことはルークには伝えてなかったし、言うつもりもなかったのにこんなところでバレるなんて!
ルークを見るけれど、ルークの表情に変化はない。
からかわれるのも嫌だけど、無反応なのも変な感じだ。
まぁルークも訳ありみたいだし、あまり気にしないのかな。
ヤっさんはルークの様子に爆笑している。
「相棒、大物みたいじゃん、よかったな!」
「もう!どういう意味かは聞かないでおいてあげる!
ヤっさんは今日は?」
「昨日ダンジョンから上がってな。
相棒がちょっとやらかして、二、三日休みになったんだよ。暇つぶしに適当な依頼ないか見に来たとこ」
「大丈夫だったの?」
「まぁな。けど武器がだめでさ、今修理にだしてるんだよ」
「そっかぁ。折角お休みなら、ゆっくりしたらいいのに」
「そう思うんだけどなぁ。けど潜ってねーと体がなまる気がしてな」
「あれ、ヤっさんそんなにダンジョン中毒だったっけ?」
「リリもいずれわかるさ」
ヤっさんは大人になればわかる、みたいな感じだったけど、どうなんだろう。
わたしにもわかる日が来るのかな?
「わかんないけど、けど、一人で潜るんなら気をつけてね?
じゃ、わたしたちはそろそろ行くね」
「おう、二人の成功を祈ってるぜ」
「ありがと。ヤっさんもいい依頼あるといいね」
「サンキューな」
そう言って、ルークを確認する。
ルークが頷いたのを見て、依頼書をはがして、依頼窓口の方へと向かった。




