17.リリ、パーティを組む
それから二週間ほど。
メイサさんに作ってもらったタリスマンは問題なく、わたしは魔法をつかってもよいと許可が出て、ルークのいる生活にも慣れてきた。
というか、基本的に必要がなければルークは積極的にわたしに話しかけてこない。
ルークはあまり自己主張するタイプじゃなくて、静かにわたしたちの生活に溶け込んでいた。
毎日の午前中にある授業では、師匠がルークに教えている内容を横で聞いている。
時々、覚えてるかどうか確認するみたいに師匠から質問が飛んでくるから、油断できないんだよね。
六割ぐらいは答えられたけど、忘れていたことも多い。
答えられなくても、師匠はまた覚えたらいいって感じだけど、ルークの視線が冷たさを増していく。
ダンジョン関係は覚えてるんだけど、国ごとの冒険者の決まりの違いとか、関係ないと思ったところは忘れちゃうんだよね。
そうやって、ダンジョン関係の基礎のおさらいをして、午後からは師匠に組んでもらった魔法の制御の訓練をしたり、食料を狩りにいったりして過ごしている。
師匠に時間の余裕があるときには、タリスマンを外して、わたし自身が素の能力の把握もできるような訓練をしてもらったりもするし、意外と忙しい。
一応、タリスマンを外した状態での魔法の威力も、だいぶん把握できてきた。
ただ、集中しないと火力を調整するっていうのができないから、実戦ではまだ使うことができなさそうだ。
今日は昼からルークと草原兎を狩りにいった。
狩人をやっていたというルークの腕はなかなかだ。草原兎は協力して狩る必要もないので、お互いノルマを決めて、離れたところでお互いにノルマ分だけ狩ると、あとはそれぞれに訓練をしたり、ギルドで売れる素材の採取をしたりしている。
その帰り道。
ルークが何かいいたげに見ている。
「どうしたの?」
「いや」
「思っていることあるならきちんと言ってほしいんだけど」
「たいしたことじゃない」
「気になるじゃん! 怒らないから言ってよ」
「なら、言うけど。毎日、リリが何かやってる爆発音がこっちまで響いてきてる」
「え!?」
「マヤさんからリリが魔力の制御の訓練してるって聞いてたから黙ってたけど、できるならもうちょっと威力落としてほしい」
「そ、そうだね」
わー、あっちまで響いてたんだ。
ルークは離れたところにいるから全然気にしてなかった。
「迷惑かけちゃってたのならごめん」
「別に」
それきり、ルークは黙ってしまった。
むぅ、なんか壁がある?
もやもやする。
夕飯時。
珍しくルークが口を開いた。
「マヤさん」
「ん?」
「この辺のダンジョンで、俺でも行けそうなところってあるか?」
「え!?」
ルークの言葉に驚くけれど、師匠は特に驚いた様子はない。
「いつ言い出すかと思ってたけど、一応、岩山のダンジョンがこの辺りでは初心者向けだね」
「なるほど」
「行ってみるかい?」
「……早く稼ぎたい。森と平原だけだと、身入りが少なすぎる」
「焦らなくてもいいと思うけどねぇ。
ルークは冒険者ギルドに入ってたかい?」
「こっちへの移動で便利だから取った。だからまだEランクだ」
「なるほど、ソロじゃ潜れない、か」
この間の座学でルークも聞いたところだからそれは知ってるのだろう。
師匠は苦笑いだ。
「リリ、どうする?」
「え! わたし?」
「そう。ルークと組んで、潜るかい?」
ルークは、と見るけど、目線が合わない。
これはどういう意味?
あ、もしかして、わたしを誘っていいか先に師匠に確認する必要があるって思ってたのかな?
けど、ずっと二人で平原に出かけてたのに、直接聞かなかったのが気まずい、とか?
「ルークが嫌じゃなきゃ?」
言うと師匠がぷっと吹き出した。
「って、言ってるけど?」
「……ランクがあがるまでは頼む」
「なら、よろしく!」
「あぁ」
「でもいきなりダンジョンに行くのはやめときなよ。何度か狩りにはいってるけど、それぞれ違うところで狩ってるって聞いてるよ。
初めて組む人間と、行ったことのない場所にいきなり挑むのは無謀だ。
先に森で何かクエストをやってみて、いけるかどうか判断してからダンジョンにいくんだよ」
「わかりました! じゃ、明日早速ギルドにいきます!」
宣言すると、師匠は笑っている。
「そうしな。ああ、でもそしたら、ひとまず午前中の座学はしばらく時間を変えようかねぇ」
「え!?」
「知識は大事だよ」
そうなんだけど、やっぱり、実戦の方が楽しいから、どうしてもそっちに力が入ってしまうのだ。
「夕飯前か、夕飯後か、出来る時にやっていこうかね」
「わかりました」
「ルークもそれでいいかい」
「ああ。マヤさんに任せる」
そうして、明日は朝一でルークとギルドにでかけることになった。
森で狩りがうまくいけば、とうとうダンジョンに入れるんだ!
わくわくして、その日はなかなか眠れなかった。




