16.リリ、夕飯を食べる
本日二本目です。
そう待つこともなく、師匠がルークを連れて食堂にやってきた。
あ、ルークの禍々しい気配が大分ましになっている。
消えたわけではないけど、注意深く見ないとわからない程度には落ち着いていて、代わりにルークは首から封魔貝を下げている。
腕の呪布は新しい包帯に変わっていた。
どんなことがあったのかはわからないけれど、師匠が何かしたのだろう。
禍々しい気配がないと、ルークは背が高いだけの普通の青年のように見える。
表情は明るくはないけれど、それは来るときもだったし、リリはあまり気にならない。
「こっちは一応一通り話がついたよ」
「ちょうど夕飯もできあがります」
「なら食事が済んだらリリにも決まったことを伝えておこうかね」
皿を並べ、師匠が祈りの言葉を唱えて食事が始まった。
「恵みに感謝を」
「感謝を」
「感謝します」
パンとサラダは、まぁいつも通りの味。
野菜のスープは味がよくでている。
香草焼きは普通においしい。
食べていると、ルークの皿が空いているのに気づいた。
「おかわり、あるよ?」
「お願いする」
そうして残るかと思っていた香草焼きも綺麗になくなった。
細身なのにそんなに食べるんだ。
男の子だからかな。
あまりにも食べる量が違うので、驚きである。
全員が食べ終えて、食後のお茶を準備すると、師匠がおもむろに口を開いた。
「明日からだけどね」
「はい」
「ルークもしばらくここに滞在することになった。午前中はルークに基礎的なことを教えるから、それをリリも一緒に受けてもらう」
「え、ルークも弟子になるんですか?」
「弟子にするつもりはないけど、少々、ルーク自身の問題を解決するために手伝いをしてやるつもりだ。
今してる対処が、どのくらい持つか経過を見たいしね。
他にもやれることはありそうだから、一応できることは全部してやるつもりだけど、材料を揃えるにも時間がかかる。
ルークも揃えられえる材料は自分で集めるって言ってるし、まぁ、そういうわけで、しばらくルークもここで暮らしてもらうことになる」
「わかりました」
「なんでお客様扱いは今日だけだ。明日から家事を二人で分担するように。細かいところはリリが教えてやってほしい」
「はい」
「世話になる」
「じゃ、そういうことだ。これからよろしく頼むよ」
そして、師匠はやることがあると言って研究室に戻っていった。
「客間に案内しようか?」
「片づけがあるだろ。それが終わってからでいい。何か手伝えることはあるか?」
「あれ、師匠は明日からって言ってたけど、いいの?」
「二人でやった方が早い」
ルークの印象は無愛想で無口だったのだけど、意外といいところもあるみたいだ。
二人で食器を流しに運ぶ。
「ありがと。じゃ、洗った皿を拭いてもらおうかな。やったことはある?」
「ああ」
「じゃ、これ使って」
布巾を渡して、師匠が作った魔道具でたらいに水を溜める。
「なんだそれ」
「師匠が作った魔道具だよ」
「……便利だな」
「うん。これを応用して、ここ、お風呂もあるんだよ。これが終わったら案内するね」
「風呂もあるのか」
「うん。そう。師匠はすごいんだよ」
「そうだな」
師匠に関してだけは異論はないみたいで、ルークは感心したように頷いている。
そして、三人分だけど、いつもより少し早く食器は片付いて、ルークに部屋を教えたり、お風呂の使い方を教えて、一日は終わった。




