15.リリ、帰宅する
夕方にもう一本更新します。
師匠の家は、王都へと続く街道を逸れて森の中の獣道を斜面を登りながら進んで、しばらく進んだ場所にある。
斜面は急なところもあるし、慣れてないと獣道も見つけづらい。
看板がでてるわけでもないし、知らないと大抵の人は迷ってしまう。
ルークはこんな森の奥に、みたいな顔をしているけれど、黙って着いてきてくれている。
そうしているうちに、木々の間からちらりと、赤いお屋敷の屋根が見えてきた。
ここまでくればもう迷わない。
赤い屋根を目印に獣道を逸れて屋根が見える方に進んでいく。
屋敷と森の境には、ハナカマという秋になると赤い実をつける低木が柵のようにぐるりとめぐらせてあって、その切れ目に木の扉が付けられている。
その奥にある、こんな森の中にあると思えないお屋敷が、師匠のアトリエ兼自宅だった。
わたしもどうやって建てたのかは知らないけど、もともとは変わりものの別荘だったと聞いている。
ルークは森の中に突然あらわれたお屋敷に少し驚いたようだ。
木の扉をくぐると、建物の入り口まで続く小道の横に薬草畑が作ってある。
その木の扉から向かって左側の畑の奥には森の小川から引いた溜池があって、家の裏には別建ての倉庫もある。
ルークを連れて、小道を通って玄関へと向かう。
そうしながら薬草畑を見ると、日中の暑さに畑の暑さに弱い植物はしおれていた。
これは後で水を撒かないとだ。
ルークはひとまず、応接室にでも通しておけばいいだろう。
そこで待っていてもらって、わたしは研究室にいると思われる師匠を呼びにいく。
「ただいま戻りました。あと、師匠、お客様です」
「おかえり。客? 誰だい?」
「ギルドからの紹介です。ギルドでは、ひとまず話を聞いて欲しいと頼まれました。
依頼を受けるかどうかは師匠に一任されるそうです。
すっごく禍々しい気配のするハーフの巨人族の方でした。
応接室にお通ししてます」
「わかった」
「わたしは水やりと夕飯の準備をしてますので」
「ああ。一応、夕飯は依頼人の分まで頼むよ」
「あ、お客様ですけど、町では宿屋に宿泊を断られたから野宿するつもりだと言われてました」
「……客間の用意もお願いしておこうかね」
「わかりました」
「そうだ。メイサのところはどうだった?」
「あ、素材は無事渡してきました。で、このタリスマンを頂いてきました。
いつも装備をしておくようにと言われてます」
「そうか。じゃ、問題ないかは明日見てみよう。一応それまで魔法は使わないように」
「はい!」
そして師匠は応接室に向かった。
わたしはひとまず、客間の支度に向かう。
普段の掃除は週に一度ほどしかしない部屋なので、換気をしつつ一通りほこりを払う。
床はバケツに汲んできた水で軽く拭いて、水を捨てに行くついでに手を洗ってから、シーツを変える。
本当ならこの後風魔法で床を乾かすのだけど、魔法は使わないよう言われているので、自然乾燥にまかせる。
夏だし、自然乾燥でも窓を開けて置いたら乾くよね。
よっし、客間はこれで終了。
次は水を撒きに行ってから、夕飯の支度だ。
水やりをしながら、いい感じに実っている野菜を収穫する。
明日は沈瞑草を収穫したところをもう少し手を入れておきたい。
たくさん収穫したので、あの周辺が少し寂しいことになっている。
肥料を追加してあげれば、また増えてくれるはずだ。
意外と明日もやることが多そうだ。
水やりを終わると、夕飯の支度だ。
三人分。
昨日の野菜スープの残りは足りるだろうか。
野菜、足しておこうかな。
それから、昨日狩った兎の香草焼きと、さっき収穫してきた野菜でサラダを作る。
巨人族って食べれないものとかなかったよね?
頭の中で、師匠に教えてもらった知識をひっくり返すけど、特にはなかったはずだ。
一応、足りないと困るし、量はたくさん作っておこう。
あまったら明日も食べればいいだけだ。
うん、今日もおいしそうにできた!
あとは二人を待つだけだ。




