10.リリ、ゲオルクさんに会う
師匠とひとつひとつ試していった結果、攻撃力の伸びが一番だけど、全体的に他の能力も上がってることがわかった。
全体的に能力が伸びているのは嬉しい。
これまでなかなか伸びなかったスタミナも伸びていて、呪具で抑えてしまうと、きっとこれももとに戻ってしまうだろう。
それはもったいない気もするけど、攻撃系魔法の伸びはすごくて、改めて呪具は必要だと師匠と確認しあった。
ひとまず、わたしが魔法のコントロールを上げれば呪具をつけなくてもいいだろうし、そこを頑張らないといけないんだろうな。
苦手だけど。
検証が終わったので、今度は王都の中にあるギルドへと向かった。
王都の外門から入場料を払って町の中に入る。
この間と同じ、夕方にはまだ早い時間帯だから、ギルドの中は閑散としていた。
あ、珍しい。
竜人族の男性が窓口で何か手続きを行っていた。
竜人族は割と自分たちの国から出ることが少ないって聞くから、見かけるのはほんとうに稀だ。
着てるものから男性とわかるけど、竜の血が濃い人みたいで、竜頭で、体も黒い鱗で覆われている。身長は一.八メルくらいだろうか。
背負っている大きな槍もあいまって、とても強そうだ。
男性は手続きを終えたようで、わたしと師匠がいる方を振り返った。
おお、左の口の端に大きな傷。
歴戦の猛者って感じだ。
その猛者は、師匠を見て固まった。
縦長の瞳孔がじっと師匠に固定されている。
「マヤさん……?」
「ゲオルク?」
え、まさか師匠の知り合い?
「元気にしてたかい?」
「ああ。あんたにはまだ追い付けないが、ようやくAランクになれたよ」
「おめでとう。ニコラスは一緒じゃないのかい」
「マヤさんもかよ。やめてくれよ。あいつとはよく攻略先が被るだけでパーティなんて組んじゃいねぇ」
「そう嫌がりなさんなって。あんだけ行動先がかぶるんだ。固定パーティ組んでも案外うまくいくと思うのにねぇ」
「……。そちらは?」
「ああ、パーティメンバーの娘で弟子のリリだ」
「はじめまして」
「よろしく。俺はゲオルクだ。へぇ。マヤさんの弟子かぁ」
ゲオルクさんも、両親のことを知っているみたいだった。
師匠を見ると、師匠がゲオルクさんについて教えてくれた。
「ゲオルクとは、昔、アスタオ国のスタンピードの応援に行った時、一緒になったんだよ」
「もうあれから十何年経つのか」
「あん時はあんたもヒヨッコだったのに、早いもんだねぇ。しばらくはこの国にいるのかい?」
「そのつもりだ。マヤさんは?」
「私はここの門を入る前にある森の中にアトリエをもったんだ。大抵そこにいるよ」
「アトリエ?」
「今は錬金術師をやってる」
「なるほど」
「時間があったなら遊びに来な」
「そうさせてもらおう」
「それじゃ引き留めて悪かったね」
「いや。俺も、ここである程度稼いだら遊びに行くよ」
「楽しみにしてる」
そうしてゲオルクさんはギルドを出ていった。強面だけど、カッコいい人だった。
後ろ姿をぽかんと見ていたけど、師匠に促されて納品窓口に向かう。
受付のお姉さんに依頼票と依頼品である草原兎の角三本を提出する。
「はい、依頼品の納品を確認しました。これが報酬になります」
そして銀貨六枚を受け取る。
だいたい草原兎の角一本で銀貨二枚くらいの相場だ。
銅貨十枚で、銀貨一枚。
銀貨十枚で、大銀貨一枚。
大銀貨十枚で、金貨一枚になる。
納品が終わると、師匠が言う。
「ちょっといいかい。急で悪いんだけど、この子のことで話がある。マスターはいるかい?
いるなら、マヤが奥で話がしたいと言ってるって伝えて欲しい」
師匠が取り出したギルドの組合員の証を兼ねたタグを見せると、受付のお姉さんが「お待ちください」と慌てて奥に入っていった。




