9.リリ、師匠と加護について考える
草原兎を回収し終えて師匠を探すと、師匠はこちらに向かってきていた。
わたしが血抜きをしている横で、《風刃》がえぐった大地を見ている。
「最後のは何か特別なことをしたのかい?」
「えっと、最初ので仕留めきれなかったので、焦ってついどばっと魔力を込めてさっと撃ちました」
「てことは、魔力の量以外に特に変えていない、と」
「はい」
「攻撃力が上がっているようだねぇ」
「えええー」
有用な加護だと思うし、あの場を脱出するにはなくてはならない加護だったのだけれど、ちょっとばかり違う加護がよかったなぁなんて思ってしまう。
わたしの場合、魔力は豊富だから、高い火力を出すには問題ない。
むしろ、今まで力を込め過ぎて問題を起こしてきたから、これは、ちょっと、これからもっと気を付けないといけなくなるのではないだろうか。
実際、さっきは発動イメージと実際の結果が違ってしまっていた。
ということは、これ、わたしが覚えている魔法は一通り撃ってみて発動後の威力を確認しておかないといけないとだめなやつ?
だってそうしないと、どんな風になるかわからないもんね。
「師匠、他には何かわかったことはありますか」
「昨日も鑑定機能付きの眼鏡で見たけれど、うまく働かなかったんだよね。
加護が与えられたことは見えるのだけれど、詳細は読めなくなっている。
一個ずつ試していくしかないねぇ」
えっとそれはあれだろうか。
師匠に本格的に弟子入りしたときみたいに、素早さを見るためと言って、ダッシュをしたり反復横跳びをした。
そういうのをまたやるのだろうか。
考えていると、師匠は別のことを考えていたようだ。
「リリが行き当たったのが、この辺りの管理者と名乗ったのなら、そう変な神でもないと思うんだけど」
「神」
「なんだい、普通の人間が、人間相手に加護を与えられるとでも思ってたのかい」
「確かに、そうですけど。
だって、加護って、生まれながらに神様に与えられてたり、あと、一流の冒険者が高難易度ダンジョンに挑んで、ラスボスからいい戦いだった、みたいな感じで貰うもんじゃないんですか?」
「ダンジョンのボスだと、神獣とか、そういうレベルのに勝たないと加護はもらえないよ。
あとは、信仰心が篤い人が長年の祈りの結果に貰ったりもするねぇ」
「えええー」
そんな大層なものをあんなに簡単にもらってもよかったのだろうか。
「話を戻すけれど、リリが行き当たった神、聞いたことのない特徴なんだよ。
そういうのが得意な神官様に見てもらえば、加護の内容がわかるかもしれないけれど。
確実に、というなら、その神様を祀っている神官様を探すしかないだろうね。
私にも、それ以上はわからない」
「えぇー」
「ひとまず、神官様に見てもらうにしても、どの神様か絞れないと意味はないし、寄付金もたんまりいるし、ギルドには詳細不明だと伝えたうえで私の見立てを話してみようか」
「寄付金、ちなみにどれくらいでしょうか」
「金貨何枚単位だと思う。そこは神殿によってそれぞれ違うだろうけど、それなりに用意しておいた方がよいだろうね」
金貨、それも何枚も。それは無理だ。
「あの、やっぱり見てもらわないといけないですか?」
「加護をくれた神様の特性によっては、便利なように見えて、思わぬ落とし穴があったりするから、いつかは見てもらった方がいいと思う。
でも、今は蓄えもないから無理だろうね。
せめて何の神かだけでもわかればよいんだけど」
「どうしたらわかりますか」
「聖サルバティア法国に、そういう見立てができる神官もいるって聞くけど」
「遠いですね」
「今すぐは無理だろうね。
うーん、メイサのとこで、ひとまず加護を抑える呪具でも作ってもらおうか」
「はい!」
「じゃ、それを終わらせたら、もうちょっと調べてギルドに寄って行くことにしようかね」
下処理をしている草原兎は最後の一匹にとりかかっている。
それを手早く終わらせると、内臓などを先ほどの《風刃》で出来た穴に埋めて、土魔法で周りの土を操って埋めた。
草原兎のお肉と角は、師匠のアイテムボックスにしまってもらい、検証の続きを始めた。




