第6話[イケメン転校生現る]
話しは少し巻き戻る。
蛇乃を捜していた直江をリリアが呼び止める。
この広い校内、闇雲に捜し回っても時間の無駄だ。
そう考え、リリアは校内放送で呼びかける事を提案する。
「ナイスだリリア。」
直江に褒められて照れるリリア。
二人は放送室へ向かった。
だが、説明しても放送部の部員の女の子が入れてくれない。
それどころか、もう一度説明するよう求めてきた。
直江は丁寧に事情を説明する。
それでも、放送部の部員の女の子は直江達を放送室へ入れる事を拒否した。
理由はリリアの存在に目を奪われてしまい直江の話しが全然頭に入ってこなかったからだ。
流石に三度目の説明を求めるのも気が引け、何より関わるのが面倒くさそうに感じ適当に断って帰って貰おう。
そんな事を考え、放送部の女の子は放送室の扉を閉めようとした。
直江が扉の隙間に手を入れる。
放送部の女の子は小さな悲鳴をあげた。
「すみません。私用で放送を流す事できないんです。諦めて下さい。お引き取り下さい。」
リリアの事を幽霊か何かだと思っている放送部の女の子は必死にそう説明して直江を帰そうとする。
リリアも直江と一緒にドアの隙間に手を入れて開けようとしてきた。
放送部の女の子は顔が青くなり、力一杯ドアを閉めようとする。
火事場の馬鹿力なのか放送部の女の子に力負けしてしまう。
危ないので指は直前に離したが、これでは校内放送が使えない。
直江が何かを閃き、放送室の扉を叩く。
「すみません。本当は蛇乃さんに告白したいんです。」
リリアは呆れた。
告白って完全に私用じゃん。
そう思っているリリアに直江はドヤ顔で親指を立てる。
「女の子は告白って言葉に食いつくんだぜ。」
そんな事を言う直江の顔を引っ叩きなるリリア。
それを堪え、次の作戦を練ろうとしていた時だった。
勢いよく扉が開かれる。
「蛇乃さんって、世界最強の女子高生、片代蛇乃様よね。いいわ、放送室じゃんじゃん使ってちょうだい。」
私用ですよね?
そう口に出かかったが、リリアはそれをグッと飲み込んだ。
どうせ自分の姿は見えないんだし、言っても無駄か。
そう思ったからだ。
ただ…。
「ほらな。」
そう言ってドヤ顔を決めてくる直江の顔が、かなりムカついたので思いっきりビンタした。
まあ、何はともあれこれで保健室の件を伝えられると安心していたリリアだったが、直江が本当に告白をしだして焦り…。
そして今に至る。
「どうも、身長二メートル越えの筋肉ムキムキでおっさん顔の蛇乃ちゃんでぇ〜す。」
声は低く、恐ろしい目つきの蛇乃を見て、咄嗟に放送室の扉を閉める直江。
直江の背中を震えながら押すリリア。
開けたら殺される。
そう思い、二人はパニック状態に陥っていた。
「いや〜、あんなに美少女だとは思わなかったなあ。」
「ええ、本当に美少女ね。」
ドアがガンガンと蹴られ、悲鳴を上げる二人。
放送部の女の子に助けを求めようと視線を送ろうとするが、何処にもいない。
「嘘だろ、あの子一人で逃げやがった。つか、筋肉ムキムキとか言ったのリリアじゃなかった?蛇乃さん、リリアの声聞こえるの?」
直江の問いかけに蛇乃は答えない。
代わりに…。
「気安く名前で呼ぶなぁー。」
との返事が返ってきた。
そして、その返事と共にドアが破壊され、直江とリリアは衝撃で後ろに軽く吹き飛んだ。
すぐさま土下座する二人。
リリアは吹き飛んだ際、直江の後頭部に顔を強打してしまい、土下座しながら顔を抑えている。
「さあ、告白もとい喧嘩買いに来たわよ。死ぬ覚悟できてるわけ?」
直江は必死に何度も頭を下げて謝る。
そんな中リリアが口を開く。
「ぢがうんでず、おどもだぢが…。」
流れてくる鼻血を手で押さえながら必死に恭子の事を話す。
直江はリリアにポケットティッシュを渡し、再び土下座の姿勢に戻る。
恭子の事を聞いた蛇乃は二人に何も言わず、保健室へ走った。
保健室へ着くや否や扉を開け、痛々しい恭子の姿を見て絶句した。
後から直江とリリアも保健室へ入っていく。
すでに目を覚ましていた恭子が蛇乃に笑顔を向ける。
そして、ジョンの事を話した。
隠していても意味がない。
ジョンの狙いは蛇乃なんだから、いずれ蛇乃に接触するだろう。
その時の為にも、この事は話しておかないと。
恭子は蛇乃の手を握る。
「もしジョンと闘う事になっても、すぐに降参してほしいの。そうしたらジョンと闘わなくて済むから。」
蛇乃はテンションを上げて言う。
「でかした恭子。これで達子とジョンを引き離せるわ。」
そう言うと蛇乃は恭子の手を振り解く。
「後あんた、降参とか言ってたけど私、元から闘う気ないから。私ねあんたの痛々しい姿を見て内心喜んじゃったの。」
蛇乃は両手で両頬を抑え、妖艶に笑う。
「それでね、気づいちゃったの。私には達子しかいないって、だから今から達子を呼んで来るから恭子、説明よろしくね。」
そう言って蛇乃は保健室を出ようとした。
それを直江が呼び止めた。
「おい、そんな言い方ないだろ。」
切れる直江を止める恭子。
「そっか、勘違いしてたよ。私達、友達じゃないんだね。」
恭子のその言葉に蛇乃は笑顔で答えた。
「私には達子しかいないって言ってるじゃない。とにかくジョンの説明、よろしくね。」
恭子は無理に笑顔を作り言う。
「わかった。任せといて。」
蛇乃はうんと頷くと保健室から出て行った。




