第12話[ハナの過去]
蛇乃はそう言うが、あの勝負はどう見ても蛇乃の勝ちだ。
降参を認める訳にはいかない。
「悪いが、私にもプライドがあってね。そんなんで世界最強になっても嬉しくないんだよ。」
それを聞いた蛇乃が溜め息を吐き出した。
「あんた何か勘違いしているようだけど、私、別にあんたを喜ばせる為に降参したんじゃないわよ。」
そう言うと蛇乃は過去を思い出す。
恭之助に勝って、マスコミが家に押し寄せた事。
ジョンが恭子をボコボコにした事。
ハナと闘った事。
世界最強になってから、ろくな事が無い。
「もう嫌。もううんざり。私は達子と恭子とで平和な青春を送りたいの。あんたみたいなメスゴリラと関わりたく無いの。負けたと思うのなら少しは勝者のお願いも聞きなさいよ。」
ハァハァと息を切らす蛇乃。
これから先、ハナの様な奴に狙われるかもと思うとゾッとする。
「いや、でもなぁ…。」
負けたのに勝者を名乗る事に抵抗があるハナ。
「いいじゃない。別に…。恭子だって私を目標とするより、憧れてるあんたを目標に頑張る方が良いに決まってるわ。」
ここまで言ってもハナは頷かなかった。
「ハナちゃん。私からもお願いするわ。私の夫のせいで蛇乃ちゃんにも迷惑かけちゃってるみたいだし、お願いできないかしら?」
憧れの翔子に頼まれては断る事ができない。
恭之助の尻拭いだと思うと腹が立つが、仕方がない。
ハナは蛇乃の提案を飲む事にした。
「良かった。そうだ、ハナちゃんは行くとこあるの?もし無ければ家に居候しない?恭子も喜ぶと思うの。」
ハナと翔子が話しをしている中、達子は一件落着だと安堵し、達也にお礼を言おうと辺りを見回した。
「あれ?お兄ちゃんが居ない。」
達子の言葉に蛇乃も辺りを見回した。
廃ビル内に隠れる場所も無ければ隠れる必要も無い。
まあ、あんなにハナに蹴られたんだ。
痛くて早く病院へ行きたかったのだろう。
その事を達子に話し、しばらくして私達は解散した。
それにしてもこの展開、あいつが計画した通りの展開なのだろうか。
達子が虐められた事、私が達子を守るって決めた事、あいつは全て知っていたのだろうか?
全て知っててこの計画を立てたのか?
いや、流石にそれは考え過ぎか。
「蛇乃、早く帰ろう。」
達子に返事をし、蛇乃は走って達子の側に寄る。
「蛇乃、今日はありがとね。お礼って訳じゃ無いけど、今週の日曜日、二人きりで遊ぼうよ。」
達子のデートの誘いに、蛇乃は大きな返事をして、首を縦に振り応えた。




