第11話[ナラクノハナ]
やはりだ。
あいつの狙いはこれだったんだ。
女性を殴る趣味は無い。
あれはこの状況を作り出す言葉であり、私への警告でもあったんだ。
自分はどうあってもハナを殴らない。
達子を守りたいなら、私が動け。
あいつはそういう意味で私に言ったんだ。
ハナと闘わなくていいなどと言って置きながら結局は闘わせるつもりだったのね。
だけど、私は闘わない。
あんたが私を知っているのと同じ様に私もあんたを知っている。
極度のシスコンのあんたが、達子の危機に動かない訳が無い。
私が無様に負けて達子を守る必要なんて無い。
そろそろ痺れを切らし動く筈だ。
だが、達也は俯き微動だにしない。
その間にもハナがどんどん達子との距離を詰めて行く。
それでも、達也は動く事は無かった。
蛇乃の額から冷や汗が滲む。
そうか、そういう事か。
これは達子にとって危機でも何でも無い。
ハナは格闘家だ。
素人相手に手を出さない。
それが分かっていて、あいつは動かないんだ。
なら、私も…。
私も…。
「誰か達子を助けてよ。」
気がつくと蛇乃は叫んでいた。
声を上げ、涙を流しながら何度も叫ぶ。
達子を助けてと。
その言葉に反応し、動いたのは恭子だった。
ハナと恭子とでは実力差がある。
それでも恭子は達子を守る為、蛇乃の為にハナの前に立ち塞がった。
「私が相手になります。」
本気でハナに勝つ気でいる恭子。
ジョンにも勝てないのに、ハナに勝てる訳も無い。
頭の中では分かっている。
だが、負けるつもりで闘う格闘家なんて居ない。
恭子は父の言葉を思いだす。
格上相手でも勝つ気でいろ。
気持ちで負けてたら勝てる勝負も勝てない。
その言葉を胸に恭子はハナに立ち向かった。




