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変死 第9話

 「そ、そうですか……」


 拓哉が少しがっかりした表情を浮かべる。


 すると――。


 南部教授は何かを思い出したように、自分の机の引き出しを開けた。


 そして、その中から数枚の古い写真を取り出した。


「実は……数年前から、この辺りでは同じような事件が起こっているんですよ」


「同じような事件?」


 拓哉が聞き返す。


 南部教授は取り出した写真を一枚ずつ確認しながら、


「ええ……。詳しい話を聞こうとしても、ここの人達は『何かの呪いだ』と言って、

 あまり話したがらないんです」


 と言った。


 そして、数枚の写真を拓哉に手渡した。


「よかったら、見てください」


「ありがとうございます」


 拓哉は写真を受け取ると、綾乃と一緒に一枚目の写真を見た。


 そこに写っていたのは――。


 牧場の牛の死体だった。


 だが、その身体には明らかに不自然な痕跡が残されていた。


 乳房だけではない。


 別の写真には、身体の一部がまるで何か鋭い刃物で切り取られたように、

 異様なほど綺麗に失われている牛が写っていた。


「……」


 拓哉は無言で次の写真を見る。


 そこにも、同じような牛の死体が写っていた。


「こ、これは……」


 綾乃が思わず息を呑む。


 拓哉は写真の切断面を見つめた。


 どの写真にも共通している。


 切断された部分には、大きな傷や乱れがほとんどない。


 まるで――。


 何かによって、一瞬で切り取られたかのようだった。


「……全部、同じだ」


 拓哉が呟く。


「そうなんです」


 南部教授は静かに答えた。


「私も最初は、誰かが牛を襲ったのだと思っていました」


「違うんですか?」


 綾乃が尋ねる。


 南部教授はすぐには答えなかった。


 やがて、写真の一枚を指差す。


「この牛が死んでいた場所を調べた時……妙なことが分かったんです」


「妙なこと?」


「ええ」


 南部教授の表情が曇る。


「周囲には、牛を引きずった跡もなければ、人間の足跡もほとんど残っていなかった」


 拓哉と綾乃は顔を見合わせた。


「じゃあ……誰が?」


 綾乃が小さな声で呟く。


 南部教授は答えなかった。


 ただ、机の上に残った最後の一枚の写真を見つめていた。


 その写真には、牛の死体と、その上空に浮かぶ――。


 正体不明の白い光が写っていた。


「……この写真は?」


 拓哉が写真を取り上げる。


 南部教授の顔から、穏やかな表情が消えた。


「それについては……まだ、誰にも話していません」


 教授室の空気が、一瞬で重くなった。

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