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変死 第8話

 南部教授の教授室へと招き入れられた拓哉は、持っていたノートパソコンを開いた。


 そして、牧場主から借りた牛の死体の写真を表示すると、


「あの……先生にちょっと、見てもらいたい写真があるんですが……」


 と言い、南部教授の前にパソコンを差し出した。


「これなんですが……」


 画面に映し出されたのは、乳房が異様なほど綺麗に切り取られた牛の死体だった。


 南部教授は拓哉からパソコンを受け取ると、写真をじっと見つめた。


「……ほぉ」


 南部教授の顔から、穏やかな表情が消えた。


 そして、しばらく無言のまま写真を見つめ続ける。


「これは……凄い写真ですな」


「原因が分かりますか?」


 拓哉は南部教授の表情を窺いながら尋ねた。


 南部教授はすぐには答えなかった。


 もう一度、写真を確認する。


 特に、牛の切断された部分と、その周囲に残された牧草を注意深く見つめていた。


「……この写真だけでは、何とも言えませんな」


 そう言うと、南部教授は拓哉にパソコンを返した。


「そうですか……」


 拓哉は少し残念そうに写真を見直した。


 すると綾乃が、


「先生。こういう状態の牛が死んでいた事件って、過去にもあったんですか?」


 と尋ねた。


 その瞬間――。


 南部教授の手が、ほんの僅かに止まった。


「……どうして、そう思うんです?」


「何となくです」


 綾乃はそう答えた。


 南部教授はしばらく綾乃を見つめた後、


「……この辺りでは、昔から妙な噂がありますからね」


 と、静かに言った。


「妙な噂?」


 拓哉が聞き返す。


 南部教授は答えず、教授室の窓の外へ視線を向けた。


 そして――。


「……牛だけではありませんよ」


 小さな声で、そう呟いた。


「え?」


 綾乃が聞き返す。


 だが、南部教授は何事もなかったかのように笑った。


「いや……何でもありません」


 拓哉は南部教授の顔をじっと見つめた。


 ――この人は、何かを知っている。


 そんな疑念が、拓哉の中に芽生え始めていた。


 その時、教授室の窓の外――。


 青空の中を、一瞬だけ小さな光が横切った。


 しかし、それに気付いたのは綾乃だけだった。


「……あれ?」


 綾乃が窓の外を見つめる。


 だが、そこにはもう何もなかった。

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