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変死 第5話

 「今回の事件の写真なんだけど……」


 拓哉はノートパソコンに取り込んだ、牧場主から借りた写真を見ながら、

 携帯電話の向こうにいる茉里に尋ねた。


「どう思う?」


 『どうって……』


 茉里は少し黙り込んだ。


 『写真があまり鮮明じゃないから、断定はできないけど……』


「けど?」


 『この写真を見る限りでは、あの状態は普通じゃないわ』


 茉里の声が少し低くなった。


「それは、どういうことだ?」


 拓哉は身を乗り出すようにして尋ねた。


 すると茉里は、


 『専門の器具や機械を使わない限り、あんなに綺麗に切断するなんて、まずありえないわ』


 と答えた。


「専門の器具?」


 『ええ。しかも、写真を見る限りでは、切断面に大きな乱れがほとんどないの』


 茉里は科学的な観点から、淡々と説明していく。


 『普通なら、刃物で切ったとしても、もっと傷が残るはずよ』


「じゃあ……誰かが専門的な機械を使って切り取ったってことか?」


 拓哉が尋ねる。


 『その可能性はあるわ』


 茉里はそう答えた。


 しかし、すぐに続ける。


 『でも……それなら、別の問題があるの』


「別の問題?」


 『写真に写っている切断面よ』


 茉里の声が、さらに低くなる。


 『まるで……熱で一瞬のうちに切断されたようにも見えるの』


「熱で?」


 拓哉は思わず写真を見直した。


 牛の身体には大きな傷が残っている。


 だが、その周囲には血液が大量に飛び散ったような跡がほとんどない。


「……確かに妙だな」


 拓哉が呟く。


 助手席から写真を覗き込んでいた綾乃も、


「じゃあ、何か強力な熱源で……?」


 と不安そうに言った。


 『それも考えたけど……』


 茉里が言葉を濁す。


「何だ?」


 『もし、そんな高温の熱源が使われたのなら、周囲の牧草や牛の身体にも、それなりの熱の影響が残るはずなの』


 拓哉は黙り込んだ。


 『でも、この写真を見る限り……それがほとんどない』


「……じゃあ、どうやって?」


 『分からない』


 茉里ははっきりと答えた。


 『今の科学では、写真だけじゃ説明できないわ』


 車内が静まり返る。


 拓哉はパソコンの画面に映る写真をじっと見つめた。


 その時――。


「拓哉さん……」


 綾乃が小さな声で呼びかけた。


「何だ?」


「あの牛の周り……」


 綾乃が写真の一部分を指差した。


 そこには、前に茉里が指摘した、円形に倒れた牧草が写っている。


「これって……牛が倒れた跡じゃないですよね?」


 拓哉は写真を見つめる。


 そして、ふと眉をひそめた。


「……確かに」


 茉里も電話の向こうで、


 『そこも気になっていたの』


 と呟いた。


 『あの円形の跡……まるで、何か巨大なものが上から降りてきたみたいに見えない?』


 拓哉と綾乃は顔を見合わせた。


「……まさか」


 拓哉が小さく呟く。


 だが、その言葉の先を口にすることはできなかった。


 車の外では、青森の冷たい風が牧草を揺らしている。


 そして、その遥か上空――。


 雲の切れ間から、一瞬だけ何かが光った。


「……今、何か光りませんでした?」


 綾乃が空を見上げた。


 拓哉も空を見た。


 しかし――。


 そこには、何もなかった。

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