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変死 第46話

 拓哉が糠田警視総監の部屋を出て行くと、


 それと入れ替わるように、老紳士の亀崎が部屋へと入ってきた。


 糠田は亀崎の姿を見るなり、椅子から立ち上がると、


 深々と頭を下げた。


 亀崎はそんな糠田を気にする様子もなく、


 糠田の机の前にあるソファへ静かに腰を下ろした。


 そして、穏やかな口調で、


「例のことは……片付きましたか?」


 と尋ねた。


 糠田は再び自分の椅子に腰を下ろすと、


 少し疲れた表情を浮かべながら、


「ええ……彼(拓哉)の部署は廃止しました」


 と答えた。


 そして、机の上に置かれていた一冊の資料に手を伸ばす。


「これが、彼が提出した今回の事件の調査結果です」


 そう言って、糠田は拓哉が提出した資料を亀崎の前へ差し出した。


 亀崎はその資料を手に取ると、


 表紙をじっと見詰めた。


「そうですか……」


 亀崎は小さく呟いた。


 その表情には、先ほどまでの穏やかな笑みはなかった。


 糠田はそんな亀崎の様子を黙って見詰めていた。


 やがて亀崎は資料を開き、


 一枚、また一枚とページをめくっていく。


 そこには、青森で起きた牛の変死事件。


 そして、大学教授・南部の不可解な死について、


 拓哉たちが調べたことが細かく記されていた。


 亀崎は最後のページまで目を通すと、


 静かに資料を閉じた。


「……これで、すべてですか?」


 亀崎が糠田に尋ねた。


「はい。これ以上、彼らが調べることはないでしょう」


 糠田はそう答えた。


 亀崎はしばらく黙ったまま、


 手元の資料を見詰めていた。


 そして、


「ならば……これでいいでしょう」


 と、静かに呟いた。


 その言葉を聞いた糠田は、


 何も答えなかった。


 ただ、亀崎の前で深々と頭を下げた。


 その頃、拓哉はまだ知らなかった。


 自分たちが追っていた事件の裏側で、


 さらに大きな何かが動いていたことを――。

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