変死 最終話
老紳士の亀崎は、人気のない薄暗い長い廊下を、
ゆっくりと歩いていた。
その小脇には、拓哉たちがこれまで調査してきた、
不可思議な事件に関する資料が抱えられている。
やがて亀崎は、長い廊下の突き当たりにある
一つの部屋の前で足を止めた。
周囲を確認すると、
静かに扉を開ける。
部屋の中には、これまで誰にも知られることなく
集められてきた様々な資料や記録、
そして、用途さえ分からない奇妙な物が
所狭しと置かれていた。
亀崎はその中の一角に、
拓哉たちが調査した事件の資料をそっと置いた。
そして暫くの間、
その書類を名残惜しそうに見詰めていた。
だが、何も言わずに踵を返すと、
その部屋を後にした。
亀崎が部屋を出て行くと、
静まり返った室内に再び、
何とも言えない不気味な静寂が訪れた。
こうして――
拓哉と綾乃が携わっていた、
不可思議な事件を専門に調査する部署は、
廃止された。
拓哉は辞令によって地方の警察署へと異動となり、
綾乃は警視庁の資料部へと配属された。
そして茉里もまた、科学警察研究所を去ることになった。
しかし、幸いにも直接の上司の口添えによって、
別の研究機関で仕事を続けることになった。
こうして――
拓哉、綾乃、そして茉里は、
それぞれ別々の場所へと散っていった。
もう二度と、
あの不可思議な事件を調べることはない。
誰もが、そう思っていた。
だが――
亀崎が去った、あの部屋では、
誰にも知られることなく、
新たな資料が一冊、
棚の上へと置かれていた。
その表紙には、
ただ一言だけ、
こう記されていた。
――『Mファイル』。
そして、その下には、
まだ誰も知らない新たな事件の記録が
静かに綴られていた。




