変死 第43話
なかなか拳銃を発砲しようとしない拓哉に、
綾乃は苛立ちを募らせていた。
「もう! 役立たず・・・・!」
そう叫ぶと、綾乃は手にしていたコンビニの袋を、
怪物へ向かって思い切り投げつけた。
「えいっ!」
袋は怪物の身体にぶつかった。
その瞬間――
「・・・・あっ!」
袋の中に入っていた、綾乃の飲みかけのミネラルウォーターの蓋が外れた。
そして――
中の水が、怪物の身体に降りかかった。
「・・・・え?」
拓哉と綾乃が、同時に怪物を見つめる。
次の瞬間だった。
「ぎゃあぁぁぁぁ・・・・!」
怪物が、まるで身体を焼かれたかのような悲鳴を上げた。
「な、なんだ・・・・?」
拓哉が驚いている間にも、怪物の身体から白い煙のようなものが立ち上っていく。
「ぎゃあぁ・・・・!」
怪物は苦しそうに身体をよじらせると、
その場に激しく倒れ込んだ。
「・・・・動かなくなった?」
綾乃が呆然と呟く。
拓哉も拳銃を構えたまま、倒れている怪物を警戒する。
「まだ近づくな!」
拓哉は綾乃を制した。
しかし――
怪物は、まったく動かない。
やがて、拓哉は慎重に怪物へ近づいていく。
「・・・・どうなっているんだ?」
拓哉は倒れている怪物を見つめた。
すると、その後ろから――
「茉里さん!」
綾乃の声が響いた。
拓哉と綾乃は、怪物のことを警戒しながら、
床に倒れている茉里のもとへ駆け寄った。
「茉里! 大丈夫か?」
「う・・・・うん・・・・」
茉里は苦しそうに身体を起こす。
そして――
三人は、床に倒れたまま動かない怪物を見つめた。
「・・・・何で?」
綾乃が呟く。
「どうして、水を掛けただけで・・・・」
拓哉にも、その答えは分からなかった。
ただ一つ分かっているのは――
普通の人間なら、決して起こり得ない現象が、
今、目の前で起きたということだけだった・・・・。




