変死 第26話
「そ、そうですか・・・・」
綾乃は、しばらく黙り込んだ。
そして、ふと南部の指についていた汚れを思い出す。
「・・・・あっ、茉里さん」
「何?」
「人が・・・・あんな鋭い傷を人に負わせて、
人を殺すことなんて、できるでしょうか?・・・・」
綾乃は遠回しに、茉里へ尋ねた。
茉里は少し考えると、パソコンの画面に映し出された牧場主の傷を見つめながら、
「うーん・・・・。
人の手や指に何か鋭いものを
取り付ければ、できないこともないと思う。
でも・・・・」
茉里は画面を拡大し、傷をじっと見つめる。
「こんなに複雑な傷を、わざわざ人間が
付けるかしら?・・・・」
「・・・・」
綾乃は何も言えなかった。
その答えに、少し落胆したような表情を浮かべる。
そんな綾乃の様子を見た茉里は、
「でも・・・・」
と、ふと思いついたように言った。
「何らかの原因で、人間の身体そのものが
獣のように変化したとしたら・・・・
可能かもしれないわね」
「え・・・・?」
綾乃が驚いた声を上げる。
茉里は小さく笑うと、
「・・・・まあ、そんなことは現実には
あり得ないと思うけど。
夢物語の話ね・・・・」
そう言って、再びパソコンの画面へ視線を戻した。
しかし綾乃は、茉里の言葉を聞いた後も、しばらく何も言えなかった。
頭の中には、南部の汚れた爪と、あの牧場主の身体に残されていた鋭い傷が
何度も浮かんでいた・・・・。




