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変死 第2話

 長い運転の末、拓哉と綾乃が辿り着いたのは、一軒の牧場だった。


 二人は牧場主に警察手帳を見せ、今回の事件について話を聞いていた。


 牧場主は少し落ち着かない様子で、拓哉たちに事件のことを話し始めた。


「数ヶ月前の朝でした……」


 牧場主はそう言うと、しばらく言葉を選ぶように黙った。


「牧場で働いている者が、牛舎の中で一頭の牛が死んでいるのを発見したんです」


「死因は?」


 拓哉が尋ねる。


 牧場主は顔を曇らせた。


「……それが、普通じゃなかったんです」


 そう言いながら、牧場主は一枚の写真を取り出した。


 写真に写っていたのは、牛の死体だった。


「乳房が……」


 綾乃が思わず息を呑む。


 牛の乳房は、まるで鋭利な刃物で切り取られたかのように、円形にくり抜かれていた。


 しかも――。


 周囲には、血がほとんど付着していない。


「丸く……切り取られている」


 綾乃が呟く。


 拓哉も写真をじっと見つめた。


「これを切った道具は?」


「分かりません」


 牧場主は小さな声で答えた。


「何か鋭い刃物で切ったんじゃないんですか?」


 綾乃が尋ねると、牧場主は首を横に振った。


「警察にも調べてもらいました。でも、普通の刃物で切ったような痕跡はなかったそうです」


「だったら、実際の死体を見せてもらえませんか?」


 拓哉は牧場主の目をじっと見つめた。


 牧場主は一瞬、顔を強張らせる。


 そして――。


「……すみません」


 牧場主は突然、拓哉の手から写真を奪い取った。


 そのまま写真を服のポケットへ押し込む。


「牧場で働いている者たちが気味悪がるので、その日のうちに処分したんです」


「その日のうちに?」


 拓哉の表情が険しくなる。


「ええ……」


 牧場主は目を逸らした。


「ですから、もう死体はありません」


 拓哉は何も言わず、牧場主を見つめ続けた。


 その時――。


 遠くの牛舎から、一頭の牛が突然、大きな声で鳴いた。


「モォォォォ……!」


 綾乃は驚いて牛舎の方を振り返る。


 そして、何気なく空を見上げた。


 青く澄んだ空。


 雲一つない。


 だが――。


 ほんの一瞬。


 太陽の近くを、何か青白い光が横切ったように見えた。


「……今の、何?」


 綾乃が呟く。


 しかし、もう何も見えなかった。


 拓哉はそんな綾乃の様子に気付くことなく、牧場主を見つめていた。


 牧場主の顔には、明らかに何かを隠しているような表情が浮かんでいた。


 ――この牧場では、一体何が起きているのか。


 二人はまだ、その答えを知らなかった。

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