変死 第13話
拓哉達は、最初に牛の変死事件が起こった牧場へと向かった。
だが――。
そこで牧場主から聞かされた話も、拓哉と綾乃が最初に訪れた牧場で聞いた話と
ほとんど同じものだった。
「……結局、ここでも何も分からないか」
拓哉は、ため息をついた。
綾乃も手にしていた資料を見ながら、
「これじゃあ、調べようがありませんね……」
と、落ち込んだように呟いた。
そんな二人を見た南部は、
「まあ、そう焦らないでください」
と言い、牧場の周囲を見回した。
「少し、この辺りを調べてみましょう。何か分かるかもしれませんから……」
「そうですね」
拓哉は頷くと、南部と共に牧場の周辺を歩き始めた。
綾乃も二人から少し離れた場所を、一人で調べることにした。
牧場の周囲には、都会ではほとんど見ることのない草花や木々が生い茂っていた。
その時――。
ガサッ……。
「ん?」
茂みの中から、小さな動物が姿を現した。
それだけではない。
道端のあちらこちらから、次々と小動物達が姿を現し始めた。
「わぁ……可愛い」
綾乃は思わず笑顔になった。
警戒する様子もなく、動物達は綾乃の近くへと集まってくる。
「こんなにたくさん……」
綾乃は一匹の小動物に触れようと、ゆっくりと手を伸ばした。
その瞬間――。
「危ない! 手を下げて!」
「えっ?」
突然、背後から南部の声が響いた。
綾乃は驚いて振り返った。
「な、南部先生……?」
いつの間にそこまで近づいて来たのか――。
南部は険しい表情で、綾乃と小動物達を見つめていた。
「いいから! 早く手を下げて!」
「は、はい!」
綾乃は慌てて伸ばしていた手を引っ込めた。
すると――。
さっきまで綾乃の足元に集まっていた小動物達が、一斉に動きを止めた。
まるで何かを恐れているかのように、同じ方向を見つめている。
「……何なの?」
綾乃は不思議そうに小動物達を見つめた。
南部は何も答えなかった。
ただ、青ざめた顔で、小動物達が見つめている先――牧場のさらに奥にある森を見つめていた。
「南部先生?」
綾乃が声をかける。
南部はようやく綾乃を振り返ると、
「……あの動物達には、絶対に触らないでください」
と、低い声で言った。
「どうしてですか?」
綾乃が尋ねても、南部は答えなかった。
ただ――。
森の奥から聞こえてきた、かすかな電子音のような音に耳を澄ませていた。
――ピィ……。
「……また、始まったのか」
南部は誰にも聞こえないほど小さな声で、そう呟いた。




