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樹海を抜けた先にあったのは巨大なビルだった。
まるで現代日本を彷彿とさせる外観だ。
「妙だ。こんな所にビルなんて」
「本当に心当たりがないの?」
「もしや零社……?」
「敵味方で言うと?」
「此処アルテマを乗っ取ろうとしている敵キャラです」
俺はレダスとアニキの会話を聞きながら三十階建てのビルを見上げていた。
「クレラちゃんが居るとしたらこの辺りだよ?」
アニキの言葉に俺がビルに押し入る覚悟を決めた、その時だった。
ビルの自動ドアが開き、紅い眼をしたセレナが現れたのである。
セレナと言えば桃色髪の女戦士で、騎士団の幹部をしていた人だ。
この紅い眼にされるのは零社とやらの仕業だったという事か。
剣を構えるセレナ。
俺はクレラの為にも戦う必要があった。
「一気に畳み込むよ。紅い眼をしている以上妥協は一切許されない」
「連携技か?」
「ソラ、天空クロス斬りを放って」
俺はセレナの至近距離へと詰めていき、剣を斜めに二度、クロスさせるように振り下ろし竜巻を発生させた。
セレナの身体がクルクルと回転しながら宙を舞う。
その隙をアニキは逃さなかった。
『衝撃波!』
波動弾とも言えるような青白い光を帯びた攻撃に、俺は息を呑んだ。
「天空属性に天空属性を掛け合わせた。大ダメージ必至だ」
アニキはいつになく戦闘モードだった。
そして吹き飛んだセレナの眼の色が変わった。
いち早く異変に気づき、駆け寄るレダス。
天空クロス斬りと衝撃波による攻撃で我に返ったか。
聞けば零社とギリシャ神話の神々が手を組んでいるとの事だった。
例のポセイドンもそのうちの一人か……。
「奴らが作った注射で人は凶暴になる」
フォックスやホワイトロックもその被害者か……。
その時、ビルの中から何者かが飛び出してきた。
「ソラ!」
「クレラ!」
「セレナさんに加勢するって嘘ついてきたの。レダスも無事で本当に良かった」
「アニキがメンバーに加わったんだ」
「それはそれは頼もしいね」
運命の人クレラとの再会を涙を浮かべながら喜んでいると脳裏に聞き覚えのある声が流れてきた。
『ハーディーズのサイだ。此方にはお前の連れのレインとアスカがいる。彼らについては心配するな』
あのレダスがカードゲームで対戦したサイか。
アニキが自身の回復薬をセレナに飲ませている所へ、何者かが翼をはためかせやって来た。
他ならぬクロウである。
俺達六人は零社のビルの前に再集結した。
「この近くにどんな武器でもブラストの力を浴びさせる『命の泉』があるから行かへん?」
クロウの提案だった。
大剣ソーイアロはブラストの力とやらを必要としているだろうか。
寧ろアニキの名も無き剣を強化すべきと言える。
レダスも同じ事を考えていたようだった。
あのアニキの唯一の弱点は装備の貧弱さだった。
ブラストがどういう人なのか存じ上げないが「命の泉」 という程だからまあ強力だろう。
こうしてアニキは大事なひょうたんに入った回復薬をセレナに使ったわけだが、彼女がまた凶暴にならない事を願うばかりだ。
走りだした。
早くしないと零社から追っ手も来るかもしれない。
気づけば胸元のモリガンの御守りが、薄っすら光りっぱなしだった。
紅い眼の注射の本数には限りがあるそうで、クレラは打たれずに済んだようだった。
樹海は森へと変わり、命の泉はそこにあった。
自身の剣を綺麗な水色の泉に浸すアニキ。
名も無き剣の事を気に入っている節があったが、ポセイドン達との闘いに備えておくべきだった。
そしてセレナがパーティに加わったのも強力だと言える。
追っ手は来ない。
俺はサイからのテレパシーについて皆に話した。
エリザベスにしろサイにしろ心に語りかけられるのは羨ましい能力だ。
レインとアスカはまだジン王国に。
そしてフォックスとホワイトロックは零社とギリシャの神々サイドに。
ナギサやナナシに対しても同様の事が言えた。
此処は六人で進むべきか。
アニキとセレナの実力は折り紙付きだ。
いやレダスや俺だって!
クレラの白魔法では回復しきれないダメージ量だったとはいえ、あの時の凶暴化したセレナを倒せるほどの「アニキとの連携」ではなかった。
当たり前だアニキが仲間に加わったのは極々最近の事だ。
だが相性は良いと手応えを感じている上伸び代がある。
絆はこれから芽生えさせていくんだ。
セレナが我に返ったのは運が良かったが、同じ方法でフォックスやホワイトロックも戻せないだろうか。
命の泉は神秘的な場所だった。
いやこの森自体、神秘的と言っていい。
アルカディアから南の山までは大分距離がある。
樹海を越え森を越えるとヒロナ帝国ではなくなる。
そう、ヒロナ様の国はずっと北の方まで続いてるそうなんだ。
南には機械と魔法が両立している国があるって昨晩レダスが言ってた。
とにかくクレラやクロウと再会出来て本当に喜びが込み上げていた。




