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翌朝俺達はアルカディアから南へと続く樹海を歩いていた。
どうやらこの樹海はこの国の者には「ヒロナの庭」と呼ばれているそうで、どこか神秘的な雰囲気を醸し出していた。
フライングレオに大人三人は乗せられないし、アニキはレオを休ませる必要があった。
赤、黄、青の鈍い光を放つ花々が、幻想的に見て取れる。
俺は正直アスカについても心配になっていた。
溺れ死んでいる可能性もゼロではない。
堂々と二股するのもどうかとは思うが、彼女達は特別嫌がる素振りを見せていない。
コケの生えた木の根っこを跨ぎ、俺はフーっと息を吐いた。
アルカディアを石の壁で覆ったのは敵対者がいるからだ。
そしてそれはこの樹海にいてもなんら不自然ではない。
ジン王国の砂漠以上に危険な生物が生息している可能性はほぼ百パーセントか。
頼もしい味方二人が一緒にいるとは言え、一瞬たりとも気は抜けない。
「ん?あんな所に木の家が」
アニキが指差す方を見れば、霧がかった樹海の先に小さな家が見て取れた。
訪ねてみましょう、と頷くレダス。
ノックして、暫く待つ。
現れたのは白髪の老人だった。
「冥土の占い師『リク』さんですね」
冥土……?
この人一度死んでるのか!?
「儂になんか用かな。占いはもう半年以上行ってない……」
レダスの言葉の響きからして只者ではなさそうだった。
例えば占いだけに関して言えばアニキよりも上なんだろう。
「是非、占って貰いましょう」
俺達は四角いテーブルの椅子にそれぞれ座った。
埃塗れの本棚が占いの熟練者を彷彿とさせる。
リクは小柄だった。
それでも目には不思議な力があり、若い時なら魔法も多少は使えたかもしれない。
何にせよ俺はここでアスカについて占ってもらうチャンスだった。
「儂は悟りを開き千年前から生きておる。もはや儂に知らぬものなど無い」
ゲームのキャラクターとは言え、千年前からの記憶があるのか。
魔王ラグナロクの時代を生き抜いたのは凄い。
「ホワイトロックの妹アスカが何処に居るか知らないか?」
「フム……前世からの結びつきを彷彿させる『クレラ』が居る中『アスカ』の存在も吉と出ておる。非常に珍しいケースじゃ」
クレラの名前を此方が言うまでもなく……!
この老人、本物だ。
「二人を愛する覚悟はあるんじゃな?」
知らない事は無いって言ってたが、それならこの世界がゲームの中の物と知ってるって事だよなぁ……?
「この世界アルテマは非科学的要素も多分に含んでおる。儂らを甘く見るな」
リクさんは俺の心の中を読んだかのように言った。
つまり……クレラ達にも生身の人間同様心は存在すると……?
俺は「二人とも大切だ」と言った。
このゲームをクリアーすればどうやら俺は元の世界に戻れるようなのだが、その時は是非ともクレラ、アスカと一緒がいい。
「まあ……お主は全てを知る必要はない」
「?」
リクは手を震わせながら俺の手を握り言った。
「後悔しない道を辿りなさい。潜在能力は『アニキ』に勝るとも劣らんよ。フフッ……それから冬を司る『エリザベス』が死ぬとこの世界はもう一度闇に包まれるじゃろう。もう行きなさい。全てを知る必要はないと言ったはずじゃ」
紅い眼については聞けなかった。
でもクレラ達が只のゲームの中の存在じゃないと知れて嬉しかったのも事実だ。
アスカちゃんが生きてると知らされた事も良かった。
おまけにアスカとの三角関係も吉と出てると。
それにしてもエリザベスが冬を司る存在だったなんて……。
流石ソーイアロの娘と言った所か。
空の上の天空島。
絶対辿り着いてみせる。
俺はリクの家を跡にし、再び樹海を歩きだした。
不思議な雰囲気のお爺さんだったが、潜在能力はアニキと互角と言われたのも嬉しかった。
運命的な出会いだったと言って良いだろう。
「気をつけろ……!ただならぬ気配がする」
アニキがシーッと黙らせる仕草をする。
クリーチャーだろうか。
いや、違った。
遠くに黒い鎧の騎士だった。
「亡霊か……?」
とレダス。
とにかく無駄な闘いはなるべく避けなければならない。
喩え勝ったとて、アニキの回復薬にも限りがある。
「もう直ぐ『ヒロナの庭』も終わりです。走ろう」
敬語使いが普段のレダスが此処に来て心を開き始めていた。
吊り橋効果か……?笑。
緊張感を共有すると仲良くなるっていう心理学の事だ。
って何で俺がムキムキのレダスとデートしなきゃなんねーだよ。
しかもこの樹海で。
ま、まあ黒騎士との闘いは避けられたようで良かった。
て言うかレダスさんが死ぬと俺のインディーズバンドとしてのデビューも白紙になるんじゃないか?
人の命と天秤にかけるような事じゃ決して無いが、とにかく絶対にレダスと一緒にゲームをクリアしてぇ。
数分後、俺達はヒロナの庭から出る事に成功した。




