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夜までまだ時間がある。
アニキの提案で俺は剣の修行をする事になった。
剣道の経験はない。
それに俺の剣ソーイアロは両手で扱う。
アニキの佩いている片手剣とは戦い方が変わってくるはずだ。
それにしても彼女候補が二人。
少し前までの俺じゃ考えられない事だ。
まあ眠れる獅子だったというわけか。
俺が本気だせば彼女の一人くらい余裕で作れ……る?
「おや、ソラ上の空だぞ?」
今のアニキの発言はダジャレじゃないと断言しよう。
ダジャレが好きなのはアスカだ、多分。
因みに俺の兜は顔を覆うサメの歯のような形の部分が上下する仕組みになっていて、基本戦闘以外の時は上に上げて顔を見せるようにしている。
十字の首飾りも顔を見せた時に見えるようになっている。
(アニキ、ホント何でも出来るんだなー)
俺はこの時アニキの口からほぼ全ての上級技は全て空、海、冥界の何れかに属する事を知らされた。
冥道クロス斬りは上級技だったんだ……!
じゃあそれを何時でも発動できるようにしねーと。
でもあの時はフォックスとクロウが居たから発動できたとも受け取れる。
やはり強者への道は平坦ではない。
まだ普通のクロス斬りの発動もままならないのだ。
そしてアニキの片手剣はごくごく普通の名も無き剣だという事をこの時知った。
アニキ……アンタバケモノだよ。
この世界に来て一週間が経とうとしている(そのうち二日半は気絶してた)が、アニキが味方でほんと良かったよ。
服もボロボロだし、腰のひょうたんには回復薬が入ってるらしいんだけど、自身の調合らしい。
立ちはだかる壁は想像以上に大きいぞソラよ……!
俺は自分に対して心の中で言った。
先ずはクロス斬りを着実にマスター!
問題は此処からだった。
アニキが言うには自分は天空タイプらしい。
何処で判断したか知らんが。
天空クロス斬りを使いこなせるようになれば、取り敢えず物理攻撃の面ではアニキやレダスと同等、或いはそれ以上の成果を上げれるようになる。
頑張るしかなかった。
本当は直ぐにでもクレラ達を助けに行きたい所を塀の中で特訓である。
大剣ソーイアロの底力……俺が引き出してやる!
いつまでも装備頼みだとアニキには追いつけないが、今はそんな事言ってられない。
風を切り、雲を断つ。
そんなイメージだそうだ。
ジャンプして飛び上がった。
クロウみたいに翼は無かったが、中々のジャンプ力を発揮した。
アレサンドロの鎧を着てのコレは、いよいよ自分もアルテマの世界に溶け込んで来たか。
「せやあぁぁあ!」
大剣をクロスさせると竜巻が起こった。
天空クロス斬り……成功だ。
まだ修行を始めて一時間しか経っておらず、この習得スピードは上出来だそうだ。
そう言えば以前セレナは居合斬りを披露してたなー。
剣技は剣技で魔術に引けを取らず奥深そうだ。
その時、何者かによって俺の作った竜巻が打ち消された。
屋根の上に人影……アレは!?
紅い眼をした……ホワイトロック?
ああ……なんて事だ、フォックスに続いてホワイトロックまで。
おまけに天空クロス斬りを打ち消すなんて以前よりパワーアップしてる?
それとも裏魔法の使い手として化けの皮が剥がれたという事なのか。
何れにせよ目の前のホワイトロックのオーラは以前の何倍にも増していた。
だが流石にこの三人には勝てないだろう。
ホワイトロックはクスリと笑うと箒に跨り壁の外へと猛スピードで突っ切っていった。
隙あらば俺達の内の誰かを殺そうとしたとでも言うのか。
あの紅い眼ーー思い浮かべただけでもゾッとする。
フォックスもパワーアップしていたとしてもそれでもアニキと俺の力を買っていたのか。
記憶を失っているわけではなさそうだったし。
謎は深まるばかりだが、とにかくこの時間は修行にあてるべきだった。
それにしてもホワイトロックさん今日は眼があれだったけどアイドルみたいな顔立ちだよな。
戦うのはフォックス以上にはばかれるなー。
ま、何にせよ天空クロス斬りをモノにしたんだ。
発動には体力を使うから一日二回がやっとと言ったところか。
でもヒロナさんが言ってた「ポセイドン」って気になるなー。
ギリシャ神話の神々だろ?
そんなのと対峙するのか?
ここでの修行はもはや必須だ。
レイン達も無事だと良いな。
レインのサポートはアニキ達前衛の強力な後ろ盾になり得る。
あのハープの音色の効果は一般的な緑魔法を超えてくると見ている。
そしてクロウ。
オークを一撃で葬った剣の腕は本物だった。
まだ力の全貌を見せていないが、紅い眼をしていない事を祈るばかりだ。
修行は夜まで続いた。
手にマメが出来たが関係なかった。
そしていよいよ占星術……!
アニキは天才だった。
将軍と軍師を兼ね備えたような、最高の男だった。
「見えたよ……!南に居る。海岸沿いを行こう」
「アスカは?」
「僕は神じゃないんだよ?」
占星術にも一日で見れる限界はあったか。
とにかく無事なのが確認できて本当に良かった。




