28
大剣ソーイアロは俺の背中に吸い付く特性がある。
荒波の中でもまるで意思を持ったかのように俺にひっついていたのだろう。
それはそうとアニキが占いが出来るのは心強かった。
元々ある程度先は読めるようなのだが、占星術で確実さは増すようだ。
アニキの召喚したフライングレオに跨りこの近くだというヒロナ帝国首都「アルカディア」を目指す。
ヒロナ帝国は西国諸国との貿易で栄えているようだった。
「ヒロナ帝国のヒロナ様はクレラちゃんのお姉ちゃんだよ。一緒に彼女を捜索してくれるかもしれない」
クレラには姉がいたのか。
それにしてもフライングレオに跨り樹海の上を飛ぶのは中々の怖さだ。
地上まで十メートルはある。
もしイサベル号を選ばずに北東の方角に船を進めていたら海に隣接するアルカディアに直接辿り着いていたはずだったそうだ。
「季節によってはここらの地面は水浸しになる」
「なるほどな」
アマゾンみたいな感じか。
ヒロナ様(?)がクレラの姉のように六つ歳上のアニキが俺の兄弟だったらな〜。
「そう言えば今日アルカディアで召喚獣バトルトーナメントが開催されるって言ってたな。ダメ元でフライングレオで出場してみるか。優勝したら金竜ゴルドの指輪が手に入るらしいし」
金竜ゴルド。
あのシルバーと対を成す存在だろうか。
「俺も出たい。優勝は無理かもしれないけど、クレラのお姉ちゃんと話したい」
帝国の女王ほどになるときっかけがないと話すら聞いてもらえない。
前回の闘技場でも、俺は冥道クロス斬りを放ったことでジンとの面会に成功している。
ここはダンジョンのゴーレムを、セレナに貰った首飾りによって召喚出来るようにすべきだった。
なんてったって大好きな人のお姉さんだぜ?
仲良くなるに越した事はねぇー。
アルカディアの分厚いコンクリートの壁が見えてきた。
まるで巨大な要塞だ。
入るには門番と話す必要があるだろう。
俺達を乗せたフライングレオはゆっくりと下降していき、やがてアニキの指輪に光になって吸い込まれた。
「レオ、よくやった」
「名前があるの?」
「勿論。長い付き合いだからね」
「じゃあ俺は……『テレサ』にしよう。出てこい!」
「テレサ……?珍しい名前だな」
「本当は優しいゴーレムなのさ」
高さ三メートルの鎧を着た煉瓦ゴーレムは、樹海の端にてその姿を現した。
十字の首飾りへの祈りが通じたようだ。
門番が不思議そうな目で此方を見ている。
あの鉞も健在だ、ひょっとしたら良いところまで勝ち上がれるかもしれない。
テレサに対して元から優勝を期待しないのは失礼と言えた。
「おい、君達何者だ」
「今日のトーナメントに出ようと思って」
「なんだそういう事か」
「この子もジン王国の者です。是非中へ」
「良いだろう」
門番との会話を済ませ、俺達は要塞の中へと足を踏み入れる事となった。
ギギギ……と鉄の門が開く。
入って見れば若者たちが剣の稽古をしていた。
この国の軍事面への意識の高さが伺える。
そして奥の金色の建物がトーナメント会場だそうだ。
へぇ~レストランがある、若者には好評だろう。
「ねぇ昼飯食っていい?」
この世界は魔王ラグナロクの支配から解放されて十五年しか経っていない。
若者の中心の政治は理に適っていると言えた。
「勿論だ」
綺麗なハンバーガーショップだった。
「ヒロナ様は十八歳だ……が年齢の割に人に厳しい。多分自分にも」
とバーガーを頬張るアニキ。
自分にも他人にも厳しいのは女王として良い事だ、と思った。
だがクレラの恋人ですなんて言ったら地雷を踏む可能性だってあるわけか。
とにかくクレラは彼女の妹なんだ、きっと助けてくれるはず!
アニキと過ごす事でいつもより甘えん坊な自分がいる事に気付いた。
明らかにクレラ達と冒険していた時と違う。
自分でもちょっぴりビックリだ。
ハンバーガーを作れる程の文明か。
勿論輸入に頼っている部分はあるだろう。
長い間食べ物を口にしていなかった俺には大満足の昼食だった。
トーナメント会場に着いた。
基本的にコンクリートの家々が建ち並ぶアルカディアだったが、会場の屋根は金箔で覆われていた。
金竜ゴルドの指輪。
手にしたら最高の仲間になる。
トーナメントには七人参加するそうで、一人がシードという形の表だった。
やはり召喚獣を擁する者の数は帝国の首都と言えど限られるのか。
クジで決まった俺の一回戦の相手は……アニキだった。
しかも第一戦。
もう間もなく試合が始まる。
女王ヒロナも当然観戦するようで、俺は試合よりもそっちに意識が向きそうな予感がしていた。
ヒロナ帝国アルカディア。
観客は三百人ほどだった。
『さあ、もう間もなく試合が始まります。第一試合はフライングレオとゴーレムの対戦でーす』
俺達はそれぞれの召喚獣を場に出したのだった。




