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え……俺生きてる……?
丈夫さの割に軽いとは言え鎧着てたんだぞ?
あの時真っ二つに裂かれた船の柱か何かに頭をぶつけて俺は気絶した。
波に流され陸地に辿り着いたのか。
藁でできた小さな家……粗末だが快適なベッドだ。
俺は大剣ソーイアロが傍に立て掛けてあるのを目にした。
「漁村かな?取り敢えず礼だけでも言わないと」
外は明るく藁の家々を繋ぐ桟橋を行き来するようだった。
ん?見たことのある少女が。
あれは……ナギサ!?
眼鏡外してたから一瞬分からなかった。
桟橋に一人風を受け佇んでいる。
「気がついたんですね!心配しましたよ〜。アニキさんが占星術で此処にソラさんが流れ着くのを予言したんです」
アニキそんな事まで出来るのか。
それに眼鏡を外したナギサは可愛い。
「あの時はごめんよ。仲間に加えなくて。君の事を心配してたんだ」
「大丈夫です。ソラさんの名が無ければ私はアニキさんに弟子入り出来なかったと思います」
「アニキはこの村に居るんだな?」
見たところ小さな村だった。
モルディブに似てなくもないが、そこまで裕福そうとも言い難い。
そしてアニキ達が立ち寄れた事を考えると此処は魔法陣の在処よりずっと北にある事が予測される。
一体何日気を失ってたんだろう。
仲間たちと再会を期待しつつ魔法陣に向かうべきか。
アニキに頭下げてでも協力を要請しないと。
コクリと頷いたナギサに対し、言葉を続ける。
「眼鏡外して大丈夫なのか?いや、めっちゃ……なんつーか……可愛いけど」
「眼鏡無しでもある程度は見えます。まだ若いですから!」
この少女が十四で俺は十七。
っておいクレラへの想いはどうしたー!
いやここで俺がクレラやアスカと離れ離れになったのは天の導き。
ナギサの魅力に惑わされる事なくアニキと共に南へ向かわねば。
「是非アニキの所へ案内してくれ」
見れば火炎弾を桟橋から海側へと放つゴブリンに遭遇した。
コイツもアニキの弟子なんだろーなー。
流石アニキ、種族間の壁を見事に破壊している。
何を隠そう俺は終末の谷でゴブリンがアニキと共に獅子の上に跨り飛んでいたのを目の当たりにしたのだ。
「オキタノカ?」
ゴブリンは小柄だった。
身長は一メートル程しかない。
「ゴシュジンサマ〜レイノオトコガオキマシタヨ!」
ロッドも無しにゴブリンが火炎弾を放てるのはアニキの指導のおかげなんだろうな。
ゴブリンが走って行った先にアニキはいた。
ボロボロの服はそのままだったが、やはり何処か眩しかった。
「おーい!」
俺が遠くから声をかけた次の瞬間、アニキが誰かと対峙中なのが見て取れた。
(相手は……あれ?フォックス!?)
アニキとフォックスが戦闘など、どちらかが操られているとでも言うのか。
アニキの傍に駆け寄るとフォックスは紅い眼をしていた。
「長い歴史の中で貴様と巡り合えたのもまた運命。緑魔法の真髄をご覧入れよう」
フォックスの左右に魔法陣。
その場所に吸いこまれるかのように、ナギサとゴブリンは相手側に立った。
「ナギサとナナシが相手だとやり辛いね。今日の所は見逃してくんないかな?」
浜辺で対象を睨見つけていたアニキは、本気を出せばフォックスを倒せたはずだった。
それでも和平を模索し、隙を見せた途端仲間を人質に取られたというわけか。
アニキのナギサ達への想い入れも確かなようで、俺は嘗ての仲間フォックスと剣を交える覚悟だった。
「良いだろう……アニキとソラが相手だとまだ分が悪いとも言える」
フォックスの見せた緑魔法は強者には通用しないのか。
何にせよフォックス達は北の方へと去っていった。
「アニキ、騎士団のエリザベスが大変なんだ。道中で仲間と再会出来るかもしんねぇ。頼む一緒に南へ行ってくれ」
アニキはナギサ達を失った。
俺はフォックスを失った。
それでも南に行けばクレラ達と合流出来ると信じていたし、アニキと一緒なら黄金奪取の確率も高まる。
待ってろクレラ、アスカ。
最強の助っ人と共に君達と再会して見せる。
アニキは二つ返事で承諾してくれた。
思っていたよりもずっと早く彼をパーティに迎え入れた事になる。
今はサポートという立場かもしれないが、天空島に着く頃には絆も芽生えている可能性も高い。
「占星術でクレラやアスカの居場所を特定出来るのか?」
「まあでも夜にならないとね……」
星を見る占いまで。
本当に最強の人材と言っていい。
それに比べて……俺は装備頼みだ。
いや自分を見捨てるなど以ての外だ。
いつかアニキと本当の意味で肩を並べて歩いてやる。
そして話した回数は少なくとも、俺はアニキには込み上げる想い入れがあった。
ナギサとナナシ(?)の事は残念だったが、いつかきっと仲間に戻るさ。
だがフォックスを操ったのは誰だったのか。
北東の方角にはガゼドがある。
何か嫌な予感がしないでもないが、俺はナギサへ目を瞑り祈りを込め南を目指すのだった。




