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飛空艇はグングンスピードを上げ、東へ。
瞬く間に海上を越えた。
この狭いアルテマを縦横無尽に飛び回れる代物は、セレナを含めても数名しか操縦できない。
そう言った意味ではあのソラとやらの御一行にセレナが加わるのも面白そうだった。
取り敢えず今回は彼女と手を組み、飛空艇で黄金を持ち帰る手筈になっている。
「見えてきた」
前方にソラに浮かぶ島が。
それもかなりデカい。
ハイディスは思わず運転席に手を掛け身を乗り出した。
思った以上に緑が生い茂っているようだが、取り敢えず草原に着地で良いだろう。
セレナの運転する飛空艇は「アーティファクト」という仇名が付いており、銅で覆われた色をしていた。
プシューと音を立て降り立つアーティファクト。
本当に天空島はとんでもない規模だった。
草原の果てに岩場があるのだが、その先もずっと島は続いているようで、又してもアルテマを創ったクリエイターの底力に唸らざるを得なかった。
天然の金髪のエリザベスが四人の内の最後に地面に降り立つ。
あのソラの金髪は染めてあるように見えた。
だったらキヨシの赤髪も、どちらかと言えば染めてあるように見える。
異世界では染髪が流行っているのだろうか。
何処か平和な面影すらそこから連想させられる気すらしてくる。
だがアルテマに生まれた以上自分は戦いの道を歩む事になるだろう。
現にこの天空島でも嫌な予感しかしない……ん?
落雷だった。
薄紫の雷と共に現れたのは三名の強者だった。
強者と認定したのは言うまでもなくオーラからの判断だが、一体何者なのか。
「我々は天空島の主ゼウスとその兄弟ハデスとポセイドンだ。侵入者は口を割らんように葬り去る事にしている」
ゼウスと名乗る男は金色の衣に身をつつみ、灰色の髪で髭を生やしていた。
「恐らく水色の衣がポセイドン、黒の衣がハデスだね」
キヨシが口を開いた。
異世界でも有名な三人なのだろうか。
「ギリシャ神話の神々」
神々……!?
アルテマの中でも圧倒的な力を誇るだろう。
ギリシャが何か存じ上げなかったが、何にせよ戦闘は避けられそうになかった。
「エリザベス、アンタは下がってて。キヨシ、セレナ。最初から全力で臨むぞ」
ハイディスは背中の大剣に手をかけた。
三対三の殺し合い。
察するにゼウスは雷を操るようで、三人のリーダー格だった。
残るポセイドンとハデスはそれぞれ水と闇を使うことが最初の数秒で予測できた。
ハイディスは熟練者。
敵の特性をパターンから推測出来る。
ポセイドンは白髪でやはり髭、ハデスは白髪混じりの黒髪で髭は剃ってあった。
人間で言うと五十代か?
歳上と戦うのは久しぶりだった。
若者が多く戦闘も尽きないアルテマではの話である。
セレナがハデスに斬りかかった。
流石若者動きが速い。
ハデスも負けじと真っ黒な剣で対抗する。
剣同士がぶつかり合い、鍔迫り合いとなった。
鍔迫り合いは実力が拮抗していないと起きない。
ググッと力を込めるセレナだったが、相手もそう易易と力を緩めてはくれない。
隙が出来たら最期、その緊張感が既に草原中に伝わっていた。
「ゼウスの相手は俺がする。キヨシはポセイドンを」
どう見てもゼウスが一番厄介だったが、自分とキヨシの実力差は紙一重。
最悪ハイディスの死が迫っていると言えた。
予想通り掌から水を生み出すポセイドン。
透明な水が彼の周りを生き物であるかのように動き回っていた。
雷に比べ威力は劣るだろうが、絶対にキヨシも油断すべきではない。
察するにこの闘いに勝利すれば黄金は手に入れたも同然だった。
彼らを超えるエネルギーを、島の後方からは感じない。
だがこの三人のご登場とは悪い予感は当たっていたと言えた。
キヨシが裏魔法を放つ構えを見せる。
極秘の禁術とも揶揄されるそれは、あのモリガンすら扱えなかったほどの習得難易度だ。
「幻術『冥界の牢獄』!」
ハーピー等が扱う幻術とは格が違った。
それに一瞬気を取られたのがハデスだった。
その隙をセレナは逃さない。
ハデスの暗黒の剣を叩き落としたセレナだったが、ここでゼウスが助太刀した。
雷を放つまでのスピードが速すぎる。
ビリビリと薄紫色の電気に感電したセレナは、叫び声と共に動かなくなった。
直ぐさま大剣での攻撃を仕掛けるハイディスだったが、剣を拾ったハデスが行く手を遮る。
「私冥界の神ハデス以外にあの技を使える者が居たとはな。だがポセイドンのポテンシャルを甘く見るな」
ポセイドンは幻術を弾き返したようだった。
そして瞬く間に攻撃に転じる。
黒魔法「水激流」とは比べ物にならない量の水がキヨシを呑み込んだ。
まさかここまでの三人とは……。
神々の仇名は伊達じゃない。
ハイディスは膝を地につけ「エリザベスは殺さないでくれ……」と目を閉じるのだった。




