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ARTEMA SAGA  作者: ロゼオ
第2章 レインボーガーデン
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赤髪サングラスの男キヨシと合流したハイディスは、ジン王国首都アーディスを訪れていた。

目的は天空島の黄金。

言い伝えでは本当に実在すると言う。

だが天空島に行くためにはセレナの飛空艇が必要だった。

二人して見事な黒馬から降り、アーディスの中でも貴族地区へ。

ハイディスとキヨシは王宮への立ち入りが許されている数少ない人間だった。


キヨシはこのゲームのベテランユーザーで歳も自分と然程変わらない四十代だ。

裏魔法のみを極めた一風変わった戦い方をする人だが、確かに強い。

そして自分と組む事で政府の裏の者も手出しできなくなっていた。

そう、裏魔法習得者は危険視される。


自分を歴史から抹消したのは誰だったのか。

本来ならソーイアロ、モリガン、アレサンドロと並んで四天王としてもてはやされていたはずだ。

ジン王を陰で操る裏の者たち……。

どこか暗い陰謀を連想させられるのだった。


「キヨシ様、ハイディス様のお通りだ。道を開けられよ」


王宮への行く手を塞ぐ騎士たちは敬礼した。

ジン王が半ば操り人形とされているとはいえ、王国はアルテマの中では比較的安全な地域だった。

銀竜がガゼドの者へと寝返った話は耳にしていた。

今、王国はまさに天空島の黄金を必要としている時。


セレナの事は知っていた。

これからのジン王国の未来を担う若者だと感じている。

彼女と共に飛空艇で空に浮かぶ天空島へ……王の間へと通されたハイディスは早速話を切り出した。


自分のこの世界での役目はまだ完了していない。

十五年前魔王ラグナロクを葬った後も剣の腕は落ちぶれてはいなかった。

政府の裏の者が裏魔法を危惧する理由とは?

そして奴らの真の目的とは?

仮に黄金を手に入れたとて、奴らはジンから根こそぎ奪うだろう。

セレナの飛空艇を借りるという選択は言わば賭けだった。


話を終えるとジンの傍で待機していた女騎士が口を開いた。

エリザベス。

あのソーイアロの一人娘で正義感は強そうだった。

それに良い目をしている。

幼いと言えば失礼だろうが、どこか純真さを感じさせるの瞳だった。


「私も同行します。私も何かの役に立ちたい」


今セレナは王の間にはいなかった。

ジン王の返事次第で今日中に空へと飛び立てる。

もう正午だった。

異世界人の少年と出会ってから丸一日が経つのか。


「分かったよ。セレナの飛空艇に、エリザベスも遣わそう。ただし残りの騎士団はアーディスに待機させる」


頷いた。

長年の誼でジンには敬語を使う必要がなかった。

此方のほうが十年以上歳上というのも大いに関係するだろうが、何にせよ飛空艇とその操縦士セレナの協力を得ることには成功である。


生きた証ーー。

今度こそ皆の記憶に遺せるだろうか。

天空島には未だ見ぬ強敵が潜んでいる可能性も十分にあり得る。

だが自分とキヨシの黄金の取り分は破格となりそうだ。

それによって出来ることもまた変わってくる。

例えば自分だけの軍隊を持つ、等だ。


「僕の裏魔法が真価を発揮する時かな」


キヨシが誰から裏魔法を教わったかは不明だった。

出会った頃から強力で、自分とタッグを組むのはもはや必然だったのだ。

だがジン王とエリザベス以外部屋には居ないとは言え、裏魔法については話さない方が良かった。

いや、多少空気を読まないくらい強気でいないとこの世界では生き残れない。


頷きハイディス達は飛空艇の操縦士セレナの所へと向かった。

この国の若き希望ーー。

スラム街のアニキやモリガンの娘クレラ等もいる中、セレナは王国への忠誠心がずば抜けていた。


「お久しぶりです」


「やあ、破天荒な剣技でも生み出してる?」


この歳までこの世界で過ごした記憶が自分にはある。

キヨシが言う事から察するには自分はゲームの中のキャラに過ぎないのだが、セレナのような若者にも善の心があると期待してみる。

薄汚れた心も何度も目にした。

命を奪う事への抵抗もいつからか無くなっていた。

それでもキヨシは魔王討伐には興味がないようで、気が合う彼と黄金を手にするのはこの世界を愉しむのに理に適っていると言えた。


エリザベスがセレナに天空島について説明する。

一瞬驚いた様子の彼女だったが、「直ぐにでも」と飛空艇の所へと案内された。

セレナがその才能を遺憾無く発揮すれば、剣技の中でも特に強力な究極剣技の発動に至るだろう。

生まれた時代が違えども互いに尊敬し合える部分はあった。


天空島。

もはや伝説とされていた空に浮かぶ島の存在が、ここ最近になって現実味を帯びてきたのである。

異世界人が来るたびアルテマはアップグレードされるとでも言うのか。

あの少年ソラが来たのもここ最近だろう。

とにかく謎だらけのこのゲームで「黄金」という言葉の響きは、これまでの差別や陰謀といった事柄から自分を解放させられる気がしていた。


飛空艇に乗り込む。

運転席のセレナの隣、つまり助手席にはキヨシが座る事になった。

後ろ側のソファにエリザベスと二人っきり。

争いを好まなさそうな彼女の真意を問いてみることにした。


「ずっと……おかしいと思ってた。この国の有り様、いやこの世界そのものに対して」


ゲームの世界だと説明すべきではないだろう。

それを信じない可能性すら無きにしもあらずだ。


「父ソーイアロの仲間ならきっとこの国を変えられる。天空島の黄金は多分その引き金になるって」


やはり真っ白な心の持ち主のようだ。

とにかくソーイアロの一人娘を敵に殺させるような事は避けねば。

天空島に敵が居ないゲームなどこの世に存在するのかというのが、キヨシから得た見解だ。


空に舞う飛空艇。

キヨシによる天空島があるとされる場所についての説明は無事済んだようだ。

嫌な予感がしないでもない。

だが後戻りなど出来はしなかった。






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