第4話 江戸の仇
「小森、それじゃあ年度予算は、どうするのよ」
「あの人はアイドル気取りの総理です。すべて1人で決める性格で味方など1人もいませんよ」
「じゃあ、今頃は」
「おそらくですがーー 大手広告会社でコマーシャルバナーを大量に作成準備じゃないでしょうか」
「なんでそうなるの。おそらく政権の延命措置じゃないでしょうか」
「でも小森ーー 知事選挙みたいに投票率が上がったらどうするのよ」
「先生、その場合の決め手が短期決戦と低投票率です」
「どうやって」
「厳冬期の悪天候が味方です」
「でも悪天候なんか分からないわよ。小森」
「ヨーロッパの気象予報システムは14日くらいなら予測可能です。
ーー 数値天気図は30日先の予報も可能で
ーー そこに政府の科学チームとメディアが加われば何でも出来るでしょう」
「小森、仮にその解散選挙で衆議院議員になったとして、勝利しても首相にはなれないわ」
「なので、先生は総裁選挙に立候補したじゃないですか」
「小森、どうやって繋がるのよ」
「先生、臨時国会って召集されたら、何がありますか」
「首相を決めるのはーー ええと」
「首相指名選挙ですよ」
⬜︎⬜︎⬜︎
小石川前知事に不正選挙のカラクリを伝えるように、小森は饒舌になった。
悪天候、低投票率、3か月で準備された見えない投票箱、すり替え破棄、期日前投票の闇、消える投票用紙。
「でもね、高石百合が勝たせた選挙になった場合、私の出番など無いわよ」
「先生、それがヤバイのですよ。人気は必ず落ちます」
「なるほど、それで、私の出番はどこにあるのよ」
「はい、首相指名選挙で自戒党から造反を仕掛けます」
「小森は、私に造反させるつもりなの」
「先生、自戒党の重鎮が奇襲解散後、高石百合は信用できないと結論したので心配ありません」
「それ、信用できる情報なのーー でもね、なんで私なの」
「先生は前東都知事じゃないですか」
「それだけじゃ」
⬜︎⬜︎⬜︎
小石川はバカラのシャンパングラスを持ちながら小森から携帯電話を渡された。
「はい、小石川麗子です。先生、私でよろしいのですか? 」
「江戸の仇を長崎が討つようなものなので心配無用ーー 」
小石川は携帯を小森に帰し、グラスにドンペリを注いだ。
シャンパンがグラスから溢れてクリスタルテーブルに流れて赤いカーペットに染みが広がる。
満月の月光が薄明かりの室内を照らした。
シルクのローブが妖艶な女の背中を静かに滑り落ちた。
ブサメン秘書の小森が慌てて拾い上げ小石川の肩にそっと掛けた。
麗子は夜の首都高速の車のテールランプを眺めて微笑んだ。
麗子の後ろ姿が、小森には不気味に見えてた。
背筋が凍り付きーー 身震いを感じた小森は部屋をそっと出ようとする。
「小森、何処に逃げるのよ」
お読みいただき、ありがとうございます!
ブックマーク、評価を頂けると嬉しいです。
投稿後、加筆と脱字を修正をする場合があります。
三日月未来




