第2話 小石川麗子の台本
翌朝、激しい驟雨が嵐のように東都全体を包んだ。
都心の景色が黒い雨のカーテンに消され見えない。
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東都知事選の有力候補のひとり大神真一は強い雨音で目覚めた。
サイドテーブルに置かれた携帯に手を伸ばす。
神童和也の電話履歴を押した。
「ーー おはよう、神童君。今朝はあいにくの雨だね」
「大神さん、今夜は締め切り後の投票箱追跡チームは陸軍出身ばかりの精鋭です」
「神童君も陸軍出身だったね」
「はい、閣下」
「閣下は、いらんよ。それよりビッグニュースが飛び込んで消えた」
「なんでしょうか」
「轟弁護士の話では、公職選挙法違反容疑で5名の逮捕者が決定しているとか」
「じゃあ、当選無効ですね」
「それはわからない」
「雨が止んだらーー 投票を促しましょう」
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雨は投票時間開始直前に止んだ。
大空に太陽が輝き、青空が見え始めている。
投票率が7割超えの勢いになった報道が聞こえた。
投票所には入場券を手にした有権者の長蛇の列が出来ている。
東都民が小石川知事の悪政に反旗を翻した瞬間だった。
報道も密かに掌返しを始めている。
小石川はだけが知らなかった。
「小森、投票率は」
「はい、正午時点で・・・・・・ 」
「時点で何なの」
「7ーー 」
「わからないわ、小森ちゃん」
「7割丁度です」
小石川の組織票が崩壊した瞬間だった。
投票率1割の増加は、約100万票の増加。
投票率増加は、小石川知事引退への引導になる筈だった・・・・・・。
「小森、祝賀会の予約を直ちにキャンセルして」
小石川は特別室の窓から遠くに見える大江戸山脈の山々を眺めた。
冷たく青ざめた表情に変貌した小石川は、低い声で秘書の小森に伝える。
「私ーー もう一度国会に戻るわ」
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選挙特番が開始された。
開票率ゼロパーセント、小石川麗子に当確マークが点滅。
法蓮、丸石、大神と続く。
小石川の点滅が突然消え警告マークに変わった。
法蓮、丸石にも警告マークが付く。
投票率が確定した。
東都知事選挙投票率、過去最高88パーセント。
翌日の朝刊には、”大どんでん返し88“の大見出しと大神真一の顔写真があった。
神童和也が手配した元軍人たちが投票箱のすり替え阻止に成功した。
開票所も空前絶後の監視体制が用意されていた。
「大神真一です。東都の夜明けを皮切りに、皇国に新しい風を吹かせましょう」
その日の夕刊は、公職選挙法違反逮捕の文字が踊っていた。
「なるほど、票割れ工作員候補もいたんですね」
「神童副知事、笑って暮らせる世の中にしよう」
「はい、大神知事」
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小石川麗子の手元には次の台本が準備されている。
麗子は秘書の小森を呼んだ。
「あなたはまだ私の秘書よ。分かっているわね」
麗子は小森の前で自戒党に連絡を入れた。
「次の台本を実施するからよろしくね」




