第1話 祝賀会前夜
「偽りの輝き」、なろうで公開することにしました。
運転席に丸山警部、助手席には坊主頭の門田警部補が座っている。
丸山はA級ラインセンスを所持するプロドライバーだった。
丸山警部と間抜けな門田警部補のコンビは、丸山警部が運転するスポーツタイプの覆面パトカーで首都高速を疾走した。
「警部、いつもと違いませんか? 」
「この車、チューンナップしたばかりだ」
「ええええ、パトカーですよ」
「大丈夫、規則の範囲内ギリギリ」
大柄な門田の無意識は助手席のアシストグリップを思い切り掴んだ。
力を入れラリー用のシートベルトをも掴んでいる。
緊急走行用の赤色ランプが回転しながらヒステリックな警告音を奏でた。
「門田、お前の馬鹿力でグリップが壊れたら外れるぞ」
「警部、そんなことより早すぎます」
「俺は、このタイミングを待っていたんだよ」
「ああああ」
門田警部補の長い呻き声が狭い車内に響いた刹那、門田は気を失った。
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中高年の女は、ホテルの窓から首都高速を疾走するパトカーの赤色灯を眺めながらワイングラスを傾けていた。
クリスタルグラスに注がれたフランス製赤ワインに東京タワーの航空障害灯が反射している。
小石川麗子は派手なチャイナドレスに身を包み、秘書の報告を聴いている素振りを見せた。
麗子は太々しい表情を浮かべながら、中肉中背の安物スーツ姿のブサメン秘書を見下ろす。
秘書はオドオドしながら報告書を麗子に渡しぼそっと呟いた。
「小石川知事、カルトの組織票に漏れは絶対ございません」
「そう、明日の投票率次第ね」
「万が一の場合は、いつもの手筈で・・・・・・ 」
「まあ、そんな穢いことをあなたはよく考えるわね」
メディア出身の麗子にしては当たり前のことだったが・・・・・・。
麗子の父や祖父も国会議員を退いた後、東都の知事選挙に当選した。
小石川麗子は世襲三代目知事なのだ。
世の中には悪と善しか存在しないの。
神も悪も無いのよ。
人間だけが、どっちにもなれる存在なの。
小石川麗子の口癖だった。
「SNSで御託を並べても1円にもならないわよね、小森ちゃん」
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東都にはいくつかの都市伝説が逸話として密かに語り継がれている。
2期までは良いが、3期目に強欲を出すと、パンドラの蓋から鬼がうじゃうじゃ出ると言うホラーじみた話だった。
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ホテルの特別室からは、大江戸山脈の山々が月明かりに浮かんで稜線が見えていた。
遠くには夏富士の黒々としたシルエットも見える。
若草色のスカートスーツに、百合を刺繍した麗子のジャケットがホテルの大窓に映っていた。
小石川麗子は選挙期間中の報道対策で“ホテル柘榴”を避難所代わりにしている。
中央にある大きな青いソファに腰掛け足を組むと麗子。
秘書を一瞥しながら、ブランデーグラスに輸入高級コニャックを注ぎ言った。
「小森、一杯、どうですか? 」
下戸の秘書小森は礼を言いながら丁寧に断る。
小石川は秘書が下戸と知りながら、毎回、ブサメン秘書にブランデーを勧めて苦笑いを浮かべた。
小森も麗子の底意地の悪さを織り込み済みとして諦めている。
「小森、明日の祝賀会は大丈夫ね」
「はい、手筈通り。では小石川知事ーー これで失礼します」
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三日月未来




