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第79章 - 最初の亀裂

※本話には戦闘描写・流血描写が含まれます。苦手な方はご注意ください。

翠緑の炎がアリッサを巡っていた。


慌てて巡ってはいなかった。前の深紅の炎のように所有欲的な荒さではなく。この緑は違う動き方をした。もっと穏やかに。もっと均等に。ほとんど考え深く。柔らかな弧でアリッサの肩を、頭の上を、力なく垂れた左腕の傍を滑った。ただ寄り添うだけでなく、確かめるかのように。


スマラグドは光を肌に感じた。


温かい。火のようにではなく。もっと、葉の間を落ちる陽光のように。まだ目を閉じているのに暗闇が変わったと気づく朝の最初の一息のように。


目の前に悪魔スライムがまだ剣を掲げて立っていた。後ろで霧の中に人間が咳いていた。通りの上を天使スライムがよろめく治癒の雨を保っていた。メタルスライムが靄に抗い、赤い英雄スライムが土壁を保ち、あらゆる弱点にたゆまず取り組んでいた。


それでもこの炎が一拍の間すべてを引き寄せた。


立ち上った。


最初はゆっくり。


次にあまりに自然な確かさで。他のことをしたことがないかのように。翠緑の火がアリッサから離れ、頭の上に昇り、二人の少女と悪魔の間の空中に浮かんだ。


スマラグドが瞬きした。


アリッサが顔を上げた。


火がただ伸びたのではなかった。変わった。完全にではなく。肉と鱗の存在が突然目の前に立ったわけではなく。もっと、世界の上に一瞬だけ重なる何かのように。


まず目が現れた。


緑。深い。覚醒している。


次に鱗の光沢が光を走った。炎の肌を滑る細い模様。まるきり炎からできてはいないのに。一呼吸の一瞬だけ小さな角が浮かんだ。次に細く華奢な鼻面。仔竜のような。大きさは脅威ではないが、存在感は太古。


スマラグドが息を止めた。


本当に見えているのか、この映像が直接頭に押し込まれているのか分からなかった。だがあった。見えた。感じた。おそらく両方。


---


街全体が夢のように柔らかな緑に包まれた。


霧ではなく。


悪魔のヴェールでもなく。


別のもの。


屋根を、壁の縁を、窓枠を、砕けた木を、石畳の隙間に沁み込む血を、泣く子供を、咳に身を折る男を流れた。何も取り去らなかった。何もなかったことにはしなかった。だがすべての上に横たわった。熱のある者の額に当てられる手のように。一瞬だけ告げる手。ここにいるよ、と。


人間が叫ぶのをやめた。


突然安全になったからではなく。


穏やかさがどんな感じだったか、中の何かが思い出したから。


咳く市民が目を見開いた。目尻と耳からの血がまだ流れていたが、もっと遅く。上にあるものを見ない者もいた。ただ光を見た。他の者が口を開けて緑を見つめた。瞬きしてこの瞬間を引き裂くのを恐れるかのように。


天使スライムが止まった。


ほんの一拍だけ。


彼らすらこの存在を認識するかのようだった。


そして来た時と同じ速さで消えた。


轟音でもなく。爆発でもなく。


ただ溶けた。竜の煌めきが翠緑の火に戻り、目が形を失い、小さな角がまた光にすぎなくなり、鼻面が残像にすぎなくなった。残ったのは炎。


降りた。


ゆっくり。確かに。


アリッサに戻って。


緑の火が一度巡り、もう一度巡り、完全に包んだ。


スマラグドはアリッサが最初びくりとするのを見た。


次に息を吐くのを。


光が切り傷を流れた。引き裂かれた脇腹を。血がまだこびりつくこめかみを。力なく垂れていた左腕を。劇的な一瞬で治したのではなかった。もっと、緑がすべての傷を探り、見つけ、閉じていくかのように。層ごとに。血が凝固した。肌が縮んだ。呼吸がもっと深くなった。アリッサの肩が違う上がり方をした。もっとしっかり。もうあれほど息が切れずに。


スマラグドは構えに力が戻るのを見た。


完全にではなく。


だがはっきりと。


アリッサの指が両手剣の柄にまたきつく締まった。脚がもっと確かに立った。震えがまるきりは消えなかったが、あの危険な「もうすぐ倒れる」を失った。


---


炎が前に飛んだ。


アリッサの中に直接。


一瞬だけ緑があまりに眩しくなってスマラグドが目を細めなければならなかった。


そして咆哮が来た。


スライムの声ではなかった。


狼やキュクロプスやゴブリンから知る魔物の声でもなかった。


竜の咆哮だった。


壮大。


深い。


太古。


街全体を転がり、壁に受け止められ、屋根を越えて運ばれ、雨戸を震わせ、梁から埃を降らせ、霧すら一瞬震えさせた。ただ大きいだけではなかった。胸郭に、肋骨に、歯に、血に感じた。理性が言葉を見つける前に身体に告げる何か。


竜。


広場の誰にもこの咆哮が本当にどこから来たか分からなかった。


だが全員が感じた。その後で空気の中の何かが裂けたと。


---


ヴァレリアが目に見えて驚いた。


彼女だけではなかった。


クレントが目を見開いた。ルビンが肩をびくりとさせた。首筋に氷水を流されたかのように。ディアマントの視線が即座にアリッサに飛び、緑に飛び、またアリッサに。


四人とも分かっていた。何を聞いたか。


学問からではなく。


本からでもなく。


もっと深く、もっと古い仕方で。


竜の咆哮は聞き間違えない。


ヴァレリアが鋭く息を吸った。


深すぎた。


霧がまだ街に漂っていた。緑の光の一息がただ押し戻しただけで消滅させてはいなかった。肺に空気を押し込んだ。できるだけ多く。即座に自分を縛っていたあの嫌悪を催す圧の一部が戻った。胸が痙攣した。頭に痛みが走った。咳き込み始めた。


唇に血が飛んだ。


それでも一歩前に出た。


もう一歩。


動きは小さかった。


だがあった。


スマラグドが首を振り向けた。


ヴァレリアが一瞬よろめき、構えで止まり、弓を引き上げ、目に見える力で弦を張った。四本の矢が指の間に現れた。それぞれ違う元素の装填を纏って。火、雷、風、土。


「は - !」


鋭い呼気とともに矢を悪魔に放った。


斉射が叩き込まれた。黒い質量の上で火が弾けた。雷が痙攣した。風が切った。土が上半身を打った。悪魔スライムが首を急にヴァレリアに向けた。


ヴァレリアがふらついた。


二度目の咳が上半身を前に引き裂いた。また血。前より少ないが、この一歩に代価があったと広場の全員に見せるだけ十分に。


手の甲で口を拭った。


「本当の麻痺じゃない......」とかすれて呟き、仲間に目を上げた。声がまだ完全には安定していなかったが届いた。「とんでもなく強い幻術魔法。霧が何か弱めた。そしてあの咆哮が......あるいは緑の光が......もっと裂いた」


クレントが見た。


理解した。


身体だけではなく。


頭で。


硬直は全員を縛るだけ十分に本物だった。だが石や筋肉からできてはいなかった。感覚に、精神に、内なる命令の流れに言い聞かせていた。「お前にはできない」と。


霧がそれを掻いた。


あの緑の竜の咆哮が亀裂をもっと深くした。


クレントが空気を引き込んだ。


霧が即座にやすりのように肺に走った。咳き込み始めた。口の端から血が垂れた。膝がほとんど折れたが硬く前に踏み出した。身体に動きを強い、扉を蹴り破るかのように空気を吐いた。


稲妻が肩を走った。


---


ルビンがまだ凍りついていた。


指が斧で震えていた。刃の黒い輝きが激しく明滅した。魔力が身体の残りより先に戻るかのように。二呼吸目でようやく空気を引き込み、前半分で吐き、石畳に血を吐き、ほとんどまた彼女らしく聞こえるほど鋭く罵った。斧が手の中で痙攣した。黒い炎が一瞬大きくなった。自分もまた反応していいという証拠が必要だったかのように。


ディアマントがその後に続いた。


深く。硬く。一切の慎重さなく。


血は彼にも即座に来た。唇にもっと暗く。だがそれだけいっそう真っ直ぐ立った。腕の筋肉が張った。指がまた完全に閉じた。最初の一歩は、岩が走り出すことに決めたかのように聞こえた。


アリスにも見えた。


最後に同じようにした。


まだずっと抱えていた負傷者を支えたまま。空気を吸い、咳き、唇の縁に血が出た。だが膝は揺るがなかった。硬直が劇的な衝撃では壊れなかった。もっと、きつくなりすぎた皮膚を脱ぎ捨てるように消えた。


「よし」とかすれて言った。他の誰よりも自分自身に。「じゃあただの無駄な飾りではなかったと」


腕の中の負傷した男が見上げた。あまりに大きな世界の中の最後の明確な思考であるかのように。


---


広場の上でスライムが防衛を続けていた。


天使スライムが治癒の雨を下ろし続けた。竜の緑がもう消えていても。むしろ今、人間がまた動けるようになった今、光がもっと的確になった。強く出血する頭に。咳に痙攣する胸に。最初の一歩がなければ無理だった脚に。


赤い英雄スライムが土壁に沿って滑り、盾でもう一度地面を打ち、二箇所を補強し、土がそこで厚くなると満足げにぶるぶる鳴った。壁の後ろに蹲っていた老人が震える手をスライムに向けた。感謝したいかのように。小さな赤いタンクスライムは特別に英雄的な視線だけ投げ、盾をまた地面に突き刺した。


メタルスライムが霧に対してさらに進んだ。


一匹が突然前に跳んだ。


高くではなく。派手でもなく。ただあの直接的な硬い決然さで。それが彼らにはとても奇妙に見えた。跳躍の間に鏡の表面がちらめいた。身体が歪み、ぼやけ、引き伸ばされ - そして二匹になった。


一匹のメタルスライムが二匹になった。


完璧な半分ではなかった。もっと生きた分裂工程のような分割。一匹が即座に防衛線に滑り戻り、何事もなかったかのように壁に寄った。


もう一匹が悪魔に直接走った。


ためらわず。


確かめもせず。


今は慎重さより攻撃が大事だと決めた鏡の球のように。


悪魔にはそれが見えた。


そしてまたアリッサを見た。


笑った。


「ドラゴン......」と呟いた。言葉を味わうかのように。


---


アリッサはその間もっとしっかり立っていた。


翠緑の光が中に入ったが、ただ溶けはしなかった。何かが残った。前のように目に見えてではなく。街の上の大きな出現としてではなく。もっと肌の下の残響として。傷が再び立てるだけ十分に閉じた。痛みはまだあった。鈍く深く。だがもう呼吸のたびに地面に押し倒そうとするほどではなかった。


スマラグドを見た。


ヴァレリアを見た。


悪魔を見た。


「あれ......竜だったの?」とかすれて訊いた。


クレントが唇の血にもかかわらず鼻を鳴らした。「咆哮は竜だった」


「とりあえずそれで十分」とアリッサが呟いた。


スマラグドがまだ翼と金の槍で立っていた。周囲の光が前より明るいが、もっと穏やかに。アリッサに視線を投げた。安堵と恐怖と驚嘆が混在した視線。


生きてる。立ってる。まだアリーのまま。


それでも何かが違った。


スマラグドにではなく。


アリッサに。


変化は閉じた傷だけにあるのではなかった。また立っていることだけにもなく。あの緑だった。炎が変わったという知識。そしてなぜかを誰もまだ知らないということ。


---


悪魔がゆっくり剣を上げた。


即座の一撃のためではなく。


盤上の新しい駒を認める者のように。


「ナラ......オモッタヨリ......テマガカカル、ポイン」


ヴァレリアが弓を上げた。


クレントが一歩前に出た。今度は詰まらず。


ディアマントが傍に立った。


ルビンが斧を一度手の中で軽く振った。また完全に従うか確かめるだけに。


アリスが負傷者を土壁の後ろに引き、布を手に押し、言った。「死なないで。新しい死体に使う時間が今ない」


立ち上がって少女たちを見た。


スマラグドがブーツに埃のついた天使のように立っていた。


アリッサが本来もうほとんど立てないはずなのにそれでも立つ少女のように。


二人の間に目に見えるものはもうちらつかなかった。


だが一拍後に炎が戻った。


まず小さな火花として。


次にもっと大きく。


またアリッサに寄り添った。


もう紫ではなく。


翠緑。


緑の火が肩に寄り添い、剣を撫で、頬をかすめ、そこにほんの一息の光を残した。親しくもなく脅威でもなく。ただ覚醒して。違って。独自に。


アリッサが今度はもっとはっきり見た。


目が細くなった。


「分かった」と呟いた。「本当に変になってきた」


傍でスマラグドが翼をもう少し広げた。


目の前に悪魔がまた完全に再生して立っていた。剣が暗く脈打って手に。


後ろでスライムと人間が一緒に街を砕けないよう保っていた。


そして破壊された広場の真ん中に二人の子供が光の中に立っていた。


金色。


そして翠緑。


最初の亀裂ができた。


戦いはまだまるきり終わっていなかった。

※更新についてのお知らせ

いつもお読みいただきありがとうございます。

これまでまとめて投稿してまいりましたが、第80話をもちまして通常の更新ペースへ移行いたします。

更新は毎週 水曜・土曜 の週2回を予定しております。

これからもどうぞよろしくお願いいたします。

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