姫の視線
事務的に案内は続いていく
階が上がるごとに 案内するリーダーが変わって行くので
ここにいる重要人物と自然に顔合わせと会話が出来る
しかし 2人はあくまでも「病院見学」なのだ
リラついて エネルギーの塊の隠し場所について悟られないよう 探る・・・・・
出しゃばっては終わりなので 向こうのペースに合わせる
リーダーの案内と世間話で ここの統率力も大体把握できる
何人かは さすがに力があり油断できない妖精もいるのだ
4階についた所で 人間の叫び声は 無視できないほど響いている
ついに この階に着いたのだ
女の案内をするリーダーは若く きれいなしゃきっとした人だった
女子急性期精神科病棟 ここには 女しかいない
センバティは居心地が悪そうだったけど そうも言っていられず
周りを見回していた
ここではリーダーも 忙しそうに 淡々と歩調を歩めるが
「・・・・ずっと声が聞こえてますね いつもこうなんですか?」
センバティが 口を開く
この叫び声、聞かないほうが おかしいかもしれない
リーダーは振り返り
「あぁ 数日前から始まって一日中なんです
もう 慣れてしまったけど 精神科の病院では珍しくない光景です」
と にっこり笑った
リュウはなんだか 目線を下げ そのリーダーを追っていた
雰囲気からして 自分が喋るべきではないと 判断したようだ
リーダーは
「ここを案内なんて 滅多にないことです
何か 収穫になることでもあるんですか?
質問があれば なんでも 言ってください」
人のよさそうな ハキハキした言い方だった
しかし リュウとセンバティは顔を見合わせて 答えを考えていた
「あの・・・・・・・」
リュウは ゆっくり口を開く
何を喋るのか 仲間が一番ドキドキしていた
「廊下に花がいっぱいあるんですけど だれか世話をしているんですね
ゆっくり見ても良いですか? 花が大好きなんです」
と リュウはにっこりきれいな笑顔を浮かべていた
卒のない しかも ゆっくりここを観察できる提案に センバティはほっとした
「えぇ!もちろん
これは うちの花好きの妖精が咲かせるのを助けているんです」
下の階の
花園も 彼の力が大きいんです」
リーダーは 快く笑顔で承諾し 廊下へ進んだ
その時 花壇周りに10数人の妖精が集まる
ミーハーに 見学者の様子を見に来たらしい
黄色い歓声もあがり 2人の人気はもの凄かった
美しい力のある妖精は ここでは貴重な存在のようだ
リュウと ちょっと 困った顔をしていたが 外野は無視することにした
周りは ここも女だらけだった
リーダーは 一旦 大きな声でその観衆を 解散させたのだ
しかし 物陰から 熱い視線をまだ感じるものの 構わず 花壇に進む
「かっこいい~ 断然 あの彼が素敵!!」
「ノベルトより いいよねー!!」
「あの女の人も 素敵! 恋人同志かしら?」
「どいてよ!みえない」
それぞれ 大きな声でもちらにも 丸聞こえだ
「きれいなひとね ・・・・・ 姫とどっちがきれいかしら?」
一人の つぶやきを 2人は聞き逃さなかった
しっかりと 耳は その発言をした妖精に集中する
「姫は 別格でしょ? タイプも違いすぎるわよ」
他の 妖精も その話題で盛り上がっている
「あの 王子様が 助けに来たのかしらね?」
「いやぁ――!!助けてもらいたいわ」
この言葉に 女のリーダーの温厚な顔は一変し
「そこ!! いい加減に無駄口は 慎みなさい!!!」
と 一喝
みんな 首を引っ込めている
その時 また 小さな悲鳴が 聞こえ
リュウとセンバティの後ろを 指差す
白いドレスに 長い艶のある髪から 花の美しい香りがする
思わず振り返ると そこには
まさしく リラがいた
柔らかい雰囲気と人形の様な可愛らしい顔立ちは無表情だが
目をそらせなほど美しく 思わず見とれてしまった
パワーも復活しているせいか 近寄りがたいオーラ―と神秘性もある
言葉で表しきれない美しい人だった
2人は 姫の姿に思わず息を飲み 時が止まったかのように感じた
これが モパの彼女か・・・・・・・・
むちゃくちゃ美人だな 女神みたいだ・・・・・・・・
センバティは見惚れていた
リュウも 言葉を失って 釘付けだ
リーダーは しまったという顔をして 見比べていた
リラが ゆっくり 2人のほうへ視線を向ける
長いまつ毛と澄んだ大きな瞳が2人を捕らえる
悲しそうな 何か言いたげな表情に見えた それが 儚げな印象を強くしている
なんて きれいな子なんだ・・・・・・・・・・
それが 2人の正直な思いだった
それは一瞬で 目が合うと 姫は ゆっくりくるりと反対方向へ進んで行ってしまった
たったそれだけのことなのに 時間はとても長く感じた
何も言わず・伝えず ただ何か言いたそうなリラだった
ここで 話しかけたりすると 計画はブチ壊しと言うことも分かっての行動だろう
2人は我に返り 思わず目を合わせると 隣のリーダーを見比べる
女リーダーも はっとそれで我に返り 目をパチパチしている
そしてあからさまにしまったという顔をしていた
すかさずリーダーが2人の肩を押して 反対方向へ歩きだした
質問など与えない雰囲気で かなり強引だった
「すみません 時間が来てしまったので 次の階にご案内します」
と その場から離されてしまった
姫の登場は みんなにとって意外だったので かなりの驚きだったようだ
まずいものを見られた・・・・という感じで一切の口を開く間を持たせず
リュウとセンバティは 次の階に押し込められたのだった




