忘れられない人
ここしばらく 本当に平和だ
幸せな家族と 毎日同じようなことが繰り返され
この幸せを 壊すものもいない
モパは ベランダから 春が 雨上がりにできた水たまりを 大きめの黄色い長靴で
バシャバシャ遊んでるのを見ながら 物思いにふけっていた
先日重大な手掛かりを得たハズなのに それを聞いたあとは いつも何か考えてるような
考えていなような とにかく ぼーっとしている時間が増えた
彼女が姿を消して 10年が経っていた
妖精の寿命は まちまちで 「力」による
最短5年から長いものでは200年とも言われているが
バロメーター的なものがはっきりしていないので 自分の死期は直前まで分からない
この10年 彼女が無事かどうかもわからなかった
そして 自分の運命も
でも どうやら 彼女も生存している可能性が 強かった
白い肌に 栗色の柔らかい髪と 可愛いらしい笑顔が鮮明に浮かんだ
いわゆる正統派美人系のミクとは違う 花の様な愛らしい美しさだった
華奢な体も 折れてしまいそうな 守ってあげたくなるような そういうタイプだった
呆けた状態のモパを見て ユイがちょっと 心配そうに
「どうしたの? 悩み事?」と 聞いてくる
「あ・・・いや 大したことじゃないよ」
と 笑って見せたが やはり元気は出なかった
ツフュールの話を聞いた限りでは 居なくなったのは7~8年前
それから 見なくなったというのは 自分の意思か
それとも・・・・・・・・・
今度は 真剣な表情になって 顎に手を当て考えていると
はしゃいでいる春が 水てっぽうを モパに発射させた
何が起きたか 分からなかったが バッチリズブ濡れだ
春は ぎゃはっは!!と大笑いをして 歌を歌い ご機嫌だ
それで ちょっと すっきり目が覚めたような気もちがした
どんどん 頭の靄が晴れていくようだ
生きている可能性は高い! エネルギーを さらに蓄えれば 彼女を見つけられるかもしれない
でも どこに・・・・・・・?
また もやっとしたところで 以前春が言った言葉が浮かんだ
「トラワレル2人 カエル道ヲ ミツケラレナイ・・・・・・・・・・」
無意識に つぶやいていると
それを聞いた春が また 妖精の言葉を喋り出した
「カゴノ鳥 空ヲ眺メル 同ジ景色 イツモ同ジ」
歌うようにそう言うと また 水たまりへ 突進していった
モパは 思わず 滑り落ちそうになった
捕らわれる・・・・カゴの鳥・・・・・・誰かに捕まって動けないのか・・・・・・?
春は その事を 言っていたのか?
改めて聞いても もう 春は 首をかしげるだけで 答えてはくれなかった




