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遠い記憶の中で~second memory~:05

 



『ようやく、自らの意志を示したか。俺の主よ』


 どこからともなく聞こえる声。

 しかし、それが誰の声であるかはすぐにわかった。


「・・・君は、ずいぶんとずるいようだ。何せ、神名を名乗ることを許した相手に対して全力を出すことを許さず、約束しろと言ったことを破ることが君本来の力を引き出すトリガーだなんて。でも、おかげで今ならゼウスに追いつける気がする」


 タケミカヅチは『刀』にそう言うと彼の胸元に黄色い光を放つ刀の紋章が現れる。


『ははっ、ははっは!愉快、愉快!俺の神名、『タケミカヅチ』を継ぎし者よ。我をつかめ!』


 タケミカヅチは目の前に浮く刀を左手でしっかりとつかむ。

 この刀は、先代から受け継いで以来、一度も抜かなかった。・・・いいや、抜けなかった刀。


『唱えよ、我、雷の化身となりて―――』

「我、雷の化身となりて―――」


『「すべてを焼き切る、一本の刃である!我は汝と共にあり、いざゆかん―――布都御魂剣(ふつのみたまのかみ)!!」』



 タケミカヅチが刀を抜くと万雷が溢れだし、そのすべてがタケミカヅチへと向かう。


「・・・こい」


 刀より放たれた雷は龍のようにタケミカヅチの体を下から上へとぐろを巻き、彼の紋章へと吸い込まれていった。

 紋章はその周りをひし形の枠で囲い、光を収める。

















「『神格完全掌握:和の神、雷神:建御雷(たけみかづち)』」














「がぁはは、そうか。おかしいと思っておった。なぜ、その神はそこまで神力の出力が弱いのかと。そうか、そうか。おぬしが認められていなかっただけの話であったか。意外、いや・・・お主らしいのへそ曲がりの神なのじゃな。しかし今、聞くか―――。神名に宿る、神の御霊の声を」


 ゼウスはこの時すでには敗北を悟っていた。

 タケミカヅチの爆発的に上がった神力の出力数はこれで同等。

 なにより、彼には今となっては発言者のいない神印が刻まれている。

 こうなってはあとは手数と経験と運。ならば、―――もう勝ち目はない。


 何より、今まで不思議だった。


 神剣を保有する彼が今まで一度もかの剣を一度も鞘から抜かなかったのか。

 彼の持つ神名は一つの神話に置いて境界線がはっきりと引かれた2つの神名を持ち片方は、神器。

 あの神は一つの身にして人と武器の形を持つのだ。

 それは純粋に一つの名にして2つの神格を操ると同じ。

 別の神話の別名、同じ神話の同族性を司る神格を持っていようと目の前の神のような掛け算のような増え方はしない。


 あれこそ、我の盟友目指した極地にして彼の師匠が最後にたどり着いた雷装。―――『建御雷』


 その姿にゼウスは底の見えない喜びを感じた。


「はっはは、わはははは!すばらしい、すばらしいぞ我弟子よ。お前は師と同じところに着き、新に最高神として認められるだろう!その力、盟友の最後を感じる。・・・―――よ、約束は果たした。これで、私はようやく最期を迎えられる」


「・・・ゼウス?」


 タケミカヅチはゼウスが嬉しそうに笑い、なにか成し遂げたその顔に違和感を覚える。


「腑抜け!気を抜くな!」


 タケミカヅチの心配をあざ笑うかのようにゼウスは雷を纏った槍による神速の一突きをタケミカヅチにぶつける。


「!・・・心配なんか、してませんよ!」


 それを同じく神速の一刀で受け流し、そのままゼウスに切りかかる。


「いいぞ、もっと、もっとだ!」


 二人の攻防は続く。

 ゼウスは槍を短く持ち替え、接近戦を挑んでくる。


「・・・くッ!」


 一突きごとの速度の上がる槍。


 もはや、一突きで5カ所を狙うその攻撃にタケミカヅチは防戦一方となる。


『・・・見てられませんね、僕を打ち負かしたあの主神の名を受け継ぐものの好敵手とは思えません。確かに、彼の槍は独特です。流派はバラバラ。だがすべてを使いこなし、使い分け、それを流れるように使えるのはつかい手の技量の高さ。さすが、僕なだけあります』


 突如としてそんな声が聞こえてきて、額が熱くなっていることを感じる。

 その瞬間、焦って混濁しかけていた思考がクリアとなり、視界が広がる。

 さらに、ゼウスの槍の行く先が感じ取れる。

 タケミカヅチは思い切って前に出て5付きの内の2突きだけを弾き、ゼウスに体当たりをする。


 突如の事に驚いた表情を取るゼウス。


 彼はそのまま一旦距離を取った。


「・・・また、一段出力が上がったじゃと?それに今のは―――!」


「はぁ、はぁ・・・」


 ゼウスは肩で息をするタケミカヅチが顔を上げたときに見えたその額に浮かぶ雷の紋章に驚き戦慄を覚えた。

 なぜならそれは彼の別名であり、適正者がいないと言われ続けた神格だからだ。

 おそらくそれを与えたと思われる北欧神話の主神にして最高神の彼女は彼の下に行くゼウスに言った言葉を思い出した。


『おそらく、あいつは君をも取り込んでさらなる高みへ行くよ。なにせ、君は君の分身と戦うのだから』


 それの言葉に理由が今わかる。

 それは、確かに儂(全能の雷神)だ。

 こんな、面白いことはあるだろうか?

 私は、これでゼウスの神格を使用しての手数をこんなにも早く失うことになる。


「君は雷神3つの神格を持つのじゃったな。これで2体目か。ケルト神話の雷神:トール!」


 タケミカヅチの額には丸い縁で囲われた黄色い槌の神印が光っていた。






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